第十四話:孤独の元不良の転生者
ミイロコンゴウインコのスミレを仲間にしたが、運が悪いことに不機嫌なディノテリウムの群れに遭遇したヒロキとカツキは、ガーデンに乗って素早く逃げました。
しかし、それでもしつこく追いかけてくるため、茂みの中へ飛び込み、更にそこへティラノサウルスが現れ、それを見たディノテリウム達は慌てて逃げ出し、ティラノサウルスもディノテリウム達を獲物とみなして、追いかけて行ったため、難を逃れた。
そしてガーデンは疲れ切ったのか、すぐに寝てしまい、ヒロキもカツキも休憩をすることにした。
「おはよう!」
「オハヨー!」
「おや?
もしかして早速言葉を覚えさせてるの?」
「はい、こういうのをやってみたかったんです!
オウムやインコに訓練させたらしゃべることができるって聞いたことがありまして……」
「なるほどね」
「しかもこの子のステータスには特殊能力として、“声真似”というのがあって、それを有効活用すれば……」
「なら他の生き物の声を真似させてみるのは?」
「と言いますと?」
「例えば、ティラノサウルスの鳴き声をそのまま真似するとかね!」
「それはいいですね!
ですが、先に言葉を覚えさせたいので……」
「……そうだな。
オウムやインコと言ったらそれだね!」
「はい!
まさにそうです!」
「アイ!」
「あら?」
「“おはよう”の次は“はい”を覚えたのかな?」
「みたいですね……」
それから程なくして、ガーデンが起きて、スタミナが完全に回復したことで、休憩を終え、再び出発した。
そして再びのジャングルの中での旅となっており、その時には所々にカリカテリウム、モスコプス、ゴルゴノプス、ケレンケン、レインフォレストコアラ、メガラダピス、パレオプロピテクス、イグアノドン、タスマニアタイガー、カスピトラ、ジャワトラ、バリトラなどを見かけたが、肉食の生き物達のほとんどはガーデンを見て恐れているのか、誰からも近づこうとしなかった。
「すごいですね……誰も襲ってこないとは……チラホラと近くにいる肉食動物が私達に近づこうともしないなんて……」
「きっとガーデンそのものが恐れられている獣だと思うよ。
それに、ガーデンのステータスには特殊能力として、“周囲威嚇”というのがあるんだ」
「周囲威嚇?」
「そう、常に周囲に威嚇をしている状態なんだ。
まぁ、大型種とかは流石に効かないけどね」
「ガルルルッ……」
「ほら、こうやって唸り声を出すことで、他の危険な生き物を僕達に近づかせないようにしているんだ」
「ガルルルッ!」
「スミレも早速覚えたみたいですよ!」
ところが、そんなヒロキ達を遠くから見ていた一人の少年がいました。
「……あのガンドントラに乗っているのは、俺と同じ人間か?
どこに行くのかは知らねーが、後を追うしかないな。
おい、行くぞ」
少年は、近くにいる二匹の肉食恐竜にそう命令し、男はサドルが装備された一匹の強力な爪を持った大型恐竜に乗って、ヒロキ達を追い始めた。
ドスッドスッ!
「おい、テメーらは向こうにいるあのガンドントラに乗った人間達を追ってこい。
俺も後から追いかける」
そう言って、二匹の肉食恐竜に先に行かせた。
ドスッ!
ドスッ!
ドスッ!
ドスッ!
「ガアァーオォーーッ!」
「ガアァオォッ!」
ドスッ!
ドスッ!
ドスッ!
ドスッ!
それから時が経って、夕方になった頃、川付近にたどり着いたヒロキ達は、テントや焚き火の準備に取り掛かろうとした。
「さて、ここにするか!」
「そうですね!
……とは言ってもサバンナにはまだ到着していないけど……」
「仕方ないよ。
結構遠いんだからね」
「そ、それもそうですね」
すると、ガーデンは後ろに振り返って、威嚇を始めた。
「ガルルルッ!!」
「ガーデン?」
「どうしました?」
「ガルルルッ!!」
「な、なんだ?
あんなに警戒するとは……」
「ま、まさか!?」
「と、とにかく、武器を出せ!!
何があってもおかしくない!!
後、スミレをしっかり守れ!!」
「わ、わかってます!!
スミレ、後ろに下がってて!」
「クワッ!」
すると、奥の方から二匹の肉食恐竜が姿を現した。
「ガオォーーーッ!!!」
「ガアァオォーーーーッ!!!!」
「ガアァオォッ!!!!」
「嘘でしょ!?
あんな大きな恐竜がどうして!?」
「こ、コイツらまさか、アロサウルスなのか!?」
「あ、あろさうるす?」
「そこそこ有名な肉食恐竜なんだけど、あんなに大きく、しかも二匹もいるのなら、僕達は無事では済まされない!!
