私の新しい弟は、元王子様の小さなウサギ獣人くん!? ~ウサミミがキュート過ぎて惚れそうです~
前回に引き続き、詳細の設定なしです。
ジャンルは異世界恋愛。
わたしは名ばかりの男爵令嬢。
貴族ではあるけれど、普通の家より少しだけ豪華なお屋敷に暮らしている以外は平民と何も変わらない貧乏男爵家に生まれた一人娘。
幼い頃はいつも野山を駆け回っては動物たちと遊んでいた。ワンピースをいつも破いてはお母さんに怒られ、淑女の教育がどうだのこうだの言われる度に逃げ出していたのを覚えている。
そんなわたしに十歳の春のある日、弟ができた。
お母さんが産んだんじゃない、血のつながっていない弟。養子。義弟。それでもわたしはお姉さんになるんだと思ってウキウキしていた。最初のセリフを色々考えていて昨晩眠れなかったくらい。
しかし初めて新しい弟と対面したわたしは、頭の中から全てが吹き飛んで声も出なくなってしまっていた。だって現れたその子はわたしの予想していたどんな姿とも違っていたから。
「……は、はじめ、まして。ぼくはラピヌ。ラピヌ、です」
非常におどおどした様子で、辿々しく挨拶をした彼は、わたしより随分と小さい少年だ。
小さいだけではない。全身ふさふさだし薄灰色だし、同色の髪の毛から長い耳がひょっこり生えている。目は黒曜石のような澄み渡った漆黒だった。
彼によく似た動物の名前を私は知っている。
「ウサギさん……?」
ウサギだ。野山を駆け回っていれば必ずと言っていいほど見かけるあれらに、彼は瓜二つだったのである。
しかしただのウサギと違うのは、人間のように二本の足で立っているところだ。わたしは彼をまじまじと見つめながら首を傾げた。こんなウサギ、見たことがない。
「あ、えっと……。ぼく、ウサギ獣人、なんだ。知ってるかな?」
「ウサギ獣人? 何それ何それ!」
わたしはすぐに前のめりになってウサギ獣人くんと話し始めた。
ラピヌは実は国王陛下の息子、つまり王子だという。しかし母親の先祖にウサギ獣人がいて、その血が色濃く出てしまったためにウサギ獣人として生まれたのだとか。
獣人を見たことがないのはもちろん、彼らの存在すら知らなかったわたしは興奮した。しかもラピヌは可愛かった。ひくひくと忙しなく動く耳がわたしの心を掴み、思わず抱き締めると全身がふわふわでとても気持ちいい。
「なんだこれ。可愛い。可愛過ぎる! ラピヌ君が可愛過ぎてやばいよ!」
「ちょ、ちょっとやめてくださいって……」
「あ、そうだ、わたしも挨拶しなくっちゃね。
初めましてラピヌ君。わたしはティフ。ティファニー・ロメウドだよ。君は今日からラピヌ・ロメウド、つまりわたしの弟だから、気軽にお姉ちゃんって呼んでね!」
「は、はい、ティフお姉さん……」
「ふふ、よろしくね」
これがラピヌとわたしの出会い。
わたしの淡い初恋の始まりだった。
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