⭕ 巨漢公爵のダイエット 4 / 痩せない謎……
フォンオスコ公爵邸で働く誰もが自由に出入りが出来るように作って頂いた御宝殿の間にて、リィグレーシェド様と共に〈 大陸神シピアンドダレ 〉へ感謝の祈りを捧げ終えた私は、リィグレーシェド様と共に食堂へ向かいました。
あぁ、因みにですが御宝殿に御供えしている花や献花は処分せずに、押し花,ドライフラワー,サシェ等にして有効利用させて頂いています。
「 捨てるのは罰当たり 」と思ってしている訳ではなく「 捨てちゃうの勿体無くない? 」と思っているからです。
ドライフラワーなんて、態々花を乾燥させたものですからね、生け終えた花を使っても全然問題ないんじゃないですか?
前世ではドライフラワーにもサシェにも押し花にも全く興味が無かった人間だったので、素人の浅はかな考えでしかないんですけどね?
リィグレーシェド様に許可を得て、ドライフラワーを作る為の専用の部屋を御借りして、ドライフラワー作りをしています。
流石に御供えした水,紅茶,パンに関しては、衛生面の問題もありますから飲んだり食べたりする事を禁じてますし、公爵婦人である私が責任をもって処分するようにしています。
小麦若しくは米,塩は使えますから処分はしません。
塩は漬け物を作る時に使えますからね!
──*──*──*── 食堂
今はリィグレーシェド様と晩餐の料理を食べています。
今晩のメイン料理は、フエドミートを使った料理です。
今、食べているフエドミートは豚肉のような食感で、薄切りにされたフエドミートを重ねて、フエド粉,溶き卵,フエドパン粉をまぶして、フエド油でカラッと揚げたなんちゃって豚カツでしょうか。
スープにはフエド麺も使われています。
勿論、スライスされたフエドパンもあります。
スライスされたフエドパンには、梨ジャム,無花果ジャム,キュウイジャム,バナナジャムを用意していて、好きなジャムを塗って食べます。
果物ジャムはジャム作りが得意な侍女が腕を振るって作ってくれました。
実は今、ミルクジャム作りに取り掛かってもらっていて、試作の出来上がりが楽しみだったりします。
そうそう、デザートにはフエドヨーグルト,豆乳ヨーグルト,豆腐ヨーグルト,オカラヨーグルトの4種類を用意していて、好きなジャムと一緒に食べてもらう予定です。
まぁね……フエド料理ばかりで飽き飽きされていると思います。
今朝、出掛け先に護衛騎士にお渡しした豆乳生クリームを付けて食べるシフォンケーキですらフエドですからね…。
朝食も巨漢公爵デブゴン──いえ、リィグレーシェド様を痩せさせる為にダイエットを意識したフエド料理でしたけど、リィグレーシェド様は文句を言わずに晩餐のフエド料理も美味しそうに食べてくださっています。
有り難い限りです。
──だから、さっさっと、いい加減に、や・せ・や・が・れ!!
リィグレーシェド
「 サブリエル……、大事な話があります 」
サブリエル
「 はい?
リグ様、どうされたのですか? 」
リィグレーシェド
「 ……2人きりで話したいので……今夜…………今夜は──、サブリエルの部屋へ訪ねたいと思います。
構いませんか? 」
サブリエル
「 えっ……今夜……私の部屋に…… 」
こ、これは…もしや……度重なるフエド料理に飽き飽きしたリィグレーシェド様が、とうとうキレる──という事でしょうか?
私……リィグレーシェド様に首をギリギリと締め付けられちゃいますか??
愈々、私のピンチですか??
えっ…………私……巨漢公爵デブゴンののし掛かり攻撃ではない別の方法で死んじゃいます??
のし掛かり攻撃は勿論嫌ですけども、他の方法で死ぬのも激しく嫌なんですけどっ!!
リィグレーシェド
「 …………サブリエル?
どうしました?
…………今夜は…都合が悪いですか? 」
サブリエル
「 い……いえ、…………大丈夫……ですわ…。
リグ様が来てくださるのを御待ちしております 」
リィグレーシェド
「 良かったです。
安心しました 」
此処で断りでもしたら、後が怖いですからね…。
リィグレーシェド様と晩餐を終えた後は、デザートを食べて食堂を後にしました。
私の自室は2階にありますが、リィグレーシェド様の自室は3階にあります。
仕事をする書斎も3階にあるようです。
リィグレーシェド様は書斎で一仕事を終えた後、私の自室へ来られるのでしょう。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう!!!!
偉いこっちゃですよぉ~~~~!!
──*──*──*── サブリエルの自室
リィグレーシェド様が部屋を訪れる事になった事を侍女達へ伝えると、侍女達は何故か張り切って準備を始めました。
良い香りのするお風呂に入れられ、身体の隅々まで念入りに洗われました。
髪も何時もより気合を入れられて洗われ、手入れをされました。
リィグレーシェド様を御迎えする為の部屋着ドレスを侍女が選んでくれます。
両手,両足の爪の手入れも念入りにされ、他の部分も丁寧に念入りにマッサージされたり、手入れをされました。
至れり尽くせりで逆に疲れてしまいました。
全ての行程が終わると専属侍女頭のモリナを残し、それ以外の侍女達は自室から出て行きました。
モリナが紅茶を淹れてくれます。
専属侍女頭:モリナ
「 お疲れ様でした、奥様。
旦那様が来られる迄はおくつろぎくださいませ 」
サブリエル
「 何時も有り難う、モリナ 」
専属侍女頭:モリナ
「 痛み入ります、奥様(////)」
モリナは嬉しいのか照れているみたいです。
モリナ……可愛い(////)
リィグレーシェド様が来られる迄、私はモリナとジグソーパズルをする事にしました。
とは言っても異世界にジグソーパズルなんて存在していませんから、前世の記憶を頼りに自作したジグソーパズルです。
手作りなので複雑な形のピースは作れませんけど、素人なりに上手く作れているのではないかと思います。
ドアがノックされました。
仕事を終えたリィグレーシェド様でしょうか?
