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星空舞う騎士の英雄譚  作者: 小鳥遊 白奈
呪いの魔法と穢れない思い出
12/25

英雄と化け物

 生まれたときからでは無い、あの小屋で過ごすようになったのは、、、

 おかぁがある化け物を閉じ込めたからだ。ありもしない幻想に取り憑かれた悪魔が私を閉じ込めた。

 その悪魔が、文字通り化け物がいる祠に私を連れてきた。


 牢獄とも言える銀色の柵に魔法陣が浮かんでいる。

 だがその魔法陣も力が薄まっているのか時々点滅を繰り返している。

 おかぁの魔法を一回も見たことは残念ながら無い、だけど血筋だろうか?


「これが消えたらもう⋯」

 これが唯一の生命線であることが分かる。


 魔法陣の向こう側では唸り声とも怨嗟の声とも区別つかない怪物の声が聞こえる。

 今か今かとその時を、ただ待っている。


 こんな時、絵本の中の英雄はボロボロ状態になってたとしても、【待たせたね】みたいな格好の良いセリフを言って、化け物を颯爽と倒してくれるのだろう。空想の物語ではそうなる。しかし、ここはただの現実でしか無い。

 英雄の卵みたいなのが助けに来てくれるわけ無いし、私自身がその化け物を倒せるような力に目覚める事も無い。


「短い人生だったなぁ」

 完全に諦めた時だった…

 魔法陣が強く光りだし、収まったと同時に砕け散った。


「!!!」

 鎖の冷たい音が響く、逃げようにも繋がれているんじゃ満足に動けない。


「…」

 ずしずしと怪物の足音が聞こえる。


「……」

 おかぁを憎んだことは無い、むしろ産んでくれて嬉しいとさえ思っている。

 だけど、こんな状況になるなら、夢なんて持たせないで欲しかった。


「………」

 赤い目だけが私を見る。

 私を見るなんて洞窟から入る光だけで事足りる。。。

 目が合った瞬間に目を逸らしたからどれだけの巨体に見られたかなんて知らない。


「…………」

 吐息が届く。もう、神に祈ってる時間は無い。

 伸ばされた手に握られそうに・・・・


「ぐぉっっああああああ!」

 次に聞こえたのは私の悲鳴ではなぃ。

 化け物の悲鳴だった、、、暗闇の中で何が起きたかわからず目が点になる。


「依頼受けるんじゃなかった!あの狐なんてもん解き放とうとしてんだ!」

 断末魔のあとに聞こえた声は私を森で助けてくれた人だ。

 化け物を相手にするにはあまりにも小柄な少年だ。

 どう見たって、この少年に勝機があるとは思えない。


「こいつは、僕がなんとかする。早くこのコ連れ出して!」

「人使いが荒い人はモテませんよ?かっこよく登場しただけに印象は最悪です。」

 あろうことか、あとから出てきた少女に私を託し、時間稼ぐという。

 命令された少女は悪態をつきながら、私を連れ出そうとする。


「ヴィッタに嫌味を言われるのも癪です。出来ることはしますよ。」

 そう言いながら、私の枷を粉砕して。

「しっかり捕まってくださいよ?」

「あ、あの、!あの人は、、、?」


 躊躇いなく出口を目指す彼女を指摘するように言う。


「さぁ?死なれたら後で姉さん達に文句言われるので勘弁してほしいくらいでしょうか?

 しかし、あの化け物に生きててほしくないのも事実です。

 私は戦うことに特化してません、逃げるほうが得意なので、なので折衷案として。。。

 私があなたを担いで逃げ押せる時間をあの男が稼ぎあわよくば倒してほしい。

 理想を言えば、共倒れが理想ですね。」


 一体あの人はこの子に何をしたらここまで嫌われて貰えるんだろうか?

 そんな疑問を掲げながら、無力で願うことしか出来ない私は逃げるしか選べない。

 だから、叫ぶ。

「お礼!必ずしますから!だから!!!ニャっ!?」

「あまり下手なこと喋ると舌かみますよ?」

 この人ワタシ嫌い

 ____

 ギガンデット・グレムリン

 巨人の大型のモンスター、不健康そうな緑の体。

 その存在は多くの生態系を破壊し、あたりの村をその規格外の腕力で滅ぼしたという悪魔。


「やっぱりゲームで動かすのとは話が違う。

 ステータスの割に体が思うように動かないし力の加減が効かない。」

 このゲームは、僕自身相当やり込んでる。

 だが、ゲームの時のようにステータスが上がれば選択肢が増える、なんて優しいわけもない。

 そして、目の前の怪物は攻撃した僕を睨みつける。


「ほんと、この世界の神様っていうのは僕に対してどれだけの理不尽叩きつけたら気が済むんだよ・・・」


 目の前に居るのは、ファラオと同等のこの森にいる裏ボス。

 何回、攻撃力の暴力を受けたか分からない。

 攻撃力/防御力が高いのは言うまでもないが体力も高めにあり、何より一番理不尽なのは、、、


「あの見た目で素早さがあることなんだよなぁ」

 強い硬い速い。その三拍子を揃えた文字通り見た目以外は目指したい理想像1位だ。


 ぐぉおおおおおおおお!