ガーデン、君も流石に危なすぎるから下がって!!」
「ガルルルッ!!」
ガーデンは威嚇しながらヒロキに言われた通りに後ろへ下がっていた。
「……よし、それでいい。
にしても……気づかなかったよ」
「私達ですら勝てるのでしょうか?」
「わからない……とにかく、死ぬ覚悟で行くぞ!!」
ヒロキはクロスボウ、カツキは弓を構えた。
「ガアァオォッ!!」
「ガアァオォッ!!」
ドスッ!!
ドスッ!!
二匹のアロサウルスが近づいてきた。
ところがその時……
「テメーら、攻撃するな!!」
「!?」
「!?」
背後から、大型の恐竜に乗った男が現れた。
「えっ!?
あの恐竜に乗っているのって?」
「間違いない……僕達と同じ人間だ……」
「……ルビーとサファイアは下がってな」
少年は二匹のアロサウルスにそう命令し、アロサウルス達も後ろへ下がった。
男は恐竜から飛び降りて、二人に近づいた。
「怖がらせてすまなかったな」
「は、はぁ……」
「テメーらも俺と同じ人間なんだろ?」
「は、はい……あなたもここへ転生された方でしょうか?」
「よくわかったな。
とりあえず、名前だけでも聞かせてもらおうか?」
「ぼ、僕はヒロキです」
「わ、私はカツキと言います」
「俺はショウブだ。
生前での名前は笹元勝負だ。
ヒロキとカツキの生前での名は?」
「た、谷森弘木です」
「わ、私は山水花月です」
「そうか……よろしくな。
それと、一緒にここにいていいか?」
「う、うん……」
こうして一緒にテントや焚き火の準備をして、夕食を食べた。
少年の正体は笹元勝負……ヒロキとカツキがこの世界へ転生されるだいぶ前にこの世界へやってきたそうで、ショウブは生前、喧嘩に明け暮れていた不良高校生で、不良仲間と一緒に他の不良達と喧嘩をする日々を送っていたそうでした。
しかし、ある日の夜、喧嘩の途中で海に転落してしまい、そのまま溺死してしまったという……そしてショウブは閻魔大王のところにやってきたそうです。
「お前は勉強もせずにずっと喧嘩に明けてくれていたな?
何故喧嘩をし続けた?」
「……帰る場所がねーからだ」
「帰る場所はない?」
「あぁ、親父はずっと酒を飲んでばっかりで、すぐに俺に八つ当たりをするんだ。
そのせいで俺の母ちゃんがストレスが原因で死んでしまったよ……あのクソ親父のせいで、俺はこうなってしまったんだよ」
「なるほど」
「……ここにいるってことは、どうせ俺は地獄行きなんだろ?
だったらさっさと地獄に送ってくれ」
閻魔大王は少し考えた後、ショウブにこう言ったそうです。
「……お前を地獄に落とすつもりはない。
だが、その代わりにしっかりと更生させた上で、喧嘩をする必要のない幸せな生活をお前に授けてやろう……だから、その更生のためにお前を試練道へ送ってやろう」
「試練道?
天国か地獄しか知らねーが?」
「当然だ。
誰もがそう言う……だが、そこは地獄以上の苦しみを味わうことになるし、その代わりに天道以上の幸せも味わうことができる世界へお前を送りつけてやる」
「ちょっと何言ってるかわかんねーよ」
「本来ならお前を修羅道に送りつけるつもりだったが、今回は特例でお前を試練道に送りつけてやることにする。
勿論、お前に拒否権はない」
そう言うわけで、この世界へやってきて、そこからずっと一人でこのジャングルで生活をしていたそうで、その時に二匹のアロサウルスとショウブが乗っていた恐竜を飼い慣らしたそうです。
「……そしてテメーらを見つけたあの二匹のアロサウルスには、オスの方がルビー、メスの方がサファイアと名付け、後ろにいるテリジノサウルスには、ダイヤと名付けている」
「ということは……」
「野生ではなかったんですね!」
「そういうことだ。
そういうテメーらこそ、いつからここへ?
後、そこにいるガンドントラとカツキの肩に乗っているそのミイロコンゴウインコは?」
「ご存じなんですか!?」
「知ってるも何も、ソイツらを何回も見てるから自然と種族名も覚えてるよ」
「さ、流石だね……僕なんてまだまだ……」
「しかもここに来てからまだ二週間しか経過していないんです」
「二週間?
ってことはテメーら、新入りか?」
「そ、そういうことになるね」
「フーン……とりあえずそのガンドントラに乗って、どこへ行こうとした?」
二人はショウブにこれまでのことを話した。
「……知らなかったな。
ここに来てから一年経過しているのに、エルフ族とやらが存在していだとは知らなかったよ。
しかも砂漠の方に王国があることもな。
そのエルフ族のリーダーから手紙を渡されて、その手紙から王国のある砂漠へ行く旅に出かけているってところか?」
「はい、ざっくり言えば、そういうことになりますね」
「そういうショウブは?」
「俺か?
