✒ 公爵夫人の異変 1 / 不思議な力
リィグレーシェド様から秘密を打ち明けられた夜から、早くも1ヶ月が経ちました。
未だにリィグレーシェド様と●●●●の御誘いはありません。
もしかしたら、“ 呪われている ” 事を気にしておられて、敢えて控えてくださっているのかも知れません。
どんな呪いを掛けられているのか皆目検討も付かないのですから、安易に子作りでもして母子共に呪いの影響を受けてさせてはいけないと考えてくださっているのかも知れません。
●●●●をした所為で私にまで原因不明の呪いに掛かるなんて御免被ります。
御誘いがない事は、私には有り難い限りです。
それに、リィグレーシェド様ったら、一向に痩せてませんからね!!
押し潰されて窒息死なんてしたくありません!!
悪魔の儀式──●●●●をしない代わりと言っては何ですが、細やかながら夫婦のスキンシップを私なりに増やしてみました。
大した事ではありませんけど、夫婦だという強みを利用して衣服の上からボディタッチとか多目にしてみました。
後は然り気無く手に触れてみたり、出来る限り笑顔を絶やさずにリィグレーシェド様の話にも相槌を打ってみたり、帰宅の際にはオシボリを出してみたり。
馬車での移動中に読んでもらう手紙を書いてみたり、小腹の空いた時に食べて頂くスイーツの中にメッセージカードを添えてみたり、手作りの栞や刺繍入りのサシェをプレゼントしてみたり、色々と頑張っています。
最近は野菜を使ったスイーツを作っては、出発前にお渡ししています。
ついこの間はトマトを使ったパイを作って食べて頂きましたし、人参ケーキも喜んで頂けました。
野菜を中心としたスイーツを気に入って頂けて嬉しいんですけど…………、一向に痩せる気配がないんですよね……。
普通なら体型に変化が見られてもおかしくないんですよ?
体重だって最低でも10Kgは減っていても良い筈なんです。
一体何が足りないのでしょうか??
ダイエット方法が間違っているのでしょうか??
栄養士でもなければ、調理師でもないですからね、原因は全く分かりません。
………………今更ですけど……リィグレーシェド様が掛けられている呪いって、“ 痩せられない呪い ” とかじゃないですよね??
太った体型を維持させて決して痩せさせない呪い……。
恐ろしい。
何て恐ろしくて、絶望的な呪いなのでしょうか??
仮に “ 痩せられない呪い ” が事実なら、呪いが解かれる迄、リィグレーシェド様は肥満体質のままで、ダイエットさせている意味も無くなってしまいます。
断固、許すまじです!!
真犯人を捕まえて、同様の呪いを掛けてやりたいぐらいですね!!
まぁ、真犯人が貴族で、フォンオスコ公爵家より格上の相手だった場合は、逮捕するなんて無理でしょうし、出る所に出て裁くのも難しいでしょうね?
格下の貴族ならフォンオスコ公爵家の権力と権限を使って厳しく罰せられるでしょうし、罰も与えられると思いますけど……。
──*──*──*── サブリエルの自室
ソファーに座ってクロスステッチで刺繍をしていると、新米メイドが紅茶の入ったティーポットを落として割ってしまいました。
私は「 怪我はない? 」と新米メイドに声を掛けます。
普通ならば高級なティーポットを落として割ってしまった新米メイドの失態に文句を言い、厳しく叱咤をして責めるのが一般的な貴族夫人だと思いますけど、何せ私は前世──日本人だった記憶を持っています。
いきなり頭ごなしに新米メイドの失態を責めるなんて事はしません。
仮に新米メイドに100%の非があったとしても、先ずは相手が怪我をしていないかを心配します。
まぁ、これは私が前世で上司から “ 最低限してほしかった気遣い ” なんですけどね~~~。
絨毯の上に落ちて粉々に割れてしまったティーポットよりも新米メイドが怪我をしていないかを心配した私は、「 とんでもない事を仕出かしてしまった!! 」と後悔してブルブルと全身を震わせて動揺してしまっているプチパニック気味の新米メイドへなるべく優しい声で話し掛けてから、一緒に割れてしまったティーポットの破片や欠片を集めて片付けました。
後片付けをしている間中、新米メイドはずっと涙を流しながら「 申し訳御座いません!! 」と連呼していていたたままれませんでした。
開き直られても困りますけど、「 形が有る物は何時か壊れるものです。今日がティーポットの寿命だったのでしょうね。貴女が破片で怪我をしなくて安心しました 」と労りの言葉を笑顔を添えて発してみました。
私の言葉を聞いた新米メイドは深々と頭を垂れて土下座をして来たので目も当てられません。
開き直らずに反省はしてくれているみたいですから良かったです。
開き直られてふんぞり返られていたら、リィグレーシェド様にお願いして首にしてもらう所でしたよ?
割れたティーポットは何とか片付けられましたけど、問題はド高い絨毯に染み込んでしまった紅茶ですかね。
落とし難い醤油やソース,墨汁なんかを溢した訳ではありませんから、丸洗いをすれば紅茶の染みは消せると思いますけど……、丸洗いは大変そうです。
丸洗いをするにも部屋から出さないといけませんし、仮の絨毯と取り換えなくてはいけません。
実に大変な大仕事になりそうです。
新米メイドは未だ土下座をして泣きながら必死に謝ってくれています。
前世では掃除好きだった訳でもない私には掃除に関する知識はありません。
そんな私では絨毯に染み込んでしまった紅茶の染みに対して何とも出来ないんですけど……、私はついつい何気無く紅茶が染み込んでしまった絨毯の上に指を置いて触てみました。
「 “ 浄化 ” なんていう便利な魔法が使えて汚れを消せたら便利なのにね? 」なんて冗談を泣いている新米メイドに言った私でしたけど、絨毯に異変が起きました。
何故かは私にも分かりませんけど、絨毯にガッツリと染み込んでいた筈の紅茶の染みが綺麗に跡形もなく消えてしまったのです!!
染みが消えただけではなくて、絨毯全体も新品同様に綺麗になったように見えます。
私の気の所為でしょうか??
先程まで泣いていた筈の新米メイドも、目の前で起きた不可思議な現象に対して、言葉を失っているようで、戸惑っています。
笑顔を浮かべている私も心の底では戸惑っていますからね!!
私はテーブルの上に置かれている飲み掛けの紅茶が入ったティーカップを持つと、絨毯の上に態と紅茶を溢してみまた。
自ら紅茶で絨毯を汚した私の謎の行動を目の当たりにしていた新米メイドは悲鳴を上げて「 お、奥様ぁ!! 」と悲痛な声で叫びます。
そんな新米メイドを尻目に、私は再度、絨毯に態と作った紅茶の染みを指で触ってみた。
すると──、どうした事でしょうか!!
やはり紅茶の染みが嘘みたいに綺麗に消えたのです!!
両目を見開いて驚いている新米メイドに対して、私は「 厨房へ向かうから付いて来て! 」とだけ言うと、自室の両扉をバタンッと開けます。
オロオロと戸惑っている新米メイドを連れて私は自室を出ました。




