赤く濁り、紅く光る
「陽鎖刀くん。さっき言ってたけどこの先の湖の逸話についてご存知なの?」
「レコットさんは逆に知らないんですか?有名な話だと思ったんですけど…。」
僕を先頭に、湖へと向かっていると並ぶように歩くために少し早歩きになっていたレコットが僕に話し掛けてくる。
話しかけられたのをキッカケに少し歩く速度を落として疑問を返す。
「へー陽鎖刀くん知ってるんだ。湖のこと。
私、あーいう逸話みたいなの全く詳しくないんだよねぇ」
なんせ物心ついた頃から仕事に追われて追われて夢見ることなんか……と被虐混じりに言うレコット。
「あの、レコットさん、近いです……」
シルフィーが指摘するとバツの悪そうな顔で少しだけさがる。
指摘した本人は付かず離れずの絶妙な距離で歩を進めている。
「ごめんね。で湖の逸話知ってるなら教えてよ?
なんだっけ?姫さんが泣き続けたって話。」
全く詫びる気が無いのか、話題を速攻で逸らし、湖について聞き返してくる。
シルフィーも知らないのか、その反省のなさを追求はしなかった。
「英雄は、悪魔を倒した後、その姫と恋に落ちた。
だけど、それが禁忌になってしまい天使としての力を失い、人に堕ちてしまう。」
僕は2人に背中を向けたまま、英雄譚の続きを語る。
「姫が身篭ったあと、それを嫉妬した他国の王子達からの奇襲の果てに少年は死んでしまった。
それを知った姫は庭で泣き続け…声が涸れ、涙も枯れた頃に姫の周りには湖が出来たらしい。だから……」
僕はひと呼吸おいて淡々とそう告げた。
「涙の湖とも呼ばれている。全く夢の無いお話だよ。」
僕がそう告げたと同時に、問題の湖が見えて……
「… …どうなってるのコレ……」
「陽鎖刀様……その逸話は……本当に涙だけなのですか?」
3人が一様に目の前の異様な光景に固唾を飲む……
「実物を見て肯定はしづらいね……」
透明な青色を想像していた、僕ら一行の目の前に現れたのは,どす黒く真っ赤な湖だった
光景に戸惑いを覚えていると、湖の方からが歩いてくる。
「観光客かと思ったら姉さんか……」
大剣を携えた体つきの良い高身長の青年が、話かけてきた
「教会の爺さんが、援軍を寄越した感じか。
俺が強いのは姉さんも知ってるでしょ?
要らないから帰っていいよ。」
言うだけ言って背を向ける青年に僕は告げる。
「援軍と言うよりも調査だね。
この湖から湧き出てきてるっていうモンスターを湧き出無いようにとの御用達でね。
要は君を助けに来るほど僕も暇じゃない。」
「なるほど。すまねえな。戦うしか脳がねえもんでよ。そういうのは助かる。
湖の近くは危ねぇからついてこい」
青年は振り返りもせずに歩いていく
「すごいね。陽鎖刀君……リュア君に謝らせるなんて。」
「利害が一致しただけだよ。きっとね」
青年を見た時に真っ先に目に付いたのは身体中にある泥や、胸プレートをなにかに削られたあと。背中にあった傷や大剣の損耗具合……相当な連戦続きだったんだろう……
鼻歌混じりに、僕らの先を歩いていくレコットは背中の傷を見るやいなや、駆け寄り治療させろと言い迫ってたのは言うまでもない。
【ミ…ミ…ミツケ…タ】
「そうだね。“適合者”だね。ちゃんと、食べようね?私達の願いのためにね?」
水面の上から黒いゴスロリを着た少女が持っている不気味な何かが気味の悪い音を鳴らす。悪意のある意志を僕らは揃って聴き逃したのは言うまでもない。




