第九話:猿軍団の襲来
風呂が完成したことで、更に快適な生活を送れるようになった。
そして昨日の風呂作りがきっかけで、ヒロキとカツキはこの世界に転生されてから初めての種族であるエルフ族の存在を知ったのでした。
ヒロキはカツキにエルフ族について話していた。
「エルフっていうのはゲームとかに出てくるキャラクターだと聞いたことがありますが、まさか私達が思ってる以上に全然違うんですね……まるでガチの採集狩猟民みたいです」
「うん、これについてはマーニーさんと彼女の弟達からその情報を聞くことができたんだ。
そして僕がマーニーさんについていって、村に寄り道した時に出会ったエルフ族の村のお医者さんから聞いたこの世界についての話もあるんだ」
「この世界について?」
「まず、この世界には三つの大陸があって、それぞれの大陸固有の種族がいるらしく、ここは熱帯大陸でここにはエルフ族、残りの二つには温帯大陸と冷帯大陸があって、温帯大陸には鬼族、冷帯大陸にはドワーフ族がいるらしく、そこでずっと暮らし続けているんだって!
そしてマーニーさんの弟達からオマケみたいな感じで詳しく聞くことができたけど、僕達が思っているイメージとはだいぶ異なることがあるらしく、例えば、鬼は桃太郎などの昔話では人間をさらって食べたり、食糧や宝などを奪っていく悪役として登場して、子供の時から非常に恐ろしい化け物とされていたけど、この世界では性格的にはヤクザっぽいけど、怒らせない限りは基本的にとても友好な種族である……みたいな感じかな?」
「ちなみにドワーフは?
ドワーフは確か、常に洞窟に行って、宝石などを取るための採掘作業をしたり、武器や防具などの物作りが得意だったりとか、そう言ったイメージがありますけど?」
「マーニーの兄弟達の話では確かに、ドワーフは物作りが得意だけど、わかりやすくいうとまるでイヌイットと遊牧民が合体したような感じの移住しながらの生活をしているんだって!」
「す、すごいですね……冷帯大陸って、明らかに寒い場所ですよね!?」
「うん、この世界で最強の寒さを誇る大陸らしいけどね……」
「……ヒロキ君、前から気になってたことがあるんです」
「どうしたの?」
「……私達以外の転生者……いえ、人間っていますか?」
「……それは難しいね。
僕にもわからないけど……まぁ、どこかで会えるかも?」
「そうだといいですけどね……」
「……ところで、今日は何をするんですか?」
「おっと、忘れてた……生き物を捕まえようかな?
家畜用にね!」
「家畜……ですか?
それってまさか……」
「大丈夫!
卵とか牛乳とかだよ!
別に殺して肉にするためではないし、どうせ肉を手に入れるのなら、狩りをすればいいだけだよ!
それに、この辺には家畜に相応しいのがいるからね!」
「家畜に相応しい?」
「……不思議の国のアリスって知ってる?」
「は、はい!
知ってますけど……それが?」
「その中に変な鳥が出てきてたよね?」
「言われてみれば確かに、見たことのない鳥がいましたね……」
「その鳥はこの世界にはいるみたいだよ!」
「えっ?」
「君はまだ見たことはないだろうけど、僕は何回も見たよ!」
ヒロキは魔法の書の図鑑のとあるページを開いて、それをカツキに見せました。
「……ドードー?」
「これ、不思議の国のアリスで見たことない?」
「た、確かに、この鳥と同じのがその不思議の国のアリスに登場していましたね!」
「そう、ソイツがこのドードーだよ!」
ドードー、不思議の国のアリスに登場する有名な絶滅した鳥で、マダガスカル沖のモーリシャス島に生息していたと言われており、現在ではドードー及びドードー科に属するすべての鳥は既に絶滅しているのです。
「主に食糧目的での乱獲、犬などの人間が持ち込んだ動物によって卵などが食べられたことなどが原因で絶滅したと言われているんだけど、この世界ではどこにでもいるんだよね」
「そのドードーを家畜として飼育することで、卵が食べれるようになるってことですか?」
「うん、それに非常食として置いておくこともできるしね!
まぁ、ドードー自身は飼い慣らすことができないけど、どうやら繁殖させることができるみたいなんだ」
「飼い慣らすことができないのに、繁殖させることができるんですか?」
「わからないけど、飼い慣らすことができなくても、繁殖させることが可能な動物がいるのは間違いないと思うよ。
でも、家畜を飼い始めるとなると、スペースもいるし、害獣対策もしないといけないからね」
「そうですね。
私達が生きてた生前の世界でも野生の動物が家畜を襲ったり、畑を荒らしたりする事例がありますからね!」
「うん、とりあえず昨日の作業台で解除された設計図には、しっかりと家畜の畜舎もあるからね!」
というわけで、ヒロキとカツキの二人で畜舎の建設を始め、その間にネザー、タンポポ、ミントはドードーを捕まえに行きました。
勿論、ドードーを生きたまま捕まえなければならないのです。
「私達が知ってる畜舎とは違う仕組みになっていますね」
「おそらく、放牧スタイルかな?