モリナが新しい紅茶の用意をしてくれます。
その間に私は自室の両扉を開けました。
両扉を開けると、護衛騎士と一緒にリィグレーシェド様が立っています。
私は笑顔でリィグレーシェド様を自室へ招き入れました。
入れ替わるようにリィグレーシェド様へ頭を下げたモリナが私の自室から出て行きます。
両扉は護衛騎士が閉めてくれたようです。
サブリエル
「 リグ様、どうぞ御座りくださいませ。
此方は先程、モリナが淹れてくれた紅茶です。
何か御摘まみになりますか? 」
リィグレーシェド
「 夜更けに訪ねて済みません。
眠いのではありませんか? 」
サブリエル
「 御気遣い有り難う御座います。
夜更かしには些か慣れてますので大丈夫ですわ 」
リィグレーシェド
「 普段も夜更かしをされているのですか? 」
サブリエル
「 今は夏なので、暑さで中々寝付けない時もありますわ。
そういう時は、物書きをします。
そうすると良い具合に眠くなるんです 」
リィグレーシェド
「 物書きを……。
何を書いているのか聞いても構いませんか? 」
サブリエル
「 勿論ですわ。
とは言っても……、私にしか分からない暗号で書いてますからリグ様に読めるかどうか…。
上手ではありませんけど、イメージ……脳裏に浮かんだ料理を絵に描いて残していますわ 」
恥ずかしいですけど、私は日本語で書いているメニュー表をリィグレーシェド様へ見せる事にしました。
野菜を中心にしたリィグレーシェド様専用のダイエット料理のレシピですからね、万が一にでも首をギリギリと絞められる事はないと思いたいです。
ソファーへ腰を下ろして紅茶を飲んでいるだけなのにリィグレーシェド様は絵になります。
まるでカ◯ゴン先生が降臨されてるみたいに見えています!!
サブリエル
「 此方ですわ 」
リィグレーシェド
「 これは…………確かに料理の絵ですね。
私には読めない文字で書かれています。
これがサブリエルの作った暗号ですか? 」
サブリエル
「 はい。
料理に詳しくない素人が考える料理のメニューですから、誰かに読まれるのは恥ずかしくて…(////)」
リィグレーシェド
「 可愛い絵を描くんですね 」
サブリエル
「 有り難う御座います(////)
リグ様が見ておられるのは、夏野菜のトマトを使った料理レシピです 」
リィグレーシェド
「 トマト料理…かい? 」
サブリエル
「 はい!
トマトは生サラダとして食べられがちですけど、焼いたり、茹でたり、蒸したり、煮込んだり、炒めたりしても美味しいんです。
挽き肉と合わせたソースを作ってパスタに絡めても美味しいですし、トマトに溶き卵を絡めて炒めても美味しいんです。
中身をくり抜いて器にしてグラタンも作れます 」
リィグレーシェド
「 サブリエルは色んなトマト料理を知っているんですね。
何れも食べてみたい料理です 」
サブリエル
「 有り難う御座います。
完成した暁には是非リグ様にも召し上がって頂きたいですわ 」
リィグレーシェド
「 これからの楽しみでが増えました(////)
これは何の野菜ですか? 」
サブリエル
「 それはピーマン料理です 」
リィグレーシェド
「 ピーマン…ですか?? 」
サブリエル
「 ピーマンは苦いんですけど、中身をくり抜いた中にハンバーグのタネを入れて揚げたり、炒めたりすると美味しです 」
リィグレーシェド
「 苦いのに美味しいのですか?
食べてみたいです 」
サブリエル
「 ピーマンも夏野菜なんです。
今、育てている最中なので実ったら作ってみようと思っています。
美味しく出来上がったら、リグ様にも召し上がって頂きたいですわ 」
リィグレーシェド
「 有り難う、サブリエル…(////)」
リィグレーシェド様と私は野菜レシピを見ながら色んな料理の話をしました。
リィグレーシェド様は野菜料理に興味を持ってくださったみたいです。
「 よっしゃあ!! 」って感じです!
野菜料理に興味を持ってもらえたら、堂々とダイエット料理を出す事が出来ますし、食べてもらう事が出来ますからね!!
大義名分(?)を得られた気分です!!
サブリエル
「 ──リグ様、私に話があるとか…… 」
リィグレーシェド
「 あぁ……そうでした。
美味しそうな野菜料理に夢中になって忘れてしまう所でした… 」
リィグレーシェド様は戸惑っているように見えます。
話し難い事なのでしょうか?
サブリエル
「 リグ様?? 」
リィグレーシェド
「 サブリエル……私は貴女に話さなければならない事があります 」
サブリエル
「 話さなければならない事……ですか? 」
リィグレーシェド様はデブゴンには似合わない真剣な顔をして私を見詰めて来ます。
一体何を私に打ち明けようとされているのでしょうか?
随分と悩んでおられるみたいに見えますけど、ダイエット料理に対する不満でしょうか??
◎ 訂正しました。
勝ちですけど、─→ がちですけど、
思っているんです。─→ 思っています。