俺は単純に狩りに出かけていただけで、偶然にもテメーらを見かけただけだ」
「そうだったんですね……ちなみに他に飼い慣らした生き物はいらっしゃいますか?」
「アイツら以外にはいねーよ。
ほとんどはぶっ殺していることが多いからなぁ……そもそも俺は別に恐竜とか動物とかには興味はないしなぁ……まぁ、アイツらのことは気に入ってるから飼い慣らして俺の仲間にしたけどな。
そういうテメーらこそ、他にいるんだろ?」
「う、うん……」
二人はショウブにアローラ達のことも話した。
「留守番させて大丈夫か?」
「だ、大丈夫だと思うよ!」
「……言っておくが、このジャングルにはとんでもなくヤベー奴らがめっちゃいるからなぁ……ティタノボアとやらカルノタウルスとやらディノニクスとやらディノピテクスとやらティラコレオとやらマカイドゥロスとやらティラノサウルスとやら……とにかくいっぱいいるんだよな。
もうほぼわかっているとは思うが、このジャングルにはいつ何が起きるのか……全くと言っていいほど、誰もが予想することはできねー、なんせ自然そのものが相手だし、俺ら人間がこの世界での食物連鎖では完全に最弱と見なされ、多くの危険な生き物達は俺ら人間を見て積極的に襲ってくることがある。
まぁ、俺は誰だろうが俺に喧嘩を挑んでくるクソ野郎どもは肉食だろうが草食だろうが関係なくぶっ殺しまくったけどな!
それに、ルビーとサファイアとダイヤを飼い慣らしたことで、誰もこの俺に近づくことすらなかったよ。
まぁ、俺はそこまで恐竜とかには興味はねーけどよ」
「失礼なことを言ってしまうのだけど、それは多分、君自身ではなく、アロサウルスとテリジノサウルスそのものを恐れているんだと思うよ」
「わ、私もそう思います」
「あぁ?」
「えっとですね……アロサウルスはカルノタウルスやティラノサウルスと同じ肉食恐竜で、多くの生き物にとっての脅威とされるほど、生態系ではほぼ頂点にいるような存在だし、テリジノサウルスに至っては殺傷力が優れているその強力な爪を持っている時点でも他の生き物から見て充分恐ろしい存在だし、性格も結構凶暴らしく、特に興奮状態になるとティラノサウルスを殺すことができてしまうことがあるそうで……」
「……テメー、結構詳しい方なんだな?」
「いや、そんなことはない。
本やネットなどの情報のみだからね……でも、まだ見知らぬ生き物に出会えることが唯一の楽しみになっているかな?」
「私もこの世界に来てから、色々な生き物を目にしてきましたが、とても神秘的な世界だと、改めて私はそう思いました」
「フッ、新入りの癖にだいぶ馴染んでいるようだな?
まぁ、俺はそんなテメーらに会えたことに嬉しく思うぜ」
「それは……その……ずっと一人だったからでしのうか?」
「まぁ、そういことかな?
今となっては最後にいつ誰と話したのですら覚えねーからよぉ」
夕食を食べ終わった後はすぐに就寝した。
そして次の日の朝、ヒロキとカツキはすぐに朝食を食べて、出発する準備をした。
しかし、ヒロキ達が出発しょうとした時にショウブも起きた。
「おはよう!」
「おはようございます!」
「オハヨー!」
「なんだテメーら?
もう出発すんのか?」
「は、はい!
私達はもう出発します!」
「僕達には一秒でも早く王国に辿り着きたいので!」
「そうかい……なら、ちょっと待ってな」
「えっ?」
「エッ?」
ショウブはすぐに寝ているアロサウルスのルビーとサファイア、テリジノサウルスのダイヤを叩き起こし、出発する準備をした。
「ショウブ?」
「も、もしかして、あなたも一緒に行かれるのですか?」
「フッ、当然だろ?
ここで会ったのも何かの縁って奴だろ?
それに、テメーらだけだと、この先の旅は結構苦戦することになるだろうからよぉ……後、王国とやらもエルフ族とやらにも興味があるからなぁ……だから、俺も一緒に同行してやるよ」
「ほ、本当ですか!?」
「あぁ、ついてってやるよ」
「な、なんて頼もしいんだ!!
僕、君のことを“兄貴”とでも呼ばせてもいいかな?」
「ふ、ふざけんなよ!?
お、俺は別に……」
「フフッ、ツンデレってところですかね?
しかもショウブ君はとてもイケメンって感じがします!」
「う、うるせー!!
そ、それよりもほれ、さっさと行くぞコラァ!!」
こうして、ショウブと彼の仲間であるルビー、サファイア、ダイヤもヒロキ達の旅に同行するのでした。




