第五話:新たな転生者!?
食糧の消費期限を延ばすために必要な塩がある岩塩を入手するために準備をしていたが、その日の夜にカルノタウルスの襲撃に遭ったヒロキは、カルノタウルスとの激闘の末、駆けつけてきたアローラとネザーとの共闘で、カルノタウルスを滝から落とすことに成功する。
ところが、ヒロキとアローラとネザーがいるカルノタウルスを落とした滝から拠点までの距離は、どう考えても拠点へ無事に帰れるのかわからないくらいに相当遠い距離までに来てしまっていたのでした。
「ハァ……もう歩く体力すらないよ」
ヒロキはそう呟いた。
アローラもネザーも首を縦にふって、“自分達も疲れた”とヒロキにアピールをしていた。
「そうだよなぁ……じゃあ、ここで休む?」
というわけで、流されてそのまま落ちないように、滝から少しだけ離れた安全な場所に移動して、そこで仮眠をとった。
一方その頃、ある一人の少女がジャングルの中を彷徨っていた。
「こ、ここは……どこなの?」
どうやらその少女はヒロキと同じく、閻魔大王によってこの世界へ送り込まれた転生者のようです。
「まるで映画で見たような感じのジャングル……ここには何がいるのかしら?
そう考えるととても怖いわ……」
怯えながらジャングルの中を彷徨っていた。
「……よく見たら見たことのない植物ばかり……閻魔大王様は私に“試練道へ行く者として選ばれた”とおっしゃいましたけど……はぁ、人間道で再び生まれ変わった方がマシかな?
でも、私が自殺するまでのことはもう思い出したくない!」
少女はそう呟きながらひたすら歩き続けた。
アレから約1時間が経過した。
「よく眠れた?」
「ピィッ!」
「ヴォーッ!」
「よし、じゃあとりあえず拠点に帰ろっか?
でもどうやって向こうへ帰るのかはわからないけど……」
仮眠を終えたヒロキはアローラとネザーと一緒に帰ることになった。
ところがネザーは何かの気配を感じた。
「ん?
どうしたの?」
「……」
滝から向こうの方を眺めたネザーはすぐにそこへ向かって飛んでいった。
バサッバサッ!
「ま、待って!!
どこへ行くの!?」
ヒロキは追いかけようとしたが、アローラに止められた。
ガシッ!
「アローラ?」
「……」
アローラはヒロキを見つめながら首を背中の方へ向けた。
「……乗せてくれるの?」
ヒロキがそう言うと、アローラは頷き、ヒロキはすぐに背中に乗って、アローラは背中にヒロキを乗せたままネザーへと追いかけた。
ドドッドドッドドッドドッドドッドドッ!!
「相変わらず遅いけど、僕が走るよりアローラに乗っていた方がマシだね!
ネザーならどこまで飛んでいくのかもわからないからね!」
アローラは必死に走っていった。
バサッバサッ!
「……」
ネザーは何かを探しながら飛び続けていた。
バサッバサッ!
「!?」
するとネザーは何かを見つけたのか、そこへ真っ下に滑空して向かっていた。
一方その頃、少女はというと……
「ハァ……ハァ……今の何!?
なんかデッカい蛇がいたんだけど!?」
少女は木の後ろに隠れていた。
どうやら誰かに狙われているようだ。
「こ、怖いわ……この世界に来てからまだ数分しか経っていないはずなのに、ここで死ぬのかしら?」
少女は怯えていた。
しかし、奴が背後からやってきた。
「シュルルルルルッ……」
「キャアアアアァァァァーーーーッ!!!!!」
少女は思わず走っていた。
その後からデカい蛇が追いかけてきた。
どうやらこの蛇は以前、ヒロキが戦ったのは全く別の個体であるティタノボアのようです。
少女は思わず走って逃げた。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……いくら走ってもまだ追いかけてくる!
それに、私の胸がとても重いから、余計に走る速度が落ちてしまう!
元から私、走るのが苦手なの!」
それでもティタノボアはしつこく追いかけてきた。
するとここで……
「ピィーーーーーッ!!!!」
「!?」
そこへ、一頭の巨大な鳥がそのティタノボアを捕らえたのでした!
ガシッ!!
「シャアァーーーッ!!!」
ティタノボアはその鳥に噛みつこうとしたが、その鳥はティタノボアの動きに気づいて、すぐにティタノボアの頭を嘴で噛みついて抑え、そのまま飛んで行きました。
「た、助かった?
でも……あのデカい鳥は何かしら!?」
すると、遠くの方から少年の声が聞こえた。
大丈夫ですか!?
どこにいますか!?
「わ、私と同い年の男の子の声かしら?」
声の主は勿論、ヒロキであり、さっきの少女の悲鳴を聞いて、それを頼りにアローラと一緒にその悲鳴の主である少女を探していた。
「どこにいるんだろう?
