親友は何処に?
時は陽鎖刀が森に飛ばされた辺りまで遡る~
▷翔side
「んで……ここはどこやねん。」
街中のど真ん中。
行き交うのは、人も居るが、亜人もちらほら見かける。
「まずは情報集めからやなぁ……ひさやんの言う通りにしとこ」
大通りにでも出れば少なくとも、情報はあると踏み、歩き出す。
よく良く考えれば、武器も何も無い状態で外に放り出されるより全然運がいいなと思う。
「酒場が1番無難っちゃ無難やねんけど、面倒事に巻き込まてたら面倒いしなぁ…
こんだけ大きい国やったらなんかそれなりの施設ありそうなもんやけどなぁ…」
足元がしっかり舗装された道であること、人の多さからそれなりに発展してる国と判断。
ちょうど用水路などもあり、橋が掛かっている。
「水はかなり綺麗みたいやな。」
歩きながら街並みを見て情報を集約する。
事前情報だと……大国ヴァルキアだと予想を立てて歩く。
「ひさやんの情報通りやとそうなるけど…
イベントのフラグとか全然分からんし……
なんやこの場所来てから偉い倦怠感も酷いし……」
握り拳を作っては崩すを繰り返して調子を確認するも現実世界と何か感覚が違うという事しか分からず若干イライラする。
大通りに出てさらに活気ある商売人の声が聞こえ始めてきた。
「運だけは良いみたいやな。商売人からやったら情報盛り沢山……
やけど……対価が払えんなぁ……どないしたもんか……?」
勿論等価交換が出来るからそうしたいのは山々だが、翔も陽鎖刀も無一文…
差し出せる対価が存在しないと言っても過言ではない……
はぁ……とため息をつきながら、壁に背中を預ける。
「……なんや考えてもしゃーないか。」
なる様になるの精神で、改めて商人通り(今名付けた)を見渡す。
すると自分同様に行き交う人通りを留まりキョロキョロとする女の子が居た。
どう見ても、亜人だ。なんの種類かまでは正直判断出来ない。
「どないしたんや?迷子か?」
近づいて声をかける。背丈は自分の腰くらいしかないので屈んであげる。
目線を合わせると少女はうるうると涙を流して、頷く。
「そか、実はな。わいもやねん。
探してるんはママか?パパか?それともお兄ちゃんお姉ちゃんか?」
翔は中学生の妹と7歳の弟がいる。だから子供の扱いは得意だ。
「ママが居ないの……」
オドオドとした様子ではあるが会話が成立するのを翔は心底安心した。
よく見ると、少女はおでこに小さいツノと羽が生えている。
「ママとか。よっしゃ。じゃーわいも一緒に探したろ。
わいは翔。嬢ちゃんは?」
「…ルーテシア」
少女は消えるような声で答え、翔はよろしくなとだけ答え、迷わずおんぶしてあげる。
よく見ると、靴が脱げてしまったのか裸足だったのだ。
「さて……どの辺を探したもんか……?」
しかし、陽鎖刀から聞いた通りだと翔は思った。
【亜人種と人間種は仲が悪い。】
この通りに居た人間達は少女に見向きもしなかった。
少女が声をかけなかったからとも言えるが、少女を見るとそうは思えない。
服が埃まみれなのを見ると、人とぶつかったのがよくわかる。
「ひさやん……怒るやろうなぁ……」
陽鎖刀なら分かってくれる。そう思いながら、手を差し伸べるあたり自分も末期だなと思う。
数時間、少女は無事母親に会えた。
母親は見ただけで亜人なのが分かった。
「なんと……お礼を申して良いか……」
「ええって。困ったらお互い様って言うやん?
もう見失ったらアカンで?」
カッコよく背中を向け立ち去ろうとした瞬間、、、
ぐぅう
………クソダサい話である。
「ママ、お兄さんも迷子なんだって。」
その腹へりの音を聞いてか、少女は母親を見上げながら言う。
「あら……それは大変ですね…
こんな時間では、お仲間もすぐには見つけれないでしょう……
良ければ1泊していってください。」
翔は頭も掻きむしり、
「そんならお世話になります。」
ペコッとお辞儀すると、亜人の母はニコッと笑い少女も笑顔で翔を迎えてくれた。
ールーテシアの家ー
「妻からお話は聞いております。
翔さんとおっしゃいましたかな?私はクライスと言います。
さぞ大変な境遇と聞きました。
娘の命の恩人、ここを自分の家だと思って1泊と言わずゆっくりしてください。
娘も懐いているみたいですし。遊んでくださると助かります。」
「改めまして、家内のレフィルです」
2人とも深く翔にペコとお辞儀をする
「たまたま目に入っただけで、そんな大層なことしてませんって」
「翔さんはご存知無いでしょうが、亜人とはそういうものなんです。
見た目が魔族に似てると言うだけで白い目で見られるんですよ。
この国はまだ亜人に対しては優遇してくれる方なのでこうやって食べていけますが…
普通の人間なら見捨てるか人質にするとか、想像しただけで恐ろしい。無事に送り届けて貰える…それがどれだけ有難いことか……」
父親は見た目が凄い厳ついから、怖い人かと思えばとても涙脆いらしい。
「パパ、そんなことよりルーお腹すいた!!
お兄さんもペコペコなんだって!」
「それは…よくないな。
これは自慢なのですが、うちの妻の料理は絶品ですよ?期待しててください」
「お兄さん!ご飯出来るまでルーと絵本読も!!」
「いや……わいも手伝っ……」
翔がそこまで言ったあたりで、母親は翔に首を振り、父親は行っといでと言う
翔はルーテシアに腕を引かれるまま、遊び場まで連れていかれた。
「すっかりお兄ちゃんが出来たみたい。」
「これは娘が取られんようにしないといけないなぁ」
そんな話し声が背中越しに聞こえた。
【イベント:異種交友】が発生しました
「?」
ふと頭の中でそんな言葉が聞こえた気がした。
「お兄さんは、ルー達が怖くないの?」
ふと、絵本(?)を抱えながら少女は聞いてくる。
「亜人言うたかって、同じ人間やろ?」そういうと少女は満面の笑みになる
「うん!!!」
翔の膝の上で、絵本を読んで貰う少女
まさにその光景は仲のいい兄妹でしか無かった。
「この部屋をお使いください。
旅に出た息子が使ってた部屋です。」
ご飯を食べて、ルーテシアも寝かしつけたあと、宛てがわれた一室は使われてないと言う割にはキレイだった。
「お仲間早く見つかるといいですね。おやすみなさい」
そういうだけ言ってレフィルは部屋を後にする。
「……さて。状況は何もよぉなってないな」
少女を助け、両親に家にまで招待されたまでは順調だと思う。
「まぁ、これが極悪非道な場所やったらワイ一巻の終わりやな。
最低限、自分一人でなんとかなるレベル迄ならんとなぁ……」
「寝てから考えるか!」
そう言った彼は、すぐさま寝た。
問題は山積みだが…頭の片隅で同じ異世界に飛ばされた少年の無事を祈って…