プロローグ
六道輪廻……仏教には6つの世界があり、そこへ何度も生まれ変わるとされている場所で、六道の世界には地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道があり、地獄道と餓鬼道と畜生道の3つを“三悪道”と呼び、修羅道と人間道と天道を“三善道”と呼ばれているのです。
地獄道は味わったことのない苦しみを味わう重い罰を受けながら苦しむ世界、餓鬼道は食べることも飲むことも許されない飢えに苦しむ世界、畜生道は弱肉強食そのものであり、自分より強いものや大きいものに襲われないかと、不安に脅えながら、そこで苦しみを味わう世界、修羅道は怒りに身を任せ、欲望を抑えられず、争い続ける世界、人間道は我々人類が暮らす世界で、辛いこと、苦しいこと、悩みなどがありながら、幸せや楽しみもある世界、天道は味わったことのない楽しみや幸せを味わう素晴らしい平和な世界となっているのです。
しかし、実はこの六道とは異なる別の世界が存在しており、その世界には地獄道で味わうような苦しみもあれば、天道のような楽しみと幸せが訪れることがある世界です。
それを“試練道”と呼ばれるその世界には、閻魔大王に認められた者だけが行くことが許された特別な世界であり、それもこの六道輪廻とはかけ離れた存在なのです。
我々はそれを“異世界”と呼ばれており、そこには我々が暮らしている人間道とは完全に異なる世界なのです。
その世界へ送り込まれた者は、“転生者”と呼ばれています。
その転生者には、再び人間道へ生まれ変わるためのその異世界での試練が待っていると言われ、その試練を全て乗り越えると、人間道に再び生まれ変わって、そこで新たな人生を歩むことができるのです。
ただし、その異世界には“死”という概念があり、その異世界で死んだ者には、“二度と新たに生まれ変わることはできない”とされているのです。
そしてその異世界へ転生されるのは、閻魔大王に認められた者だけなのです。
そして今、閻魔大王が死者をどの世界へ送り込むのかを決めていた。
「……お前は生前、相手の食べ物を奪って食べ尽くして、多くの者達に迷惑をかけた。
よって、お前には食べることも飲むことも許されない飢えに苦しむ餓鬼道へ送り込む!
せいぜい、そこで後悔するが良い!」
「そ、そんな〜!
そこをなんとか……せめて天道に」
「ダメだ」
次々と死者を裁き、それぞれの世界へ送り込みました。
ほとんどの死者達は餓鬼道と畜生道へと送り込まれ、少数ですが中には地獄道へ送り込まれた者もいました。
ところが、次の死者が閻魔大王の前に来た時、閻魔大王はその死者を見て目つきは変わった。
「続いての死者は…魂番号8016…生前での名前は谷森弘木だったな?」
「は、はい」
「お前は生前には犯した罪は一つもないが……まさかわずか16歳でここへ来てしまうとはなぁ」
「僕は……重い病気で死んでしまいました……」
「病気?」
「僕の病気は、決して治すことができない病気で、僕は生まれた時からずっとその病気に苦しむことになり、そして僕が高校生になった時にはその病気に負けたことで、僕は死んでしまい、ここへ来てしまったのです……」
「……なんと哀れなことに……本当はお前ももっと自由に生きたかったであろう……」
「うん……病気さえなければ、僕がやりたかったことはできたはずです……」
彼の名は谷森弘木、彼は生前、生まれた時から重い病気を持ち、16歳の高校生になるまでその病気に苦しめられ、その病気によって死んでしまった。
そして今、弘木は閻魔大王のところにやってきたのでした。
「なるほど……なら、あそこしかあるまい」
「あそこ?」
「よく聞くのだ。
ここはこの閻魔大王の決断によって、地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道のどれかに送り込まれているのだ。
だが、お前には人間道で新たな人生を歩むための試練を乗り越える必要がある。
……よって、お前にはその試練を乗り越えるための世界…試練道へ送り込む!」
「し、試練道?
も、もしかして……僕を異世界へ送り込むってことですか?」
「ほう?
試練道をお前達はそれを異世界と呼んでいるのか?」
「は、はい」
「ならば、話は早い!
試練道はお前達の言う異世界そのものの世界であり、お前はそこへ転生者として送り込まれ、その世界での試練を全て乗り越えてもらう!
そして全ての試練を乗り越えた時、お前には再び人間道で生まれ変わって、幸せと楽しみのある新たな人生を歩むことができるであろう!」
「で、でも……それだったら普通に人間道へ生まれ変わったらいいのではないでしょうか?」
「まぁ、確かにそれもある。
だが、異世界に行って、そこの試練を乗り越えれば、人間道へ生まれ変わった時にはお前を苦しめた重い病気もなく、そしていじめなどの苦しみを味わうことのない楽しみと幸せを死ぬまで永遠に味わうことができるのだぞ?」
「も、もしも普通に人間道で生まれ変わったら?」
「……その時は、再び同じ苦しみを味わうことになるだろう。
そうなれば、お前がそのまま生まれ変わった場合、再び同じ重い病気に苦しめられる人生が待ち受けることになるのだぞ?」
「な、なるほど」
「弘木よ、お前は試練道に行くことができる選ばれし者……人間道へ生まれ変わって、重い病気すらない多くの楽しみと幸せが待っている新たな人生を歩みたいのなら、その異世界へ行くが良い!」
弘木はこうして、試練道という名の異世界へ送り込まれることになりました。
そして弘木の目の前に、大きなゲートが現れた。
「弘木よ、そのゲートに入るが良い!
