星空の光も届かない場所で
陽鎖刀にとって理不尽なんて日常茶飯事だった。
いや、流石にそれは誇張表現だったかもしれない。
それを理不尽だと感じてたなんて今ならこう言える。
「へそで茶をわかせるな」
苦笑しながら目の前の化け物を睨みつける。
「グリモア使用済み、なけなしの武器はアイツに刺さったまま。
んで、バグって文字通りの化け物にってか。縛りプレイかな?」
グレムリンだった魔物はもはや原型を留めておらず何の魔物だったか?と聞かれれば分からないと答えるのが関の山の状態になっている。
が、しかし、狐の少女が言うにはあれが母親の仇らしい。
つまり、封印されていたのはグレムリンなんて生易しい魔物ではなかったということか。
とまぁ、考察をのんびりしているが向こうは一切動きを見せない。
ただただ、筋肉の繊維が丸見えになっている状態でずっと形を変えている。
「魔法に頼るのは出来そうにないな。」
狐の少女が放った魔法はノーダメージというかダメージ判定あったのかすら不明。
【ひさ兄、多分だけど、あの肩に刺さったままの剣の部分だけ全く動いてない】
「突くならそこしかなさそうだね?」
【多分だよ?も少し情報が、、、】
「ゴメンだけど時間切れだ。向こうが動く!」
グシャグシャの肉の塊が棍棒の形になって襲う。
「もう何でもありだな、これ」
【ひさ兄、挑発しながら攻撃避けてほしい。】
「無茶苦茶、しんどい事言うね?どっちにしろ決め手ないのは変わらんから従うけどさ。」
もう頼れるものはズルだろうが使うしかない。
「このクソがこっち向け!」
手荷物に有る矢を弓にあてがって放つ。
どこに目が付いてるのか?なんてもう見分けなんかつきそうにないがそんな悠長なことは言ってられない。
その矢を受けて、周囲の石ころが僕に向かって飛んでくる。
「それはズルだろ!!」
慌てて、ローリングで避けるが何個かが掠ってダメージを追う。
それを狙ってたかのように、変形済みの腕で叩きつけに来る。
「土よ!」
ダメ押しの魔法の壁を生成し難を逃れる。だが今のでMPが底をついた。
「クソッタレが!」
反対の手で、薙ぎ払いの攻撃を行ってくる。
反対方向に逃げようとすると、、、
【そのまま突っ込んで!】
「もうどうとでもなれ!」
薙ぎ払いを行う腕にそのまま突っ込む。
【次、上からの叩きつけ攻撃】
すると予言通りに上からの叩きつけが来る。
【それを弓矢で攻撃!】
言われたとおりにそれを矢で射抜く。
だが、巨体の攻撃に矢が一本刺さったところで何の影響もと思ったが、
【今ので耐性値崩した!ひさ兄、今!】
原理は不明だが…襲い来る腕が砕け散った。
そしてそのまま体を駆け上がり、抜身の剣を回収する。
暴れまくる怪物に体を揺らされて、こちらも体勢を崩しそうになるが気合で耐える。
一瞬揺れが収まった瞬間に、飛び降り地に足をつける。
【次の変形、計算上は足だけが肥大した状態になるはず】
「それでどうなる?」
【そこ以外の耐久値がかなり低くなる、でも多分大したダメージにならない。
やるなら、その肥大した足のどっちかにあるコアを叩くしかない】
頭の中でコア?とクエスチョンマークを浮かべるがすぐに合点がいく。
姿形が軟体生物のように変形し明確な弱点、要はコアが存在する種類なんぞ一種類しか存在しない。
「スライム種か。答えは分かったけど、そんな強い種族じゃないはず。。。」
雑魚も雑魚の部類のモンスターだ。それがこんな凶悪なモンスターに進化するなんて想像もつかない。
【今は考えても仕方ないよ!先に倒すよ!!!】
言われなくてもそうするさ。と言いながら剣を構え直す。
それに合わせたかのように向こうも形が変わった
【計算通り、、、?じゃない!?ひさ兄!?】
その言葉を聞くより前に僕は走り出していた。
化け物は計算がはずれ足が肥大している状態ではなく両腕が肥大している状態でとにかくバランスが悪かった。
「狐ちゃん!一回でいい!足元爆破して!」
自分の視界の外で今起きたばかりのシルフィーが慌てて魔法を詠唱する。が起きたばかりで思ったように魔力が形にならない。
「チャンスは一回こっきり。」
圧倒的にアンバランスな状態なのが本体も分かってないらしい。
動きがさっきより圧倒的に鈍い。どんな攻撃が来ても当たる気がしない。
「小学生の頃、理科の先生が言ってたんだ。
カブトムシが3分巨人と同じサイズになったらどうなるかって」
答えは簡単だ、体の質量に対して足が支えきれず体が崩れる。
「狐火よ!爆ぜて!」
そして、そんなタダでさえ覚束ない足元が急に破壊されたらどうなるかなんて小学生でも分かる。
体勢を崩して体の形を保てず肉の塊に戻って形成を整えようとする。
「お前に次は無いよ!」
球体状態の肉の塊に踏み込んで剣で深く貫く。
“パキン”とまるでガラス玉が砕けるような音が響く。
「ぐぎゃぁああああああああああああああ!」
核を破壊され、自我(元々あったかは置いとく)が崩壊を起こし、洞窟の中というなのに暴れまくってまるで巻き込んで殺そうという状態だ。
【早く逃げて!崩れる!!】
「狐ちゃん捕まって!」
走り出してる僕に狐の姿に化けて、腕に捕まる。
【お願い間に合って、、、、】
崩れ始める洞窟、上から振ってくる石を軽快な(大嘘)動きで避けつつ出口を目指す。
「急ぎな、坊や!」
出口の付近でアラシスタの声が響く。
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ」
それと同時に化け物の声が鳴り響きながら追いかけてくる
「文字通り鬼ごっこってか?」
「変なこと言ってないで走ってください、追いつかれたらお終いですよ?」
言われなくても全速力である、魔力は尽きてるし体力もほぼない上に体中が悲鳴を上げている状態だ。
「あ、ヤベ!?」
一瞬の揺れと、足元の凸凹に足を取られ体勢が大きく崩れる。
「狐ちゃんをお願い!」
「ふぁ!?」
届けばいいな。で投げたがアラシスタは難なくキャッチする。
それと同時に自分の腕に縄が絡みつく。
「冗談だよね?」
ヴィッタが全く笑みの見えない顔で僕を釣り上げるかのように引っ張る。
出口から釣り上げられ、ヴィッタちゃんに抱きとめられアラシスタに目配らせをする。
「バケモン、アタシからの餞別さ。泣いて喜びな!!!」
そう言って、なにかの塊みたいなのを複数投げ捨てる。
程なくして、派手な音と舞い上がる煙が起こり、程なくして入口は封鎖される。
怪物の怨嗟も塞がれた入口からは全く聞こえない。
『【愛する者に奇跡を】のクリアを確認しました』
ふと脳内に、妹以外の機械音声が鳴り響く。
「、、、ゲームセット、僕の勝ちだ。」
「はい、貴方の勝ちです。シルフィーを助けて頂き有難う御座います。」
その言葉を聞き届ける前に僕はこの世界から意識を切り離していた。




