不殺の戦利品
GWもそろそろ終わりですねぇ……最近は暑くなったり寒くなったりで体壊しそうです……
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「ゲームセット…僕の勝ちだ...」
敵の真後ろでそう宣言する。
ほんの数分前まで苦戦を強いられ、Lv差がかけ離れてた相手に対して言うセリフでは無い。
観客もどうやらご立腹なのがわかる。
「黙りな」
その一声で、ガヤは一斉に黙る。まさに鶴の一声と言ったところだろうか?
アラシスタは振り返りもせずに自らの首をさする。
「盗むとは中々根性座ったことするじゃぁないかい?
あたしが逆上して奪い返しに行くなんて考えもしなかったのかい?」
陽鎖刀の左手には、金で出来てる豪勢なペンダントが握られてる。
「命までは盗らない。そう言ってたじゃないですか。」
「坊や…面白いね。まぁどっちにしろ、族長の証を盗まれちまった以上は文句の付けようがないね。」
武器を納めて、戦闘の意思を収める。
「お返しします。」
「坊や、いや陽鎖刀」
アラシスタはペンダントを僕の手の上で、握らせた状態で手を重ねる。
「それは戦利品として持っていきな。婆やに小言は言われるだろうけど、それは勝ち取ったものだからね。」
「…」
「それに、アマゾネスとしちゃ、男からの情けなんて恥だ。」
そう言うと、ペンダントを慣れた動作で手首に、巻き付ける。
『戦乙女の首飾り』を装備しました。
「…分かりました。」
「さっさと行きな。妹を待たせてるんだ。」
無理やり背中を押す形で、僕を押し出そうとする。
僕は早足でその場から立ち去る。
「…妹が選んだ男なだけはあるねぇ」
そのボヤキだけは、僕には聞こえちゃ居なかった。
「良いんですか!?姐さん!あんなどこぞの馬の骨かも分かんない…」
ぱぁん!と声をかけてきたアマゾネスを引っぱたく。
「口には気をつけな?首飾りを盗まれたってことは、あの坊やは、殺ろうと思えば首を両断できたんだ。だが坊やはそれをしなかった。
つまり、あの男は証明したのさ。首飾りを盗む事でね」
実力で言えば圧倒的にあたしの方が強い。
陽鎖刀からすればまさに、崩れ落ちそうになる橋を渡るようなものだったはずだ、なのに1度のチャンスを棒に振った。
「まぁ安心しな。妹を泣かす様なら…」
おそらく、この蛮刀があの坊やの首を斬るさ。
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足元がギリギリ見えるレベルの明かりでとぼとぼと歩く。
戦闘中に不意に聞こえたテレパシーの類だろうか?脳内に直接響く形で、声によるアシストが入った。
エコーがかかっており、誰が喋ってるかは確定的では無いが、ひさ兄と呼んでた所を鑑みるに...間違いなく妹だろう。
僕にはLvと体力ゲージしか見えない為にステータスが明確に分かったのは助かった。
アレが無ければアイテムを盗む以外の方法で勝ちを拾うしか無かった。
そういう戦闘結果を思考しながら、暫くして、ヴィッタちゃんが松明を持ってるのが見える。
「思ったよか早かったですね。」
「お姉さんにはもう少し平和的にって言ってくれると助かるよ」
皮肉で返す辺りまだ余裕があるのかもしれない。
「聞いてくれるなら、面倒身のいい妹なんか要らないですよ(苦笑)」
違いないと駄べりながら、洞窟の入り口前の少しくぼみになってる部分に隠れる。
行先も分からないまま外を出歩けば…という配慮だろう。
「それで何を探してるんですか?蒼月まであまり時間が...」
松明の火を消して、入り口近くに置く。
民族衣装のせいでか目元しか分からず、表情が全く分からないのは置いといて...
「それは分かってる。
だけど、まず...僕自身の戦力外通告を何とかしたいんだけど」
「ここに来たという事はお姉ちゃんには勝てたんですよね?
でしたら、この辺一帯の魔物は難なく倒せますよ。
私も未熟ではありますが戦えます。」
君がどう戦えるか全く知らないんだけど……。
「僕は魔物と交戦出来てた訳じゃないから苦戦はしたんだけどね...」
お姉さんを倒した訳では無い、なのでEXPは加算されずステータスだけが上がっただけのはずだ。Lvは〝1〟のままなのだ...
Lv1縛りとか余程の変態でもない限りしたいとは思わない。
それにLvを上げないと習得出来ないスキルやアビリティも勿論ある。
そして何よりまともな武器がない。早急になんとかしたい。
「リクリアの森ってことはある筈なんだ。古代遺跡の大神殿が…」
「古代遺跡の大神殿…あの古びた廃墟をお探しで?」
「実は見つけれてないんだ…知ってるなら案内して欲しい。」
「あそこは、古いだけで何も無いはずですが…
ここから対して離れてませんので案内はしますけど…」
洞窟から顔を少しだけ出して、周囲を確認してから出る。
ヴィッタちゃんの案内で程なくして遺跡に到着…
「全くの逆方向に歩いてたのか…そりゃ一生見つからんわけだ…」
ヴィッタちゃんの言う通り、遺跡と言うだけあって、かなり古びており入口に至っては入れそうにない状態だ。
「ご覧の通り、入口は封鎖されており、他に入れる場所もないので来る意味は無かったと思うのですが…」
「その反応見れば来た価値はあるよ。」
「はい?」
迷わず入口に歩いていく。
「えーっと、仕掛けが生きてたら…この辺に…」
入口から少し離れた壁をまさぐり、見つける。
スイッチになってるので押し込むと…
……ゴゴゴ……
「…コレは驚きました…よくご存知でしたね…」
「盗賊なんだ。こういうのには詳しい」
本当のことなんか、口が裂けても言えない。
「さて…中に入る前に、お腹すいたからご飯にしよう。」
道中で木の実などを採取してある。適当に石段の上に座り齧る。
ヴィッタちゃんにひとつ投げ渡すと両手で迷わず頬張る。
「知識はあるんですね。普通、森の中の木の実なんか食べようなんて思わないと思いますが…?」
「ん?あぁ…そだね。知り合いがそういうのに詳しくてね。
覚えてたんだよ、たまたま。」
ヴィッタちゃんが首を傾げる動作を見せたが取り合わない。
食事を終えて、改めて入口に近づく。
「絶対僕より前を歩かないでね?死にたくなかったら。」
「...わかりました。」
そうして僕ら2人は迷宮を攻略する。
ほんとは迷宮攻略まで書きたかったのですが書きながら
「あ、これやばいなぁ……」ってなった次第ですw