第七話 勘違いと寂しさ
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
カチカチカチカチカチ
金曜日午後20時50分
信介の部屋からはゲームPCのキーボードを叩く音とマウスのクリック音だけが聴こえていた。
現在信介は高校の友達の近藤祐樹と風邪で最近学校を休んでいた木村駿と3人でFPSゲームをやっていた。
ゲームをやり始めたのが19時半で現在20時50分過ぎなのでかれこれ3人は1時間以上ノンストップでゲームをしている。
『で、何だっけ?信がモテるって話だっけ?しかも相手はあの新城葵』
最近のゲームでは自分の声で話せる機能が多く、こうして友人とやるだけではなくオンラインで知らない人と話す場合だってある。
3人はその機能を使って話しながらゲームをしていっているのだが、その内容が今日まで風邪で学校を休んでいた駿に対して信介と新城葵が急接近していると言う情報を祐樹が面白そうに駿に話していた。
『いや〜やっぱ信は見かけによらず手は出してたんだよ』
「出してねえよ」
祐樹の発言にすかさず信介は否定を入れる。
『あっ、敵居たよ。N方向に3人』
『あ〜、あれか...............俺アサルトだけどスコープがないんだよ。腰打ちで当たるか?』
『信ライフル持ってたよね?当たる?』
「当ててやるぜ」
信介はキャラを操作して駿の教えてくれた方向にいる敵目掛けて装備の銃をうった。
ーーー新城葵ーーー
私は千鶴と遥の3人のグループで通話をしていた。
『葵、信の私服姿どうだった?』
「凄いカッコ良かった!!!ありがとう千鶴〜〜!!」
私にこの通話が始まる前千鶴から1通の写真が送られて来た。
それは上下黒のスウェットを着て上は白のパーカーを着て、手には今日食べるのかカツ丼を持っている槙本くんの姿が写った写真だった。
私はこれを観たのちに声にならない悲鳴を出し直ぐに保存した。
『え?どんな写真なの?』
『ちょっと待って、このグループに送るから』
遥だけはその写真を見て居なく、千鶴はそんな遥の為にこのグループに写真を載せた。
『完全に部屋着だよね槙本くん』
『部活帰りにちょっとお腹空いてコンビニに寄ったら居たんだよ。今日のご飯買いに来たんだって』
千鶴と遥の声を聴きながら私は再度グループに送られた写真を凝視する。
あ〜、何でこんなにカッコ良く見えるんだろう!?
黒と白のシンプルな色で構成された部屋着だけど、それでも槙本くんが着たらそのダラダラ感が凄くカッコ良く見える。
『あ、そうだ葵』
「ん?何?」
写真を見ていると私は千鶴から呼ばれた。
『信が「俺新城に嫌われてる」って言ってたよ』
....................................
私はそれを聞いて少し硬直した。
嫌い?
私が?
誰を?
『あ、葵。大丈夫?』
「うん。大丈夫。大丈夫だよ遥」
急に話さなくなった私に遥はそんな心配そうな声を掛けてくれた。
ありがたいが、今はそんなところではない。
『あ〜〜、これ言わない方が良かった?』
『何してんの千鶴』
「....それで千鶴、私が誰を嫌いって?」
『あ、いや、信がね!もしかしたら俺嫌われてんじゃないかなって言ってたから!私じゃないよ!?』
「何で!?私別に槙本くんの事嫌いじゃないよ!寧ろ大好きなんだよ!!?」
『葵暴走してる。千鶴が原因だから何とかしてよ』
何で何で!?
私はパニックになってしまった。
私の何がいけなかったのか分からないが、少なくとも千鶴の話を聞く限り槙本くんは「私が槙本くんの事を嫌っている」と勘違いしているらしい。
『千鶴、話聞いたなら理由とかも聞いてないの?』
『えーっと、葵今日信から教科書貸してもらったでしょ?で、5時間目が終わってから休憩中に返しに行った。その時の返し方が、信が言うには「全然目は合わせてくれなくて顔すらも見てくれない。そして返し終わった途端逃げるように教室を出て行った」って..........』
それを聞いて私は確かにそのような行動を取ったと思った。
だけどそれは恥ずかしくて!
