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悪役令嬢フィアメッタ・ジョラルジュは婚約破棄に微笑む ~婚約破棄ありがとうございます。ここからは殿下の断罪の始まりです!〜

ジャンル:現実世界恋愛


登場人物

⚫︎ フィアメッタ・ジョラルジュ……侯爵令嬢。悪役令嬢と呼ばれている。

⚫︎マティアス……フィアメッタに婚約破棄を告げ、さらに嘘で貶めようとしたアホ王子。

⚫︎バーサ……ピンク髪男爵令嬢。妃の座を狙っているだけ。


簡単あらすじ


 侯爵令嬢フィアメッタ・ジョラルジュは『悪役令嬢』と呼ばれていた。

 曰く、恋愛劇の悪役のようだというのである。第二王子の婚約者の第二王子にまとわりつく男爵令嬢のバーサに嫉妬し、虐げていたという根も葉もない噂が広がっていたためだった。

 そしてある日のダンスパーティーにて、ついに婚約破棄を告げられてしまうフィアメッタ。

 しかし、悪役令嬢は微笑んだ。

「婚約破棄ありがとうございます。ここからは殿下の断罪の始まりです!」

 私が悪役令嬢と呼ばれるようになったのは、一体いつの頃だったでしょうか。

 弱小男爵家の令嬢を虐げたなどありもしない噂が流れ、巷で流行りの恋愛劇に重ねて『純粋無垢な男爵令嬢の恋路を阻む悪女』として、不名誉な呼び名が広まってしまったのです。


 ダンスパーティーに私が足を踏み入れると、あちらこちらから囁き声が聞こえてきます。


「悪役令嬢ですわ」

「今日もお化粧がどぎついですこと」

「きっとバーサ嬢を探していらっしゃるのね」

「殿下にお相手にされないから」「お可哀想なフィアメッタ様。ふふふ」


 名門侯爵家の娘であり、第二王子の婚約者でもある私を貶めれば最悪打首になる可能性もあるのに、そこのところを理解していないのでしょうか。


 内心呆れつつ、私が婚約者である第二王子マティアス殿下の姿を探していた時でした。



「――侯爵令嬢フィアメッタ・ジョラルジュ! 『悪役令嬢』たる貴様とこれ以上婚約関係にあるわけにはいかない。よって、貴様との婚約を破棄するッ!」



 ホールの中央、本来は私と彼が踊るはずの場所から、マティアス殿下の声が聞こえてきたのです。

 しかもその内容は、婚約破棄。


 見ると人混みの奥、ホールの中央に仁王立ちになるマティアス殿下の姿が見えました。その腕にはふわふわとしたピンク髪の少女を抱いています。


 ――ああ、とうとうなのですね。


 心の中でそう呟くと、私は急ぎ足でマティアス殿下の前に向かいました。

 婚約破棄が真実なのか、確かめなければなりません。


「マティアス殿下、ごきげんよう。お探ししておりました。ところで先程のお言葉ですが、もう一度おっしゃっていただけませんでしょうか?」


「もちろんだ、何度でも言ってやる」ピンク髪のバーサ嬢をグッと抱き寄せながら、マティアス殿下は胸を張って言います。


「『悪役令嬢』の貴様に俺自らが裁きを下す。貴様との婚約は破棄だ。バーサに対する悪行の数々、俺に知られないとでも思ったか! まったく、貴様は愚かな女だ。反論しても無駄だぞ」


 それからマティアス殿下は、次々と私の罪状とやらを並べていきます。

 その間、子鹿のように小さく震えるバーサ嬢の姿は、憐れみを誘おうとしているのでしょうか。


 証言者という体で、数人の令嬢やら令息が前に出てきては、私の罪をひたすら肯定しました。

 周囲からは私に対する嘲笑と侮蔑の視線が向けられていました。


「俺は新たにこのバーサと『真実の愛』を築く」

「あぁ、マティ様……。あたし、嬉しいです」


 マティアス殿下にしなだれかかるバーサ嬢は、私に向かってだけ見えるようにニヤリと意地の悪い笑みを浮かべました。


 きっと彼女は、私が失意のあまりに膝をつくとでも思っていたに違いありません。しかし――。


 私は口角を吊り上げ、微笑んでいました。

 別に強がっているわけでも、悲しみを紛らわせているわけでもありません。ただ、心の底から嬉しかったからです。


「婚約破棄ありがとうございます。ここからは殿下の断罪の始まりです!」


「――なんだと?」


 叫んだ私を、呆気に取られた様子で見つめるマティアス殿下。

 先程まで子鹿の演技をしていたバーサ嬢も同様です。


 なんて愚かで滑稽なことでしょう。

 思わず満面な笑みになりながら、私は彼らに教えて差し上げました。


「ここは一方的な断罪の場。そうなのですよね?

 それならば私からもさせていただきます。マティアス殿下、そしてバーサ嬢。あなたがたは国家反逆罪に問われます」


「……なっ!?」

「フィアメッタ様、自分の悪事がバレたからって負け惜しみであたしたちを脅そうって言うんですか……?」


「負け惜しみではありません。

 バーサ嬢はご存知でしょうか? 私とマティアス殿下が王命により婚約を結んだことを。『不甲斐ないマティアスを支えてくれ』と国王陛下はおっしゃり、私はそれを受けさせていただいました。お疑いになるなら当時の文官の証言や、彼らがまとめた書類などで確認なさればおわかりになるでしょう」


 唖然とするバーサ嬢の隣、マティアス殿下はサッと青ざめました。

 しかし彼は教えられていたはずです。これが王命による婚約であったことくらい。きっとそれをたった今まで忘れ、私が執着していると思い込んでいたのでしょう。

 恋愛劇の、嫉妬によって主人公の少女を虐げる悪役令嬢に私を重ねて。


「次に私を事実無根のことで貶めたことについて。

 証拠もなく、賄賂を送った貴族連中の証言のみで私に罪を着せようなどと、考えが甘いにも程がありますわ。名誉毀損です」


「……違うっ。貴様は本当にバーサを虐げたのだ。バーサが言うのだから間違いない! それとも貴様、バーサを嘘つき呼ばわりするのか!」


「嘘つきはそちらでしょう、マティアス殿下。あなたがたが『真実の愛』のため、私を排除しようとつまらない自作自演を繰り返したことは調べがついています」

 ご意見などございましたら、よろしくお願いします。

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