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黒妖精の剣舞




風のうねりはユリの周りだけにはとどまらず

草花も樹木の枝葉も

強く波を打つように揺れています



その様はまるで森が怒り狂ったかのようです




理性を失っているように見えた黒狼たちが

さっとユリから距離をとって

逆三角に陣形を整えました






"かるく、はやく、リズムに、ステップ……


 んと…… リズムは……"




ユリは歌が苦手ですから


思い当たるのはただ1つです





あの歌がユリの中で響くのにまかせ




''トンッ トンッ トンッ トンッ''



その場で軽く跳ねてリズムをとります




さらに力が湧いてきて



"….負ける気がしないッ…"



不安のかけらもなくなったことを自覚したユリは




自らの魂が最も充実したこの瞬間を逃さず


全身に魔力を漲らせ飛び出しました








『ぼくは何物?きまってる!

 

          ーー風を蹴り空に躍り出る

 

 ただの治癒士のただのユリ  


      ーーくるりと身を翻して牙を逃れ


  


 けどっ!   

ーー華麗に回りながら1匹を蹴り飛ばし

           

         「 ッふんっっ」

           

             ーーまた1匹今度は斬る

 




           友も  仲間も この森も


剣を強く握りしめ直すとーー  

 

           どれ1つだって譲らない


金色の光が剣を包むーー

         



極度の集中で赤く染まった目は爛々と輝き

纏うオーラは百戦錬磨の獅子





ギューっと溜めて

      


   ーー両腕を交差させ構え



      ポンポン進めば

         

      

       ーー瞬間、先頭の狼の前にユリの姿



         フワッとスパッとさようなら』



ーーたったひと薙ぎ 

  音も立てず 花びらの1枚も傷付けず

   

   残る黒狼の全てを上下半分にぶった斬ったーー







ぱあっっっ


全ての黒狼が弾けて

キラキラ光るホログラムとなりふわっと浮いて消えた






立ち尽くすユリのもとに二匹の妖精が駆け寄ります






「ありがとう」



スズランが目を潤ませながらたった一言

それからちょっと背伸びをして

ユリのおでこにキスをしました




サクラはグッと親指を立てると

クシャッとした全力の笑顔で歩み寄り

ユリの頭に手を置いてわしゃわしゃ掻き回しました





「えへへ…… 勝てた! よかったあ……」




林檎のように真っ赤な顔をしたユリが呟いたあと、




「よし、あとはいつものお仕事にもどるだけだな!」




きっぱりと言いながら泉の方を見ました




「いつものっていうのは?」



「もちろん治療さ!精霊樹のね!」




振り向いたユリの顔は晴々としていて、

とても誇らしげでした





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