人間が考えたユートピアというものについて
どのような社会、そして政治が望ましいか?
それについては、歴史上色々な政体が考えられてきました。
哲学者プラトンが考えたのは、哲人政治。
哲学者、すなわち、この世界、人間について根源的に考察し、高い識見を得るにいたった人物に政治を委ねる。
マルクスの共産主義社会。
労働者には、その労働に対して、資本家から対価が与えられるが、労働量に見合ったものではなく、その一部、余剰労働部分は資本家に搾取されることになる。
プロレタリア革命により共産主義社会が実現すれば、労働者たちの労働は搾取されることはなく、労働は苦役の対象から喜びとなる。人びとは、おのれの能力によって労働し、必要に応じて対価を得る。
さらにはアナーキズム、無政府主義。
国家等の権威、権力を否定して、自由な各個人の結合によって社会を成り立たせる。
毛沢東が文化大革命で唱え、カンボジアのポルポトが追随したのは、頭脳労働の否定。
自らの肉体を使って働く、農民、労働者のみが尊い。
頭脳労働者の汚染されたブルジョア思想は徹底的に改造されなければならない。
フランス革命は、ブルボン王朝の圧政から人民を解放し、その「人は生まれながらにして自由かつ平等である」との人権宣言は、世界史における、ひとつの金字塔とされる。
しかし、フランス革命は、ジャコバン派の、流血の恐怖政治を生んだのであった。
話が色々と飛んでしまいましたが、従来の政治、政体から、何らかの思想を元に、全く新しい政治、政体を築こうとすること、何らかの理想郷、ユートピアを目指すことは、実現不可能であるか、実現した場合は例外なく悲劇的かつ非人間的な社会となる、というのが、歴史の必然であると断言してよいのではないかと思います。
ユートピアを構想することは無意味という以上に害悪である。
よりよい社会を望むためには、先ず、このことをしっかりと認識して、本源的な人間性と、現行制度をしっかり把握した上で、着実な思考の中で社会の改善を、考察することが肝要だと思います。
今、AIの進展により、今は、人類の歴史における大きな転換点。これから、人類が想像することの難しい世界がやってするだろうと言われています。
バーチャルリアリティの発達により、SFで色々と想像されていたような社会の到来の可能性も論じられているようです。
どんな社会がやってくるのか筆者にも想像することは困難です。
願わくば、人間性というものの大きな変革を求められることがないような社会であってほしい、と願っております。
次回は、人類が経験した社会の中で、まずまず良好な社会であったと歴史的に評価されていると思われる、十九世紀後半のイギリスと、全盛期のローマ帝国について書いてみようと思います。