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呪いの蒼仮面  へなちょこパーティ「暁の刃」の冒険  作者: かつエッグ


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三枚のお札(ふだ)

「祠」と言うからには、野っ原に建てられた、木造のボロ小屋みたいなものを想像していたのだが、実際にそのものを前にして、おれたち全員はあっけにとられていた。

 そもそも場所がおかしかった。

 ふつう、道祖神というものは、疫病や魔物が、村に侵入しないように置かれるものだ。したがって、たいていは村の境界、村の出入り口である道沿いにしつらえられていることが多い。ところが、地図の通りに行ってみれば、そこは、村とも街道とも外れた、深い森の中だったのだ。

 そして、祠本体。

 地図に示されたその場所には、小屋なんかではない、まるでなにか、遺跡のようなものがそびえ立っていた。

 二十メイグ四方ほどの石積みの方形の基壇の上に、これも石を積んだ半球状の覆いが載せられている。

 かなり古いもので、石の表面は苔むしていた。

 基壇の正面には、なんだか怪しげな古代文字が一面に彫り込まれた、青銅製の観音開きの扉があった。錆びついたその扉は、一枚の札が貼られて、封じられていた。札は長い間風雨にさらされてきたのだろう、ぼろぼろになっていて、いまにもはがれそうだ。

「なあ、パルノフ……これって、やはり古墳かなにかなんじゃないか?」

 ヌーナンが言った。

「うむ。この構造かたちは、古い墳墓によくあるやつだな。ヌーナンのいうとおりだ」

 パルノフが冷静に答える。

「神さまじゃなくて、誰かのお墓かよ! ……ブルル……やだなあ……なんか話がちがうじゃないか」

 おれは、この場の不気味な雰囲気に、内心びびって文句をいった。

「と、とにかくはやく片づけよう! あの扉のお札を張り替えれば、それでいいんだろ、さっさとやっちまおうぜ。パルノフ、お札をよこせ」

「いや、待て。アーネスト」

 気がせいているおれを尻目に、パルノフは、背負い袋から札を出そうとしない。

「なんだ? お前がやりたいのか? それなら任せるぞ」

「お前、アリシアさんが渡してくれた、依頼文をちゃんと読んだのか」

「は? お札の張り替えだろ」

「アーネスト、どうしてそういいかげんなんだよ。さてはまったく目を通してないな」

「なにいってるんだ……まっさきに読んだにきまってるだろう。ちゃんと読んださ、リーダーとして、当然じゃないか」

「いや、読んでない」

 パルノフは断言した。

 むっ、なぜわかるんだ。するどいやつだな。

「まあ、でも、ひょっとして、読んだけどもう忘れてしまったのかもしれないからな、幼なじみとしての親切心で、あえて教えてやるがな」

「恩着せがましいヤツだな」

「いいか、アーネスト、張り替えないといけないお札は、三枚だ」

「なにっ?!」

「入り口の扉のお札、羨道せんどうの奥の玄室を封じているお札、そして、最後に、石棺を封じているお札の、計三枚なんだ」

「げっ!」

 おれはうめいた。

「そ、そんなあ……」

 じゃあ、この不気味な扉の中に入らなきゃいけないってことかよ。しかも、

「石棺ってなんだよ! 玄室ってなんだよ! どうかんがえても墳墓じゃないか。お前らおかしいと思わなかったのかよ」

「アリシアさんのくれた依頼文にはちゃんと書いてあるぞ。お前こそどうなんだよ、まっさきに読んだんじゃなかったのか? お前が何にもいわないからだ」

「むむむ……」

 おれはぐうの音も出ない。

「さて、ようやく、われらがリーダーがミッションの全貌を理解したようだから、仕事に取りかかろうぜ……」

 ヌーナンが皮肉っぽく言った。

「そうだな、あたりが暗くなる前になんとかしよう……」

 パルノフが答える。

 だから、さっさと片づけようと、さっきおれはいったじゃないか。

「おい、ちょっと待てよ」

 おれは、ふと気がついていった。

「中に入るってことは、この扉を封じているお札を、いったんは剥がさないといけないってことじゃないのか?」

「そりゃそうなるよな」

「おい、……それは大丈夫なのか?」

「大丈夫って?」

「せっかく封をしてあるのに、それを剥がしたりして、大丈夫なのかってことだよ」

「アーネスト」

 ヌーナンがあきれた声で言った。

「まさにそういう仕事なんだよ、これは。さあ、さっさとやろうぜ。こんな森の中で日が暮れたら、それこそ何が出るかわからないぞ」

「う、うむ……」

 おれは、覚悟をきめて、扉の前に立った。

 おそるおそる、お札に手を伸ばす。

「ギャーッ!!」

「うわおっ?!」

 突然叫び声が聞こえ、おれは肝を潰して、手を引っ込めた。

「な、なんだ今のは?」

「アーネスト……鳥だ。森のどこかで、鳥が鳴いたんだよ。しっかりしてくれ」

「ああ、そ、そうだな。いきなりで驚いただけだ。よし、やるぞ」

 ペリッ

 お札は、かんたんに剥がれた。

 剥がれたお札は、おれの手の中で、みるみるぼろぼろになり、朽ちて消えた。

「お札の寿命が来たってことだな。まさに、張り替えのタイミングじゃないか」

 などとパルノフが冷静に言う。

 パルノフとヌーナンは、両扉にある、取っ手にそれぞれ手をかけて、力をこめて引いた。

 ギリギリと音を立てて、扉がひらく。

 ふうっと、中からかび臭い空気が吹き付けてきた。

 羨道の中は真っ暗だ。

 ただ闇が続いている。

 目をこらすが何も見えない。

「見えないな、エミリア」

 魔法の灯火を点けてくれ、そう口に出そうとしてから気がついた。

 そうだ、エミリアは、今はいないのだ。

 思えば、エミリアがいてくれて、おれたちはずいぶん助かってたんだなあ……。

 ——って、まるでエミリアがもう帰ってこないみたいじゃないか!

 いかんいかん。

 エミリアに帰ってきてもらうためにも、おれたちはがんばらないと。

「アーネスト、アリシアさんがこれを渡してくれたぞ」

 そういって、パルノフがとりだしたのは、松明である。

 さすが有能なアリシアさんだ。よくわかっている。

 おれたちは、急いで松明に火をつけた。

 パチパチと音を立てて、炎が上がる。

 松明をかざして、

「よし、いくぞ!」

「おう、おう、おう!!!」

 おれたちは、羨道へと踏みこんでいった。


いつも読んで下さってありがとうございます。すみません、三人はまだ入り口でもたもたしています。



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― 新着の感想 ―
[良い点] お札3枚を張り替えるまでに、彼らに何が待ち受けているのか、とても楽しみです。 [気になる点] 深い森の中にある墳墓らしきものが、何故祠なのか?依頼主がそう呼ぶ理由がきっとあるのですね。 […
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