確かに僕と同い年くらいの女の子の悲鳴が聞こえたんだけどなぁ」
するとヒロキとアローラのところにネザーがティタノボアを持ってやってきた。
「ネザー!?
どこに行ってたの!?
しかもそのティタノボア……僕が前に戦ったティタノボアより少し小さいけど……」
バサッバサッ!
「……」
するとネザーは低空飛行でジャングルの中を飛び始めた。
(……もしかして、僕とアローラに案内してくれるのかな?)
そう思ったヒロキはネザーについて行ってみることにした。
低空飛行中であるネザーはヒロキを乗せているアローラでもついていけるほどの速度で飛んでおり、ネザーは後ろを振り返って、ヒロキとアローラを確認していた。
バサッバサッ!
ドドッドドッドドッドドッ!
「……ん?
アレは?」
ヒロキは遠くの方に人がいるのを見つけた。
(もしかして、さっきの悲鳴の子かな?)
ヒロキはそう思った。
そしてネザーは近くに着陸してヒロキとアローラを待った。
「あ、アレはさっきのデカい鳥!?」
少女は近くにさっきの鳥が止まっているのを見て驚いた。
すると、向こうから人を乗せた大きなアリクイを見つけた。
「で、デカすぎるわ……アレってアリクイかしら?
人を乗せれるくらい大きな……ん?
あの人、もしかしてさっきの……」
少女のところにたどり着いたヒロキは、アローラから降りて、少女に近づいていった。
「だ、大丈夫ですか?」
「は、はい……あ、あの……」
「君はもしかして、転生者ですか?」
「てんせいしゃ?」
「異世界へ飛ばされた人のことを転生者って言うんですよ。
もしかして君は、閻魔大王から“試練道へ送る”みたいなことを言われて、この世界へ来ましたか?」
「た、確かに……閻魔大王様から“試練道へ行く者として選ばれた”とおっしゃいまして……そして気がついたらここへ来てしまったのです」
「そっか……怖かったですか?」
「えっ?」
「……デカい蛇とデカい鳥を見て、怖かったですか?」
「は、はい……私はさっき、デカい蛇に追われていたのですが、そこへあそこの鳥がその蛇を仕留め、どこかへ飛んでいったのですが……」
「なるほどね。
だから君は大きな声で悲鳴をあげていたんだね!」
「ご、ごめんなさい!
いきなり大きな声を出してしまいまして……」
「だ、大丈夫ですよ!
むしろ君がここにいるってわかったんで……こうしてここへ来れたんです」
「そ、そうですか……」
するとここで……
「……どうやら無事に試練道へ行けたようだな?」
「そ、その声は閻魔大王様ですか!?」
再び閻魔大王の声が聞こえた。
「……そしてここにヒロキ、お前も来ていたのか?」
「は、はい……悲鳴が聞こえたので……」
「うむ、そうか……なら話は早い。
花月よ、この異世界は恐竜などの絶滅した生き物が数多く暮らしている幻想的な世界である。
ここには、お前のための試練が数多く待ち受けている。
お前はそのために、この世界で強く生き延び、そしてお互いに信じ合える仲間を見つけ出し、共にその試練を乗り越えるが良い……まぁ、詳しいことは今からお前に送り出す魔法の書を見ればわかるであろう」
「ま、魔法の書?」
「これのことですよ!」
「こ、こちらが?」
「そう、後で詳しく説明するね!」
「それがよかろう……ヒロキよ、お前はこの山水花月に色々と詳しく教えてやれ。
この閻魔大王もあまり暇ではないのでなぁ……頼みましたぞ」
「は、はい……」
そして再び閻魔大王の声が聞こえなくなった。
「……」
「えっと……とりあえず名前を聞いていいかな?」
「わ、私ですか?
私は生前、山水花月とおっしゃいまして……」
「僕はヒロキ!
生前の名前は谷森弘木です!
よろしくね!」
「は、はい!」
「そしたら……まずはこの魔法の書を開いて!」
「は、はい!」
ヒロキは少女こと山水花月ことカツキに魔法の書について色々と教えた。
「……ってことだよ!
わかりましたか?」
「はい、ありがとうございます!
にしても私のステータス……カタカナで下の名前の“カツキ”になっていますね!」
「そうだね!
まぁ、他の転生者達もみんなそうだと思うけど……」
「ところで、あなたのところにいるそちらはなんですか?」
「コイツらか?
まず、ティタノボアから君を助けたデカい鳥なんだけど、この子はハルパゴルニスという種類の絶滅した猛禽類のネザーで、この子がネオタマンドゥアという大昔のアリクイのアローラで、この子達は僕の仲間です!」
「そうだったんですか!