寝る時はそこの小屋に、食事やトイレなどは柵で囲まれた場所だけ外へ出して自由に過ごすってところかな?」
すると、ドードーを捕まえてきたネザー、タンポポ、ミントが帰ってきて、すぐに畜舎へ向かい、そこへ捕まえてきたドードーを放しました。
「ピィーッ!」
「ヴァヴッ!」
「ヴァヴッ!」
「ありがとうね!」
「ドゥードゥーッ!」
「ドゥードゥーッ!」
「ドゥードゥーッ!」
「ドゥードゥーッ!」
「こ、これがドードーですか?
てっきり鶏くらいの大きさかと思いましたが、それ以上に大きな鳥なんですね!」
「まるで七面鳥くらいの大きさかな?
でも、コイツらは僕達には警戒心がないみたいだからあっさりと捕まったんだね……まぁ、ここからはこの子達を繁殖させて、卵を収穫できるようにするよ!」
「ですが、卵には無精卵と有精卵がありますよね?
この世界にもありますか?」
「あるにはあると思うけど……」
思わず、ヒロキは魔法の書のチュートリアルを改めて確認した。
チュートリアルにある農業と家畜についてのページを見てみると、家畜として飼育される生き物は、飼い慣らした生き物と同様に“ラブフード”という繁殖用の餌を食べさせることで繁殖するようになり、卵を産む種類なら有精卵、子供を産む種類なら妊娠が必ず発生するようになるとのことで、自動で繁殖することはないと書かれていた。
「ラブフードという繁殖用の餌?」
「たった今レシピのところを見てるけど、ラブフードにはそれぞれの生き物によっては材料が異なるみたいで、例えばドードーならベリーをそのラブフードの材料として入れる必要があるとか?
しかし、見た感じではどのラブフードのレシピには全てバニラとサフランがいるみたいだね」
「サフランって確か、高級な香辛料として使われていると聞いたことがありますけど……この世界にもサフランってありますか?」
「う〜ん……綿はここにはあったけど、サフランはここでは見たことはないかな?
本で読んだ情報だと、サフランは地中海東部沿岸が原産地だと聞いたことがあるから……」
「おそらく、ここにはないってことですね?」
「……とりあえず捕まえてくれたこの四羽のドードーで飼育してみようかな?」
というわけで、ネザー、タンポポ、ミントが捕まえた四羽のドードーを建設した畜舎で卵を目的とした飼育が行われることになった。
ちなみにドードーは主にベリーが好物のようです。
「ドゥードゥーッ!」
「ドゥードゥーッ!」
「ドゥードゥーッ!」
「ドゥードゥーッ!」
「この子達って、意外と可愛いですね!」
「ちなみにだけど、家畜として育てられる生き物は、決して飼い慣らしたわけではないから、ステータスを見ることもできないよ……つまり、性別がわからないってところかな?」
「ステータスには確かに飼い慣らした生き物の性別も書いてありますからね」
ヒロキとカツキは完成したドードーの畜舎を見ていました。
しかし、その一方でアローラ達はある視線を向けていました。
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
向こうに何かいるようです。
「……どうしたんだろう?」
「何か警戒していますね……」
すると、向こうから姿を現しました。
「グルルルッ……」
姿を現したのは、結構大きな五匹の猿達でした。
「あ、あの大きやお猿さん達は何ですか!?」
「マンドリルのような顔にヒヒのような体で、この大きさ……あんなのって、大昔にいたのだろうか?」
すると、その猿達は一斉に拠点へ入ろうと飛びついてきた。
「ウキーーッ!!!」
「キキーーッ!!!」
「ウキーーッ!!!」
「キキーーッ!!!」
「ウキーーッ!!!」
そして飛びついてきた猿達に対して、アローラ達はすぐに拠点を守るべく、その猿達に立ち向かいました。
「ヴァ〜〜〜オォ〜〜〜〜ッ!!!!!」
まずはゴードンは、猿達に威嚇をした。
しかし……
「ウキーーッ!!!」
ガブッ!!!
「ヴァオォッ!?」
威嚇に怯えず、むしろ飛びついてきて噛みついてきたのでした。
「な、なんだアイツは……」
「ヒロキ君、このままだとみんながやられてしまう!!
私達も!!!」
「待って!!!
アイツらのような攻撃的な猿は、何をしでかすかわからないよ……カツキはまず、ドードー達を守って!!
僕がなんとかするから!!」
「は、はい!!」
ドードーの畜舎をカツキに守ってもらい、猿達はアローラ達と戦っている間、魔法の書の図鑑を開いて、その猿について調べながら考えた。
魔法の書の図鑑で、既にその猿について記録されたページには、“ディノピテクス”という鮮新世から更新世にかけて南アフリカとエチオピアに生息していたヒヒに近縁の非常に大型の霊長類の絶滅種であることが判明した。
ところが、ヒロキはそれを見て、ある決断をした。
(もうこうするしかない!)
