湖の捕食者
湖から数十m進んだところに小屋が建っていた。
自己紹介も軽く済ましながら、小屋の前まで進んでいく。
「狭いのだけは許してくれよ」
彼の発言通り、小屋は4人で入るには少々窮屈ではあったが話し合いする程度で有ればさして支障はない。
何より意外だったのはこの荒っぽい性格なのに、小屋の中は散らかってなかったのが意外だった。
「えーっと……資料……資料っと」
訂正、散らかってなかった訳ではない。
そんな僕とレコットが白い目で見ているとは知らずに手書きのメモのような物を数枚発掘したらしい。
「ここ2週間くらいで出没した魔物の数だ。あの水たまりから大量に出てくる。水棲系の魔物とか関係なくな。」
全員に資料が見えるように、紙を机の上に広げながら情報を整理していく。
「前半は森林地帯、砂漠地帯の魔物はここ2、3日で溢れて出てきてる。」
「直近で一番の強敵はガルモスだね……
厄介だから一番相手したくないかなぁ……」
「前は3、4体だけだったから倒せたが10、20って湧いて来てたらと思うと想像したくねえな……」
リュアの報告にレコットが強く頷く中、僕の隣でずっと聞いてたシルフィーが口を開く。
「そもそも、なんで溢れてきてるんです?この有象無象の魔物は……?」
「……」「……」
レコットとリュアは顔を見合わせて苦笑を作る。
「シルフィーちゃん、それを調べに来たんだよ?」
レコットが苦笑しながら伝えるとシルフィーはそのまま僕に視線を移す。
まるで僕が答えを知っているかのように。
「おおよその検討は付いているんだけども……有り得ないレベルのマナをドコから生成しているのかを説明できない。」
2人が愕然としているのをシルフィーは、ニコッと笑顔で返した。
「残念ながら、お前の考えてる魔法の可能性は真っ先に潰されている」
陽鎖刀の答えに苛立つようにリュアは返答する。
「腹立たしい話だが、魔法陣の類はおろか、道具の類も、あろう事か術者すら見つかってねえ。認知出来ねえ場所からで魔法を遠隔で発動出来るバケモンが居るとは思いたくねえな。」
リュアの推測にレコットは無言で同意する。
「確かに僕も信じたくないね……そんな天才が2人いて欲しくない。」
「ミアちゃんは確かに天才だとおもうけど……そんな事出来ないと思うよ?」
レコットがミアのいる方角に目を向けて否定する。
しかし、僕の言った天才はミアでは詠唱するしない以前の問題だ。確実に足元にも及ばない。
「んで、話を戻すけど、魔法陣の場所は予想がついてる。というかそこしかない。」
そういいながら僕は湖の方に目を向ける。
「おいおい……冗談キツイぜ?まさか……」
「なるほど……破壊されると効果を失うのなら人間には辿り着きにくい場所という訳ですか……」
当たり前なのだが、設置型の魔法は起動式になる魔法陣はないとただのマナの溜まり場になる。
そしてその起動式は、計算の上で完成されており、一部でも破綻すると魔法としては成り立たなくなる。
故に……
「湖の中にあるって言うの……でも少しでも水が動けば…」
「たぶんだけど、湖が赤いのはそれが原因なんじゃないかな…水が循環してない。
だから、倒した大量のモンスターの血が残ったままになってる。」
しかしそれを差し置いても、この紙1枚に収まりきってない量のモンスターをどうやって召喚しているのか……
「人間1人に用意出来るマナじゃないのは間違いないな。相当やってる」
【ケタケラケタケラ……】
僕がそこまで言い切った後に、小屋の外で気味の悪い笑い声が聞こえはじめる。
【ケタケラケタケラ……イケ……にえ。タベ……】
「気持ち悪い声です……」
扉の前に居たシルフィーはすぐ様、僕の後ろに隠れるように移動する。
僕は僕で、本を開いて構える……。
レコットはどこからか出した杖を構える。
「因みなんだけど……リュアくんの知り合いだったりする?」
レコットの問いに、自らの大剣を構えて笑いながら答える。
「……こんな気味悪い鳴き声の友達居ねえよ……」
瞬間、小屋の屋根の部分が消し飛ぶ。
「!?」「陽鎖刀さま!!!!!」「陽鎖刀くん!リュアくん!!!」「ちっ!」
声で全員の生存を確認し、煙が晴れるのと同時に現れた巨体と少女に目がいく。
「ご馳走がいっぱいだね。ミリュちゃん、ご飯の時間だよ?」
【ケラケタケラケタケラ!ゴハン!!!!】
「構えろ!!!!」
「飛べ!!!」
敵が視認されると同時に、リュアの号令が聞こえ、僕は魔法を唱えて、シルフィーのジャンプ力をあげる
「狐火!豪炎!!」
バフを確認後、シルフィーは高く飛び、敵を爆破する。
【あづい、アヅイ、あ゛ヅイ!】
敵が大きく怯んだ隙に各々は原型を留めていない小屋から出ていく。
「どうやら、想定していたよりもヤバいのが出てきたみたいだな」
荷物の様に抱えてたレコットを雑に下ろしたリュアが杖でポコポコ殴られながら僕に目を向ける
「お前も魔法職か?多少なら戦えるって期待しても?」
「多少ならね……」
起動式を唱えられてない魔導書を横目に、僕は敵に視線を戻す。
「ヒドイね。まだ何もしてなかったのに急に攻撃してくるなんて。」
小屋を破壊したのはただの遊びだったらしく、服に着いたホコリを手で払いながら少女が歩いてくる。
シルフィーの一撃で巨体のモンスターが体勢を崩したので振り落とされたと推測される。
「おい、ガキ。ナニモンだ?迷子なんて嘘は要らねえぜ?」
後ろで巨体が暴れ散らかしてるのを他所にリュアは問う。
「フフフ・・・ご飯に答える名前は私には無いの。
ミリュちゃん、泥んこ遊びはお終い。ご飯食べるよ。」
少女が化け物の名前を呼んだ途端、土塊が少女を乗せながら、先程見た化け物に姿を戻す。
「俺が前に出る。だから背中は任せる。」
「了解。」
配置会議をものの数秒で済ませ戦闘態勢に入る。
「……ゲーム……スタート。」
その言葉が強がりから出たのか、恐怖から出たのかは言い出した本人にも分からない。