にしても……はるぱごるにすにねおたまんどぅあって、なんか聞きなれない名前ですわね」
「そりゃ、ここは恐竜などの絶滅した生き物しかいない世界だからね!
さっきの君を襲った蛇はティタノボアという大昔に存在した大蛇です!
まぁ、後は魔法の書にある図鑑を見てくれたらいいからね?
ティタノボア、ハルパゴルニス、ネオタマンドゥアについてもう既にその図鑑に記録されているからね!」
「な、なるほど!
ありがとうございます!」
「うん、でもその前にちょっとトイレに行ってくる!」
「は、はい……」
「アローラ、ネザー、この子を頼む!」
そう言って、ヒロキはジャングルの奥へ行って、トイレをした。
(カツキちゃん……っていうのかな?
あの子、美少女って感じにめっちゃ可愛かったし、そして胸がものすごく大きかったなぁ……でも、そんなことを考えたら下心を考えていると思われて、そのまま嫌われてしまうかもしれないから、何も考えないでおこう)
そう思っていた。
やはり、ヒロキも思春期真っ最中の男子であり、特にカツキという初めて出会う女子を見て、顔を真っ赤にしていた。
そして無事にトイレを済ましたヒロキはカツキとネザーとアローラがいる場所へ向かった。
「アローラ、ネザー、見守ってくれてありがとうね!
じゃあ、後は拠点に帰ろっか!」
ヒロキがそう言うと、アローラとネザーも頷いた。
すると……
「も、もしかして拠点に戻られるのですか?」
「そ、そうですけど?」
「あ、あのー……よろしければ、私もあなた達の拠点に入れてもらえないでしょうか?」
「!?」
カツキからそう言われたヒロキは顔を真っ赤にした。
「ぼ、僕なんかでいいんですか!?」
「はい、お願いします!
私一人でこの世界で生きていけるとは思えないし、むしろ怖いです!
それにあなたのネザーがあの蛇を仕留めてくれなかったら、私はその蛇に食べられてしまったのかもしれないですし……」
そんなカツキを見たアローラとネザーは、ヒロキをじっと見つめた。
「……」
「……」
「こ、これって、この子を僕達の拠点に?」
そう言うと、アローラとネザーは首を縦に振って頷いた。
「……」
「だ、ダメでしょうか?」
「……う、うん!
わかった!
君は……その……なんて言ったらいいんだろうか?
えっと……どう言っていいのかわからないけど、もしも君が僕の拠点に住むことになったら……それは、僕の仲間っていう意味になりますが?」
「仲間……ですか?」
「そ、そう言うことになります……嫌でしたら、その……」
「あ、あなたの仲間になれるのでしたら、是非とも私をな、仲間にしてください!
お願いします!」
「う、うん……じゃあ、今日から君は他の仲間になるから、歓迎するよ!」
「あ、ありがとうございます!」
こうして、カツキが仲間に加わった。
それからというもの、アローラとネザーと共に拠点へ戻りながらカツキとヒロキは生前に何があって死んで、ここへ転生したのかなどを話した。
「それは酷い話だね。
君に嫉妬した女子達が君をいじめ、担任の先生も君を助けてくれず、君の親も君の弟に優先するばかりで助けてもらえず……ずっと孤独にいたんだね」
「そう……それで私はもう生きることが嫌になって飛び降りて自殺したんです」
「そっか……まぁでも、この世界へ転生したからにはそんな奴らはいないし、むしろ僕という味方がいるしね!
まぁ、君に何かあったら僕は容赦はしないよ!」
「た、頼もしいですね!」
「そ、そうかな?
そ、それよりなんで君はその子達に嫉妬されたの?」
「……おそらく、多くの男子生徒達に声をかけられたこととか……勉強と家事が得意なこと……ですかね?」
「そうなの?」
「はい、そうなんです……そもそも親の一族は男尊女卑の一族で、男性優遇をするような家庭だったんです。
私は子供の頃からずっと家事を押し付けられ、後から生まれてきた弟は親達に甘やかされて育てられたんです……それで、私はそんな家族からさっさと離れて暮らしたいと思って、猛勉強をしました。
それで、良い大学に入って、そして自立したかったんです……」
「でもそこへそんな君のことを嫉妬する奴らが現れたことで、いじめを受けるようになったわけだな?」
「はい……そういうことです……ところで、あなたも生まれた時から治すことができない重い病気を持ち、子供の頃からずっと車椅子生活をしていらっしゃったとそうおっしゃいましたが……その時はどうしてたんですか?」
「死ぬ前までは運動などができなかったから、読書だけかな?
特に恐竜や動物、歴史などについての本を読んでいたかな?
後は……ノートパソコンをいじるくらいかな?
それしかやっていない記憶があるんだよね……でも、中学を卒業する三学期あたりから悪化し始めたんだ。
そして高校へ入学してから一ヶ月後は更に悪化したことでそこからずっと病院に入院していたんだ」
「そうだったんですね……でも、あなたを見ているとこの世界での生き物についてなんか詳しそうでしたからね!」
「そ、そうか?
