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悪役令嬢ものの王子に転生しました。なお、王子の正体は男装の姫です。私はどうやってこの世界を生き抜けばいいですか?

ジャンル:ハイファンタジー


登場人物

⚫︎トーマス……主人公。転生者(?)で女だが、憑依した先は男装の姫だった。

⚫︎アマンダ……表向きは男とされているトーマスの婚約者。公爵令嬢。

⚫︎マリア……聖女。いわゆるテンプレヒロインでありトーマスをものにしようとしていた。


簡単プロット


 お姫様願望が異常に強く、ラノベの影響で悪役令嬢に憧れる主人公。

 車に撥ねられ異世界転生……! と思ったら、転生先は王子だった。

 なんで男なのよー! 私は悪役令嬢が良かったのにー! と叫んでいると、この王子の正体が男装の姫であることに気づく。

 そこで彼女は、早速王子を辞めて姫になることを決めた。

 姫が王子に扮していた理由や婚約者と関係など次々に明らかになる事実の中で、主人公は逆ハー目指して一直線に突き進んでいく。


『大きくなったらお姫様になります』


 小学校の卒業文集にそう書いたのをよく覚えている。


 私は本気でお姫様に憧れていた。普通の子なら五歳ほどで捨て去るであろうその願望を、私は小学校高学年になっても持っていた。

 きっかけは友人のピアノの発表会を見に行ったこと。私のあんなドレスが着たい。そう思った時から、ずぅっとお姫様に憧れているの。


 もちろんただ憧れているだけではなく、諸外国の王女の嗜み、マナー、心構え、歴史。たくさんのことを覚えた。ドレスだけは買ってもらえなかったがワンピースで代用し、よくお姫様ごっこもしていた。


 そしてそのお姫様願望は中学時代に出会った一冊のライトノベルで大きく形を変える。


「悪役令嬢サイコー!」


 読んだライトノベルは、無実の罪で断罪される悪役令嬢が隣国の皇太子に惚れられたりして逆ハー状態になる話。

 いわゆるテンプレ。


 私は悪役令嬢の虜になった。

 攻略対象を奪おうとする悪女ヒロインにざまぁ、馬鹿王子にざまぁ、他のイケメンとイチャイチャライフ。

 容姿端麗成績優秀、それより何よりフリフリドレス!


 私は以降、悪役令嬢に憧れを抱く。あああ悪役令嬢になりたいなあ。

 そんなことを思いながら中学校から帰っていたある日。


 ――車にはねられた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 もう最悪。

 誰か私をなんとかしてほしい。


 トラックに撥ねられて異世界転生。そして転生先は私の憧れの貴族だらけの王国!

 目の前には綺麗なドレスの女の人でいっぱい。ああ、あれが私の欲していた美……!


 ここまでは良かったのだが。


 私は気づいた。なんで、私の服には何のフリフリもついていないの?

 それだけじゃない。すぐ隣にいた金髪に青目の女の子がこんなふざけたことを言ってきやがった。


「どうなされましたか、トーマス殿下?」


 ちょちょちょ、ちょっと待て。

 「トーマス殿下」って……。

 それって完全に男の名前では?


「ごめんなさい、ちょっと眩暈がして。で、私は女よね?」


「何をおっしゃっているのですか? 馬鹿ですか死ぬのですか?」


 うわあ。

 うわあああ。

 来たよ刺々令嬢、なんてツッコミ入れてる場合じゃない。


 私……男?

 男、なのか?


 周囲が痛々しい視線を向けてくる。ああこれは間違いないな。

 神様、恨みます。


 私は膝から崩れ落ち、どこにいるとも知れない神を睨み付けてやった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 私は悪役令嬢ものの王子に転生してしまった。

 そう、王子。アホ王子。顔だけはいい、悪女ヒロインと「真実の愛」を見つけて悪役令嬢様と婚約破棄してしまわれる哀れな王子様。

 それが私。


 いやいやいやいやいやー!

 私、悪役令嬢になりたいとは常日頃から思っていたが、決して王子になりたいとか思ってなかったからね!?

 どうせ転生させてくれるなら悪役令嬢にしろよ! なんで王子!?


 私の立ち位置は、この王国の唯一の王子、トーマス。

 決して評判は悪くない。超絶イケメンで頭もいい。どうやらテンプレのアホではないみたいだけど……。


 最悪。最悪最悪最悪っ。

 なんで王子、なんで王子。

 あの金髪の悪役令嬢ちゃん、ええと名前はアマンダだったか? どうしてあいつに転生できなかったんだ。

 私は、あの子になりたかった。なりたかったよ…!


「ぐぬぬぬ……」


 忌々しい王子の服装を見下ろした。

 綺麗ではあるが、これは決して女の着る物じゃない。男物だ。

 男物の服だなんて! 私はフリフリドレスがいい。フリフリのドレスでなくては嫌だ……!

 怒りに燃え上がっていると、私は一つおかしいなと思った。


 男の体になったというのに、少しの違和感も感じない。

 もちろん背丈は前世より高くなったし、胴体もがっちりしている。

 でも、その……男の証が感じられない。


 転生?憑依?した地点であるパーティー会場から離れ、一旦おトイレをお借りし、私は脱いでみた。


 するとそこには黄金の玉が見つからなかった。どこを探してもない。男の証が私にはなかった。

 もちろんこの世界では男の証がない可能性もある。別の世界なのだから生殖方法も別なのかも。でも、女性のそれはあった。

 つまり……?


「私、女? てか、男装の姫様ってこと?」


 私は悪役令嬢ものの世界に転生した。

 しかし転生……というか憑依した先は悪役令嬢ではなく王子だった。しかしその王子の正体は男装の姫だった。


 私に一体どうしろと?



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ついでに用を足して戻って来ると、そこにいたのはアマンダちゃんではなく、別の女の子だった。

 短いピンクブロンドの髪、赤い目。うん、これは間違いなく、


「君は聖女? それとも男爵令嬢?」


 これは絶対にそうだ。ヒロイン……つまり悪女が私の前に立っていた。


「王子様、どうしたの?」無垢な顔で問いかけて来る悪女ちゃん。

 こいつが王子に魅了魔法をかけるか何かして、「真実の愛」に目覚めさせるのよね。憎たらしいったらありゃしない!


「そんなフレンドリーな喋り方をしないでくださいますかしら? 私、あなたとは身分が大きく違いましてよ」


「はぁ……?」


 私は女。女なのだったら遠慮することはない。

 例え男装の姫なのであっても、私は女として生きる……! だって夢のお姫様なんだもの!


 もちろん悪女はおどおどしている。ともかく、


「お名乗りなさいな。話はそれからでしてよ」


「え、は? うん、はい。ええと……」


「早く」


 鋭い声をすると悪女ちゃんは飛び上がって答えた。


「は、はい! あたしの名前はマリア! 王子様これはこれは失礼を」


「よろしい。ですが私はたった今から王子ではないのです。あなたが私を絆そうとしているのは見え透いておりましてよ。消えなさい」


 よし、悪女ちゃん…マリアちゃんは逃げ帰っていった。

 では早速始めさせてもらおうかしら。


「これが何のパーティーだか存じ上げませんけれど、皆さんこの私の話を聞いてくださいませ」


 声を張り上げると皆が皆私を見た。

 よほど驚いているのかアマンダちゃんなんて見開いた目からサファイアがこぼれ落ちそう。


「――宣言します。今日からこの私、王子を辞して姫となりますわ!」


 悪役令嬢ものの王子に転生した私は、転生した途端に王子を辞めた。

ご意見などございましたら、よろしくお願いします。

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