その世界で待ち受ける試練を乗り越え、新たに人間道へ生まれ変わることに楽しみにしているぞ!」
「では……行ってきます!」
弘木はそのゲートに入り、そしてゲートとともに炎のように消えてしまったのでした。
そしてそのまま異世界へと転生しました。
「……こ、ここは……どこ!?」
目が覚めると、そこは密集した多くの植物が生い茂るジャングルだった。
その植物はどれも見たことがない植物ばかりだった。
「……すごい……ジャングルそのものだ。
見たことのない植物だらけ」
弘木は周囲を見渡した。
「……異世界って確か、異世界へ転生した人が勇者とかになって、魔物と戦ったら、楽しく旅をしたりとか……異世界について色々な話を聞いたことがあるんだ。
僕の友達も、異世界系にハマってたんだっけ?
まぁ、その異世界系の話のほとんどは、ファンタジー系でRPGのような世界とかそのような話とかが多いと思ってたけど……どうやら僕の場合は違うみたいだね」
弘木はこのジャングルには何かがどこかに潜んでいると考え、警戒しながらそのジャングルを進んだ。
「……ジャングルには危険な生き物が多いと本で読んだことがある。
毒を持つ蛇や虫とか、ジャガーやワニなどの人間を襲う危険な動物、そしてジャングルにある川や湖とかにはデンキウナギやピラニア、カンディルなどの危険な魚がいたりするんだよね。
まぁ、その危険な魚とされているピラニアは確か……とても臆病な魚で、興奮状態でなければ、基本的には自分より大きな生き物を襲うことはほとんどなく、単独で行動するよりも群れでいることを好むっめ聞いた事がある」
弘木はそう言いながら、着々とジャングルへ歩いて行った。
すると、奥の方から何かの足音が聞こえた。
ドスッ!
ドスッ!
ドスッ!
ドスッ!
「あ、足音?
ど、どこから?」
弘木はゆっくりと足音のする方を向いた。
すると、その足音はだんだんと近づいてくるのです。
ドスッ!
ドスッ!
ドスッ!
ドスッ!
「ま、まさか……ブラキオサウルス!?」
目の前にブラキオサウルスが姿を現した。
「じゃあ……僕が転生した異世界ってまさか、恐竜がいる世界だった!?」
弘木はそう驚いた。
すると、誰かが弘木に話しかけてきた。
「……どうやら無事に試練道へ行けたようだな?」
「え、閻魔大王!?」
声の主は閻魔大王でした。
「弘木よ、この異世界は恐竜などの絶滅した生き物が数多く暮らしている幻想的な世界である。
ここには、お前のための試練が数多く待ち受けている。
お前はそのために、この世界で強く生き延び、そしてお互いに信じ合える仲間を見つけ出し、共にその試練を乗り越えるが良い……まぁ、詳しいことは今からお前に送り出す魔法の書を見ればわかるであろう」
「魔法の書?」
「魔法の力を持つ書物だ。
これには、乗り越えるべき試練、この世界に生息している生き物、お前のことなども記されている。
例えば、見たことのない生き物に出会った場合、すぐにこの書物に記録され、お前が強くなったら、お前についても上書きされるのだ。
そして試練を乗り越えた場合、その乗り越えた試練に自動で乗り越えた証となる印が付けられる。」
「ま、まるで僕の友達が言っていた異世界みたいな感じで、まさにRPGのプレイヤーになった気分だ」
「試しにその書物を見てみるが良い」
弘木はその書物の中身を見た。
最初のページは目次となっており、そこには“チュートリアル”、“ステータス”、“試練”、“図鑑”、“収納”の5つとなっており、ステータスには、自分の名前のカタカナ表記である“ヒロキ”となり、図鑑には最初に遭遇したブラキオサウルスがいつの間にか記されていた。
「この閻魔大王からお前に伝えるべきことを全て伝えた。
後は自力で頑張るが良い……では、くれぐれも頑張るのだぞ!」
そしてそのまま閻魔大王の声は聞こえなくなった。
「……要するにここってつまり……僕が転生したら、その異世界はめっちゃ古代ファンタジーな世界だった!?
……ってこと!?」
あまりの急展開に思わず弘木はそう呟いた。
こうして、試練を乗り越えるための新たな異世界での新生活を送ることになった。
※次からは“弘木”を“ヒロキ”となります。