そう思ったヒロキはすぐに作業台で急いであるものを作った。
ガシッ!!
「グルルルッ……」
「ヴォーッ!!!」
アローラは一匹のディノピテクスと取っ組み合いをしていた。
バサッバサッ!!
「ピィーーーッ!!!」
「ウキーーッ!!!」
ヒュンッ!!
シュッ!!
ネザーは一匹のディノピテクスが投げた糞を交わした。
「グルルルッ……」
「グルルルッ……」
「グルルルッ……」
「グルルルッ……」
タンポポとミントは二匹のディノピテクス達と睨み合いをしていた。
「ヴァオォ〜〜〜ッ!!!」
ドサッ!!
「ウキーーッ!!!」
ドスッ!!
「ウキッ!?」
ゴードンは自分に噛み付いてきた一匹のディノピテクスを振り落とし、そして踏みつけた。
しかし、ディノピテクス達はその程度で怯むはずもなく、むしろ四匹のディノピテクス達が一斉にゴードンへ攻撃を仕掛けたのです。
「ウキーーッ!!!」
「ウキーーッ!!!」
「ウキーーッ!!!」
「ウキーーッ!!!」
ガブッ!!
ガブッ!!
ガブッ!!
ガブッ!!
「ヴァオォッ!?」
その間に踏まれたディノピテクスは上手く抜け出し、アローラ達もゴードンに攻撃しているディノピテクス達にゴードンから引き離すべく、攻撃を仕掛けに向かい、そして抜け出したそのディノピテクスはすぐにカツキがいるドードーの畜舎へ向かいました。
「キキーーーッ!!!」
「こ、来ないでください!!」
すると……
「ウキーーッ!!!」
ヒュンッ!!
ペチャッ!!
「キャアッ!!」
ディノピテクスはなんと、カツキの顔面に糞を投げつけた。
「く、臭い!!」
カツキが近くの川で顔を洗っている間にディノピテクスはドードーの畜舎に入ろうとした。
すると……
ビュッ!!
ドスッ!!
「ウキッ!?」
背後から矢があたった。
「……間に合ってよかった!
カツキ、大丈夫か!?」
「は、はい……なんとか……」
すると、そのディノピテクスはヒロキを見つめた後、怒り狂って今度はヒロキを襲いかかった。
「ウキーーッ!!!!」
ビュッ!!
ドスッ!!
「これなら素早く攻撃できる!」
そう、ヒロキが作っていたのはクロスボウで、作業台でしか作れない新たな武器でした。
そしてヒロキは迷わずにクロスボウから矢を飛ばし続けた。
「キキーーーッ!!!!」
「手加減はしないからね!?」
ビュッ!!
ドスッ!!
ビュッ!!
ドスッ!!
ビュッ!!
ドスッ!!
ビュッ!!
ドスッ!!
そして……
ビュッ!!
ドスッ!!
「ウキッ!!」
ドサッ!
「う、ウキッ……」
今ヒロキは一匹のディノピテクスを倒したのでした。
すると……
「ウキャーーーッ!!!」
「ウキャーーーッ!!!」
「ウキャーーーッ!!!」
ドサッ!!
ドサッ!!
ドサッ!!
どうやら三匹のディノピテクスは、アローラ、タンポポ、ミントによって倒されたのでした。
「ヴァオォッ!!!」
ブンッ!!!
「ウギャッ!?」
ドサッ!!
ゴードンによる尻尾の尻尾の一撃で、ディノピテクスは倒され、後はネザーに突かれて弱ってしまった一匹だけが残った。
「そこまで!!
もうこれ以上はやらなくていいよ!!
……後一匹になれば、もう死んだのと同じだよ」
「……」
ヒロキがアローラ達にそう命じて、ボロボロになったディノピテクスにこれ以上手を出さずにいた。
そしてヒロキはカツキのところへ行った。
「カツキ、もう大丈夫か?」
「う、うん……でも、顔臭いです」
「糞を顔面に投げつけられたよね?
だったら、もうすぐに風呂に入って、洗ってきて!
昨日にはマーニーさんから石鹸をもらい、その石鹸は風呂場に置いてあるから使って!」
「は、はい……」
カツキを風呂場へ行かせている間に、ヒロキは再び一匹だけ取り残されたディノピテクスのところへ向かった。
「……んで、どうするの?
このまま殺されるのがいいのか?
それとも、この場からさっさと立ち去るか?」
「……」
するとディノピテクスは、ゆっくりと立ち上がって、拠点から寂しく去っていった。
「……悪いことをしたねなぁ……でも、仕方なかったことだよ。
……みんな、怪我をしているみたいだから、今から手当てしてあげるね」
そう言って、ヒロキはディノピテクス達との戦いで怪我をしたアローラ達の手当てをした後、風呂から上がったカツキと一緒に夕食の準備をして、一緒に夕食を食べた後に就寝した。
アローラ達もディノピテクス達との戦いで疲れたのか、爆睡して寝ました。




