ねえ、主従愛って素敵だと思いません?
ジャンル:異世界恋愛
⚫︎登場人物
・アムストン……主人公。妹に振り回されてばかり。
・デニス……少年執事。だが、実は――。
・ポーシャ……劇作家志望の侯爵令嬢で主人公の妹。ロマンチスト。
これは男装令嬢ものを書こうとして失敗したものです。
うちの妹はロマンチストである。
ドミーク侯爵家長女ポーシャ・ドミーク。
舞台を観るのが好きで、将来は劇作家になりたいと猛勉強中。父からは「そんなことより早く嫁入りしなさい」と言われていて毎日喧嘩を繰り返す、思春期真っ只中の少女だ。
恋だの愛だのそういう話が大好物。令嬢たちからそういう話を聞いて回っては、次々と劇のネタにしているらしい。
そんなちょっと変わった妹の言動に兄である俺は時々と惑わされることがある。
例えば今日もそのいい例だろう。
「ねえ、主従愛って素敵だと思いません?」
そう言って微笑むポーシャがじっと見つめ、指差しているのは俺。
そして俺の隣にいる少年執事のデニスだった。
「は……? 主従愛?」
これがもし、メイドと並んでいた時に言われたのであればまだ理解できる。
だがデニスはまごうことなき男だ。最近ドミーク侯爵邸で働き始めたばかりの新入り執事であり、元々はとある商家の息子だったはず。
俺とこいつのどこをどう見たら主従愛を感じられるのだろう。俺には全くわからなかった。
「デニスがお兄様を愛おしげに見上げ、鈍感なお兄様がそれを忠誠と思い込んで平気な顔をしている。この不釣り合いさ、素晴らしい……! これは今すぐ劇にしないといけません。お兄様、よろしいですよね?」
早口でそう捲し立てながら俺に迫って来るポーシャ。
彼女の目は本気で、何がなんでも首を縦に振らせるつもりだろう。
それがわかってしまったから、無駄な争いを生まないためにも俺は頷いた。
「まあ、ありがとうございますお兄様。なら早速使わせていただきますね!」
嬉しそうに笑い、ドタバタと足音を立てて駆けていく妹を見ながら、ただただ呆然とするしかなかった――。
ご意見などございましたら、よろしくお願いします。




