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罪なき公爵令嬢エレーヌは、自殺した男爵令嬢の真実に迫る 〜学園の不可解転落死事件の無実を証明いたしますわよ〜

ジャンル:異世界恋愛


登場人物

⚫︎エレーヌ……主人公でボルド公爵家の長女。悪役令嬢に仕立て上げられる。

⚫︎デーン……王太子。エレーヌの婚約者だが、最近ファムに浮気している。

⚫︎ファム……男爵令嬢。いわゆるテンプレヒロインであるが、別に悪女ではない。

⚫︎アリゼット……ボルド公爵家と対立するアペット公爵家の令嬢。デーン王子を密かに狙っている。

⚫︎ミュゼット……アペット公爵家の跡取り息子。アリゼットの弟。

⚫︎セナ……伯爵令嬢でアリゼットの取り巻き令嬢。


簡単プロット


 とある学園で事件が起こる。

 男爵令嬢のファムが階段から転落し、死亡したのだ。

 そしてその犯人に問われたのは公爵令嬢で王太子の婚約者、エレーヌ・ボルドだった。

「貴様との婚約を破棄する!」と卒業パーティーで宣言され、国外追放を言い渡された彼女。しかし彼女は抵抗の声を上げ、自分が無実であるとの証明を始めた。

 男爵令嬢の死は実は自殺だとエレーヌだけは知っている。では、自殺に追い込んだのは誰なのか。

 突き止めた真実を、彼女は王太子たちの前で明らかにし――本物の悪女を断罪する。

「エレーヌ……いや、ボルド公爵令嬢! 貴様との婚約を破棄する!」


 とある学園の卒業パーティーで、王太子のデーン殿下が叫ばれました。

 彼がまっすぐに指差すのはわたくしで間違いないでしょう。いくらわたくしが彼より身分が低いといえ、『貴様』余ばわりは無礼ですわよ、デーン殿下。


 ここでわたくしは、「な、何故ですか!?」と悲鳴を上げるのが筋なのかも知れませんが、そんなことは致しません。

 婚約破棄の理由は明白なのですからね。


 黙っているわたくしに殿下は続けます。


「そして、殺人罪にて貴族籍から除名、国外追放だ!」


 はぁ、どうしてこんな場所でこんなことを。

 しかし予想はしていましたし、起きてしまった騒ぎはどうにも収められません。わたくしは嘆息しながら一言、


「わたくしがファム・レディンガー男爵令嬢を殺害したというのは、冤罪ですわ!」


 力強く、そう言い切ったのですわ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 改めまして、わたくしはエレーヌと申しますわ。一応、この国で上位の貴族であるボルド公爵家の長女ですの。以後、お見知り置きを。

 わたくしは八歳の頃よりデーン殿下の婚約者候補に選ばれ、他家との厳しい闘争を経てやっとのことで婚約者になりましたの。ただいま王太子妃教育の真っ只中、十五歳にして未来の王妃なのですわ。


 ことの始まりは、とある少女がわたくしたちの通う王立学園に入学して来たことです。

 王立学園は十三歳に入学し十五歳に卒業ということになっております。けれども彼女――男爵令嬢のファム・レディンガー嬢は特別でした。


 元々平民でしたけれど、男爵家の後妻の娘として新たに男爵令嬢になったそうですわ。歳は十四で、学園にも編入という形で入って参りましたの。

 ファム嬢はとても愛らしいことで有名で、入学早々学園中の噂になりましたわ。でもわたくしと彼女は全くの無縁。普通、公爵家の娘であるわたくしと男爵家の娘でありそれも元平民のファム嬢とは身分が違いすぎますもの。

 でも、わたくしの婚約者は彼女にぞっこんになりましたわ。


「ファム」「ファム」「ファム」「ファム」


 いつしかわたくしではなく、彼女の名前を連呼するようになりました。

 しかしこの時点でもわたくしは何の興味もございませんでしたわ。だって彼女に王太子妃の座を奪われるなど、考えてもいないことでしたし。

 だってそうでしょう? わたくしを捨てて彼女を選ぶなど国の王太子として言語道断。一時の遊びだと思っていましたのよ。

 ……デーン殿下とファム嬢の甘い口づけは、見て見ぬふりをしましたわ。



 なのに、いつしかわたくしが彼女を虐げているという噂が広がって。

 事実無根だと訴えてももはやデーン殿下の耳には届くそぶりもございませんでした。


 一度、ファム嬢の策略ではないかと思い彼女を問い詰めたのですが、怯えるばかりで話になりませんでしたわ。

 わたくし、本当に何もしていませんのよ。なのにありもしない話がまことしやかに語られ、わたくしの居場所はどんどん失われていきました。


 けれどもわたくし、やはり何の心配もしておりませんでした。

 だってわたくしと殿下との婚約をどうこうできるはずがございませんもの。名誉に傷をつけた犯人が解れば、直ちに処刑するまでですしね。


 そうして卒業が近づいた、ある日のこと。


 たまたま階段でファム嬢と鉢合わせました。

 ピンクブロンドの髪をふわふわと揺らしながら彼女がわたくしの方へ近づいて参りましたわ。「エレーヌさん」と彼女が言ったので、わたくしも返事を返そうと思ったその時でした。


 ファム嬢が階段から足を大きく踏み外し、突如として転落していったのです。

 わたくしが立っていたのは階段の踊り場でした。そこからごろごろと転落していくファム嬢を見下ろしながら、わたくし、ただ呆然としていることしかできませんでしたの。


 ――彼女はその時すでに、亡くなっていたのですわ。

ご意見などございましたら、よろしくお願いします。

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