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星空舞う騎士の英雄譚  作者: 小鳥遊 白奈
聖女と幼魔女
21/25

小さな天使の英雄譚

 これは、これはとても昔の話。

 まだ、亜人と魔物の区別がされてもいなかった頃のお話…

 この国には、それはそれは美しい歌声を持つ姫がおりました。

 結婚に時期にもなると、数多くの他国の王子から求婚を迫られるほどの美貌を持つ者でしたが…少し問題があったのです…


 ある王子は言いました。

【私と契りを交わしてくれると言うなら、そなたの欲しい物は不便なく与えよう】

 ある王子は言いました。

【ならば私は、そなただけのそなたの為の国を!】

 ある王子は言いました。

【ならば私は、そなたの国の者にも平等な裕福を!】


 王妃はどの王子に対しても目を輝かせ、和気藹々と王子達のプロポーズを聞いていたが…

 肝心の姫は何も言わずにその場を辞したと言います。

 彼女は感情を表現するのに極度の恐怖を抱いていた為、人と話すのは苦手としていました。


 そんな彼女の唯一の会話相手が天使の御使いと名乗る10歳前後の見た目の少年でした。

 少年は姫の小さき頃からの友達で、色んな冒険譚や神話を彼女に聞かせており、彼女にとってそれが城の中での唯一の楽しみでした。


 姫はこの少年との日々だけが全てであり、いつまでも自分のために色んな冒険譚を聞かせて欲しいと願っていました。

 そんな何も変わらないある日、醜い悪魔が現れ…姫を攫いに来ました。

 もちろん、天使の少年は抗うも悪魔との力の差に為す術も無く、敗れ致命傷を負ってしまい呆気なく姫は攫われてしまいました。


 悪魔の狙いは、姫の歌声を独占すること。

 王は姫の奪還の為に求婚に来た王子たちに言いました。


【我が娘を無事に取り返した者に娘との結婚を認める!】

 数多くの王子たちは、我こそはと立ち上がり悪魔の住む古城に次々と乗り込みましたが…

 結果はどの王子も何の役にも立たない死体となって帰ってきた…という事実だけ。

 大事な愛娘を連れ去られ悲しみに明け暮れる王妃は、ついに病に倒れてしまい、王も心を折られたその時…


【僕が、姫を救って見せましょう。】

 王の前に現れたのは、銀の鎧を身を纏い、蒼き鞘の剣と紅き鞘の剣を量の腰に引っ提げた少年だった。

 見た目は15.6位の青年しか見えない少年に対して王は不信感を抱いたが…藁にもすがる思いで少年に告げた。

【私たちの娘を…頼む…】


 少年は暗き森を希望の光で照らし、荒れ果てた村や街に立ち向かう勇気を振りまきながら、悪魔の住む古城に辿り着きました。


 悪魔の猛攻を蒼き剣で呪いとともに切り裂き、紅き剣で悪魔の体を浄化の炎とともに焼き切りながら、戦いは激戦を極めたが辛くも少年は勝利を収め、栄光とともに姫と家族の待つ王城へと帰ったのでした。


 めでたしめでたしとは、此の物語は終わらない。

 しかし、語り部はこう綴った

「此のあと、英雄と祭り上げられた少年は天使の姿に戻り、二度と彼女の前に姿を表さなかったとされています。ご清聴ありがとうござした」


 取り出していた楽器は光の粒子になって手元から消え、彼は小さくお辞儀をした。

 子どもたちと一緒に拍手を送り、図ったかのように陽鎖刀様が戻ってきた。


「お帰りなさいです。なにかお手伝いできることはありますか?」

 姿を確認するや否や近づきお伺いを立てる


「このまま、問題の湖に行こうと思っている。

 何が起こるか正直検討もつかないから、子どもたちの危険も考えて、ヴィッタちゃんには、ミアちゃんと一緒にここの防衛を頼みたい。」

 ヴィッタちゃんは苦い顔をしたが流石に断る言葉を持たなかったのか、渋々ではあるが頷く。


「じゃ、全く気が進みはしないが…行くか。

 今物語に出てた姫の喉が枯れるまで泣き続けた涙が溜まったとされる湖へ」

 そう言って、私達に背中を見せる陽鎖刀様の背中はどこか後悔が見えた気がするのは私だけだったのだろうか?

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