でもそれらは全部本とかインターネットからの情報しかないよ?」
「そうですか?
でも、私達と一緒にいるこの子達も既にあなたに手懐けられている様子ですが?
私は動物とか触れ合ったことが一回もないのですが、あなたにはその素質があるんだと思います」
「そんなことねーよ……僕なんて君が襲ってきたのとは少しだけ大きなティタノボアと戦ったり、拠点にカルノタウルスが襲撃してきたことで、アローラとネザーと一緒に戦って、滝にそのカルノタウルスを落としたこともあるからね!」
そして夕焼けになった頃、ようやく無事に拠点へ辿り着いた。
「ここ!
ここであなたが僕達と一緒に住む僕の拠点だよ!」
「洞穴ですよね?
それを上手くお家みたいな感じにしているし、畑も作っていらっしゃるんですね!」
「うん!
まぁでも、深夜にカルノタウルスが襲撃してきて、その時に畑が踏まれたところもあるし、一部の柵も壊されているから、修理しないといけないけどね!」
「よろしければ、私もお手伝いしましょうか?」
「いいの?」
「うん!」
夜が来るまでの間、ヒロキはカツキのための部屋を作り、カツキは柵を修理し、アローラは鉤爪を鍬代わりに畑を耕し、ネザーは周囲を見渡して誰かが近くにいないかを見張っていた。
そして夜になると、ネザーが仕留めたティタノボアを解体して、肉にした後にティタノボアの肉を焼いた。
「ティタノボアという蛇肉になるけど……どう?」
モグモグッ……
「……あっさりした鶏肉みたいな感じがして、とても美味しいです!」
「よかった!」
「……あのー、ヒロキ君はいつもこんな感じなんですか?」
「まぁ、魔法の書にあるレシピ通りに作れば良いんだけど……僕、虫のスープしか作れないんだ」
「虫のスープ!?
ま、まさか……」
「流石にこの世界での虫はそもそも食べれるのかわからないから口にはしてないけど、アローラが虫のスープが好きでねぇ……その虫のスープがきっかけで仲間になったんだ」
「というと?」
「この子の種族であるネオタマンドゥアには虫のスープで飼い慣らすことができるらしいから、試しに畑から出てきた虫を使ってスープにして与えてみたら、見事に僕の仲間になったってところかな?」
「なるほど……」
「飼い慣らすには、何かしらの条件があるらしくてね……ネザーことハルパゴルニスは今食べてるティタノボアなどの爬虫類の肉で飼い慣らすことができるよ!
ちなみにティタノボア自身は飼い慣らすことができないよ!」
「そうなんですか?
では、ティタノボアのように飼い慣らすことができない生き物もいますか?」
「うん、いるみたい……まぁ、僕もそこだけ詳しくわからないよ……」
「ひ、ヒロキ君……良ければの話なんですが、明日から畑の管理や私達が食べるための食事などは私に任せて良いでしょうか?」
「えっ?」
「ずっと家事をさせられていて、自然と料理などが上手になっているので……」
「作れるの?」
「はい……」
「でも君にはまだ、君の魔法の書にはレシピとかはないよ?」
「大丈夫です!
ここに調理鍋がありますよね?
そこが私の近くにあったのか、レシピが解除されました!」
「マジか!?」
カツキの魔法の書には既にレシピが解除されていました。
「……ちなみに私、気になってたことがあるんです。
先ほど、あなたのステータスを拝見したのですが、あなたのステータスには、飼い慣らした生物数2とありますが、これはアローラとネザーのことですか?」
「うん、そうだよ!
君が飼い慣らしたらそこにカウントされるよ!」
「では、アローラとネザーのステータスには能力と特殊な能力というのがあったのですが、この世界の生き物にはそれぞれの能力がありますか?」
「うん、あるよ!
アローラの能力には“植物繊維回収”、“畝作り”、“虫キラー”、“木の登り降り”、“ワイヤーでの登り降り”、“爪による出血”があり、特殊な能力としては“蟻塚破壊”、そしてネザーの能力には“滑空”、“索敵”、“生物の掴み”、特殊な能力としては、“滑空の一撃”かな?
生き物によっては異なれば、被ることだってあるし、中には能力があっても特殊な能力がない生き物もいるよ!
まぁ、詳しいことは魔法の書のチュートリアルに載っているから、時間がある時に見てみると良いよ!」
「はい、ありがとうございます!」
「……さてと、そろそろ寝るか!
君はあそこに君用の部屋を作ってあるからね!」
「あ、ありがとうございます!」
ヒロキとカツキはそれぞれ就寝した。
ちなみにアローラとネザーは既に眠りについていた。