学校では話さないし、昼休憩の時一緒に千鶴と遥が居たけどそれでも恥ずかしくて。
それで教科書を返しに行ったけどあまりの恥ずかしさで教室を急いで出てしまった。
でも、自分が取り返しのつかない事をしてしまったかもしれないと、自然と私のテンションは下がった。
「.....................................................これで嫌われたらどうしよう」
『元気出してよ葵!大丈夫!私がフォローしといたから』
「..............何て?」
『葵は信の事嫌いではない!ただあんまり関わった事がないからどうやって接すればいいか分からないだけだよ!って言ってやったよ!!』
『それで槙本くんはどんな反応したの?』
『...........嫌いではないけど苦手?って納得してた』
「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜....................終わった」
高校2年生新城葵、告白すらしていない気になっている異性から苦手なのかもしれないと判定をされた。
普通相手が自分を苦手と言われたらその相手と距離を置いてしまうのが人間だと思う。
その考えだと槙本くんは私が槙本くんを苦手だと思っているから、槙本くんから関わってくる可能性はほぼゼロになる。
私は苦手な人が居ても顔には出していないのでそう言った事はないが。
『全然フォローになってなかったね。嫌いから苦手ってランクは下がったけど』
「あ〜〜嫌いじゃないのに〜〜〜〜!!!それより、そんな事知ったらメッセ送れないよ!」
『....................千鶴、責任を』
『さ、流石に私も罪悪感が出るよ!葵、私が頑張って信との中を取り持つから』
「ううう................お願い!」
ーーーーーーーーー
ーー槙本信介ーー
『負けたな』
俺と祐樹、木村の3人でゲームをやっていたのだが、今日は調子が悪いのか全然敵に弾が当たらず3人ともゲームオーバーとなり負けてしまった。
祐樹もゲームオーバーと表示された画面を見ているのかそんな声が聞こえた。
「ダメだわ今日。全然当たんねえ」
『今何時ぐらい?』
「21時過ぎ、どうする?もう一回いっとく?」
『いや、今日はもう辞めようぜ。今日はもうダメな気がする』
「了解」
『じゃあ話は信と新城のこれからについて話すか』
「まだやんのかよ。ってか、その言い方だと俺と新城が付き合ってるように聞こえるぞ」
俺と新城はそんな仲ではなく、ただの友達だ。
『と言ってますが、実際に信と新城を見た祐樹からしたらどんな感じだった?』
『あれはもう誰の目でも分かる付き合い立てのカップルでしたね〜。逆に、あれで付き合ってないのだとしたら俺は信に責任があると思います』
『ほうほう』
「ノリノリだな2人共。それにあれの何処が付き合い立てのカップルだ。完全に逃げられたぞ俺」
コンビニで中条に言われ少しは納得したのだが、やはりあれらの行動は俺に予想以上のダメージを与えていた。
『あれが照れ隠しだと思えよ。そうすれば少しはマシになるぜ』
「..........照れ隠し...ねえ...」
『俺はその場見てないんだけどめっちゃ見たいよ』
「やめろ」
『まあでも多分来週の月曜からは見れると思うぜ』
『マジで?』
「何で!?」
『俺独自の情報源があるんだよ』
俺は多分だが、その情報源が祐樹の彼女である宮野遥だと察する。
宮野なら新城と中条の2人といつも一緒にいるので新城の話は大体入手出来る。
「それより、どうする?」
『露骨に話逸らしたな』
『う〜ん、今日はもうやめて明日またやるってことで良くない?』
『じゃあそうするか』
「なら切るぞ」
おやすみ〜と2人の声を聴き終えてゲームから退出した。
ゲームを終えた俺はベッドで横になると一気に眠気が最高潮に達した。
まだ歯磨きをしていないが、もう何もやる気が起きない。
朝にやろうと自分に言い聞かせ俺は掛け布団を掛けて寝る体制に入る。
数分後俺は爆睡で寝てしまっていた。
その日は新城葵からのメッセはなく、睡眠で悩まされたにも関わらず翌朝起きた時、スマホを確認して彼女からの通知が無かったことが何故か寂しく思ってしまった。
最後まで読んで頂きありがとうございます
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感想であったんですけどこの作品のヒロインはうざいんですかね?
最後にもう一度、ありがとうございました