ヴァルサーの鍵が導く
「エミリア、ありがと。助かったよ」
と、ケイトリンさんが言うが、たぶん、あたしのあんな助けなんかなくても、この人たちなら、なんとかしてしまうのだろうと思う。
でも、せっかくこうして仲間として連れてきてもらっているんだから、少しでも、できることはしたいよね!
それに——今は、実力はさておき、あたしがこのパーティ『白銀の翼』の魔導師なんだから。
パーティの中での、魔導師としての役割をきちんと果たしたいんだ。
そうしないと、あたしは魔導師のはしくれとして、魔導師オリザさんに申し訳ないじゃない?
会ったことないオリザさんが、どんな人かは知らないけれど、この人たちといっしょに冒険をしているんだから、きっとすごい魔導師で、ステキな人なんだろうなあ。
——などと考えていると、アマンダさんが
「エミリアは、工夫に優れたところがいいね。応用が利くというか……。冒険者として生き残るには、大事な素質だよ……ますます、エミリアを『白銀の翼』にほしくなったなあ……」
「はあ……」
アマンダさんはそんなふうに褒めてくれるけど、まあ、ようするに、全員で無い知恵を絞って工夫をしないと、あたしたち「暁の刃」は、実力がないから、なんともならなかったってことなんですけどね。
ああ、アーネスト、ヌーナン、パルノフ、あたしがいなくて、みんな無事にやってるのかなあ?
例によって、とんでもないことになってないといいけどね。
あたしたちが今いるのは、きちんとした石組みの壁をもった、地下道だった。
「先に進むよ」
ケイトリンさんが一歩踏み出す。
とたんに、ポッと、通路に沿って一列に、橙色の灯りがともった。
人を感知すると、自動的に魔法の灯りがともるようになっているようだ。
これほどの歳月が経っても、その仕組みは維持されていたのだ。
一見したところ、通路には崩落したような箇所もなく、この地下道は、在りし日の五芒星城塞そのままに存在しているのだった。
通路は、五芒星城塞の地下を、縦横につないでいるのだろう。
進んでいくと、十字路にでた。
右、左、前、どの方向にも通路はまっすぐに続いており、そのたたずまいに違いがない。
どちらへ進めばいいのか。
ケイトリンさんが、ヴァルサーの鍵を、掌に載せた。
ヴァルサーの鍵は、ケイトリンさんの手の上で、青い輝きを放っている。
ケイトリンさんは、その手をゆっくり、水平に動かしていく。
ブルルッ
ケイトリンさんがその手を左の通路に向けたとき、ヴァルサーの鍵が、生きているかのように震えた。
「うん、わかった」
そうやって、分かれ道に出るたびに、ヴァルサーの鍵が方向を示す。
鍵は、その魔力によって、第五の塔へと続く道を教えてくれるのだった。
あたしたちは黙々と歩いた。
この地下通路には、まったく魔物の気配がないのが、逆に不気味で、警戒をかきたてる。
そしてついに、鍵に導かれてあたしたちは、地下通路の終点にたどりつく。
そこでは、天井が大きくその高さを増し、通路も幅を広げ、ひとつの大広間を形成していた。
広間の正面には、石壁にはめ込まれた、巨大な金属の扉があった。
扉の表面には、怪しげな象形文字が彫り込まれ、そしてその文字は、見ている間にもうねうねと動き、形を変えていく。
おそらくあれは、なにかの呪文だ。
扉が呪文を唱え続けているのだ。
なんのためか。
外からの侵入を防ぐため?
それとも、中にあるものが逃げ出すのを防ぐため?
第五の塔の門。
いずれにせよ、とんでもない危険の匂いしかしない……。
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