とある男爵令嬢の死の真相は……
いくら考えてもこの続きが思い浮かばなかったので投下。
⚫︎あらすじ
王太子ライアンの浮気相手として有名だった男爵令嬢ルイザの亡骸が、ある日突然王宮に送りつけられてきた。
彼女は首にナイフの跡があり、他殺であることは確か。彼女の亡骸を見た王太子は怒り狂い、婚約者の公爵令嬢ステファニーが嫉妬の末にルイザを殺したと考えて断罪を企む。
しかしそんな彼を制した国王は、この事件の真相を確かめるべく有名な探偵に依頼を出した。……レオとメギー、今まで数々の貴族の汚職事件などを解決してきた二人組だった。
⚫︎登場人物
・レオ……主人公
・メギー(マーガレット)……主人公の相棒にしておてんば王女
・ライアン……王太子
・ルイザ……王太子の浮気相手の男爵令嬢
・ステファニー……公爵令嬢
「今回の事件はかなり大掛かりのようだぞ」
長い手紙を読み終え、コーヒーをずずずと啜った後に呟いたレオの言葉に、彼の隣で何やら考え事をしていたメギーが顔を上げた。
「今回はどんな依頼? また高位貴族の汚職なの。それとももっと別の事件?」
「ああ、今までの仕事よりよっぽどでかい話だ。ネヴィル男爵家を知ってるか」
「もちろん知っているわ。この国の歴史上一番名の知れた男爵令嬢のいる男爵家でしょう」
「その通りだ。そして、例の男爵令嬢が死んだ。しかも普通の死じゃない。他殺、それも特異な方法で事件が明るみになったらしくてな。国王陛下直々に俺たちが指名された」
メギーは信じられない、とでもいうように真っ青な目を見開く。
驚くのも無理はないだろう。まさか自分たちのところにこんな重大事件が舞い込んで来るなんて、手紙を読む前のレオも思っていなかったのだから――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
近頃、この国を騒がせている出来事があった。
それは次期国王であるライアン王太子が堂々と浮気をしているということ。
王太子には歴とした婚約者がいる。
その名は公爵令嬢ステファニー・ロロ・スパンドゥ。スパンドゥ公爵家の才女と呼ばれ、容姿端麗頭脳明晰の完璧令嬢と呼ばれる少女だ。その少女を差し置いて王太子が想いを寄せる相手は平民上がりの男爵令嬢ルイザ・ネヴィルだった。
ルイザはピンク色の髪に薄紅色の瞳をした、いかにも男ウケの良さそうな小動物的な可愛げのある娘であった。
持ち前の愛らしさを武器に王太子、そしてその側近候補などを籠絡してしまったらしい。しかし貴族だけではなく平民からも公爵令嬢ステファニーが愛されていたために彼女の敵となるルイザの評判は非常に悪く、一部の人間からは疎まれてさえいた。もしも王太子の最愛でなければ一瞬にして殺されていただろう。
そんな彼女はある日、王宮に突如として遺体となって布に包まれた状態で送り付けられてきたという。
手紙に死因の詳細は書かれていなかったのでよくわからないが、前兆らしき前兆は見られなかったこと、王太子が相当取り乱して暴れまくったこと、勢い余って公爵令嬢に婚約破棄を告げようとしたので慌てて国王がそれを止めてレオたちに事件の真相を明かさせるべく依頼をしたことなどが記されていた。
「……ふぅむ」
なんとも身勝手な話だ。だが国王からの依頼である以上、レオたちに断るという選択肢はまずない。
レオはこの国では少しばかり有名な探偵だ。と言っても、貴族の不倫や汚職事件などしか依頼されたことはないのだが、今までその全てを解決してきたためにある程度の評判はある。少なくともしがない子爵家の三男という身分にしては依頼が多い、つまり信用されている自覚はあった。
「だがまさか殺人事件の依頼が入るとはな驚きだな。仕方ない、とにかく現場に向かうか」
「そうね。最近ちょうど暇だったし」
「そんな風に言うんじゃない。国王陛下からの依頼なんだ。真剣にやれよ」
「わかってるわよ。仕事は仕事だもの」
レオの相棒、助手のメギーはそう言って、外出用の青いコートを羽織るとさっさと探偵事務所を出ていく。
レオも彼女の後を追うようにしてすぐに外へ飛び出したのだった。