 世界の不条理に不平不満を述べれるのはここまでらしい。

「…本借りるよ。返す目処は暫くないけどね」

 ログインボーナス(w)の剣はあいつの巨体をぶっ刺したあとに即座に抜けなかったため刺さったまま放置している。向こうさんも手が届かないので諦めているようだ。

 暴れまわるのに適さない洞窟の中で暴れまわって戦う予定はないので丁度いいか。


『敵HP650万!?ゲーム内のステタよりも強い個体だよ!!』

 妹からの死刑宣告を頭の片隅に置いといて、遺跡で手に入れた白い本を装備する。

『ひさ兄?何したの?すごい勢いでMPと魔攻上がったけど、、、?』


「何も記さぬ叡智の結晶よ。」


 本の表紙をめくり記憶を頼りに起動ワードを唱える。


『くるよ!』

 まぁ、特撮ヒーローの変身を行儀よく待ってくれる怪人なら僕としても大変ありがたい話だったんだけど、、、


「クソ!」

『シャドウメイデンで拘束してから詠唱しないと向こうのほうが速いに決まってるよ!』

「ここに一定の光源があったならそうするけどさ。。。」


 影の針鼠は、敵の影が存在しないと魔法として発動しない。

 洞窟の中という光がまともに入ってこない場所では一瞬光が差したところでその光源を遮断した瞬間、魔法として効力を失う。これほど相性の悪い場所も存在しないだろう。それにだこんな狭い場所であいつを固定したらタダでさえいつ壊れるかわからん洞窟で無茶苦茶に暴れられる事になる。

 そうなれば固定したところが震源になり発狂待ったなしになる。

 まぁどっちにしろ出来ないことなのだから関係ないっちゃ関係ない。


永遠(とわ)の約束、今果たされん」

 敵の攻撃をステップで躱す。壁に攻撃が当たらないように細心の注意を払いながら、詠唱を続ける。

 苛立つ化け物の咆哮を諸に受けても、態勢を崩さず根気で避けていく。因みにキレたいのは僕の方だ。


「誓いの言葉を捧げて、祈りと添い遂げられなかった想いを代行する。」

 ここまでの詠唱はこの本の起動術式だ。作った本人なら背表紙を撫でるだけでこの本の中身が詠唱できるようになる。僕は借りた人間なので本が選んだページの魔法を一回だけ唱えることが許される。

 自動的に開かれたページを見て、笑みを浮かべる。

 グレムリンの熾烈な攻撃は止む気配がない、チャンスは物理的に一回のみ。

 攻撃を避けるたびに舌を噛みそうになるし、足元が滑りそうになるが気合でなんとかする。

 薙ぎ払いの腕の攻撃を避けて、伸ばされた腕を駆け上る。


「神に捧げし祈り、滅びの雷。撃たれた痛みは罪の数。ッ゙!」

 が、即座に振り回され壁に叩きつけられる。視界に映るHPが目に見えて減る。

 次に一撃入れば余裕で消し飛ぶだろう、今助かったのは奇跡に近い。

 当たり前な話だが、こっちが痛みで苦しんでる中、追撃の手を緩める慈悲は持ち合わさってないらしい。口に溜まった血を適当に吐き捨て、体を無理やり動かす。


「すべてを貫く槍よ。罪を犯しし愚か者に雷神の一撃を!」

 読み上げ終わった途端に、

 だがグレムリンは何かを察したのか得意の俊敏で縦横無尽に動く。


『これじゃ、狙いが定まんない、、、ひさ兄気を付けて!』

 グレムリンの気持ち悪い嘲笑が反響して聞こえる。お陰様で、どこからどこに移動するかが全く見当がつかない。

 目で追うにしても完全に翻弄されるだけだ。この魔法を外せば、最早勝ち目など存在しない。


「チャンスは一回きり、、、せめて一瞬でも」


 その瞬間だった。


「迸れ!狐火!」

 さっきアレイヤちゃんと一緒に逃げたはずの女の子だ。

 その火は、グレムリンの視界を塞ぐ。

「っ!」

 目に直撃したのかグレムリンは目を瞑ったまま叫び散らす。

「今です!」

 その声が聞こえるか聞こえないかのタイミングでもう僕は本を閉じていた

「堕ちろ!ペイン・サンダー!」

 その瞬間、グレムリンの頭上に、無慈悲な一撃が落ちる。


「ぐぎゃあああああああ!」

 直撃を避けられなかった、グレムリンはそのまま力尽きるように倒れる


「ゲームせっ…」


 と思ったんだ。


『ナニコレ?あ、やばいかも⋯』


「冗談だろ?雷属性最強魔法だぞ?」

 一度HPが0になるのを確認した。

 だが、グレムリンは霧散するどころか焼け焦げた体で立ち上がった。


 縺薙→繧上j縺九i縺ッ縺壹l縺溘b縺ョ

 HP?/?

 そして、その体は赤黒く異形な姿へとどす黒く変貌する。

 最早元の怪物が何かがわからないのが点数高い。


『名前がバグってる?え、、、、

 今すぐ、逃げて!お、』


「おかぁの!!!!仇!!!!!!」

「ま、待つんだ!」

 そう言って、僕の後ろから飛び出していく。


「狐火!豪炎!!!」

 脇目を振らずに、目に見えてもわかる高火力の魔法を放つが、、、


「・・・・。」

「えっ?そんな、、、、、」

 文字通り化け物は意に介した様子はない。

 そして、まるでゴミを払うような動作でシルフィーを殴る


「!っ」

 声にならない声が発生され、文字通り吹き飛ばされる。

「まにあええええええええええええええ!!!!」

 吹き飛ばされるシルフィーを抱きとめ、壁への衝突を肩代わりする。

「爆ぜろ!」

 まともに当たれば自分のHPも吹き飛ぶので最小の手で緩和する。

『おにい、生きてるよね、、、』

 既にHPはデッドラインの赤色が点滅している状態だ。


「ほんと、嫌いになりそう。」

 煙は晴れ、現れたのはとても英雄には見えないボロボロの少年だ。


「かかってこいよ。絶対勝ってやる。」

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