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第六話 コンビニ


放課後

信介は、祐樹以外のクラスメイトの殆どから新城葵との関係性を聞かれた。



「......ハア.....疲れた」



そこはまあ適当に理由をでっち上げて何とかやり過ごしたが、普段と違って多くのクラスメイトと関わったり、「2人は付き合っているのか!?」と狂った様子で聞いてくる男友達の誤解を解くのに、信介は疲労困憊になっていた。


「たかが同級生の女子1人に教科書を貸しただけ」と信介は思っているが、相手があの校内1の美少女新城葵となれば話は別だった。


しかし、信介が1番気になったのは、教科書を返しに来た新城葵が取った行動だ。


一切信介の顔を見ようともせず、信介の手に教科書が渡った瞬間お礼を述べて直ぐ様教室から出て行った。


まるで、苦手な相手とは居たくない時に出る行動のように信介は思えた。


事実信介は「新城葵は槙本信介の事が嫌い、或いは苦手としている」と勝手な考えに至っている。


こうやって学校を出て、家までの帰り道を歩いている最中ずっと考えているが、どうしても信介の経験上そのような考えになってしまうのだ。



ーーー槙本信介ーーー


俺は、自分が新城に何か嫌われてしまう様な事をしてしまったかと考える。


新城とは、1年の入学式からの付き合いで、入学式の次の日に連絡先を交換してから、今日までスマホの連絡アプリを使って交流はしている。


だが、それとは逆に学校では一切新城と関わる事はなく、その日1日新城の顔を見ないなんて事も珍しくない。


アプリでのメッセージのやり取りで何かやらかした記憶もない。


元々女子とやり取りする機会がほぼほぼなかった俺には、女子が不機嫌になってしまう様な言動は分からないが、少なくとも俺自身に心当たりは無い。



(..................................もういいか)



俺は考えるのをやめた。


昔から母親に「あんた人に興味ないでしょ?」と言われてきた俺は、確かに他人に対しての関心はなかった。


人に嫌われるのだって好かれるのだって、結局はその人本人が決めている事で、俺自身がどうこう出来る問題ではない。


嫌われているのなら極力その人と関わらないし、好かれていようといつも通りその人と接する。


一々そんな人ごとに対応を考えるのは面倒くさいし、何より他人からの評価なんてあまり気にしない。


ましてや相手は滅多に直接関わる事のない新城葵だ。


俺は自分にそう言い聞かせ家に着く。


俺の家は住宅街にある一軒家で、ここで俺と母の2人で暮らしている。


父親は、俺がまだ5歳の頃に離婚しておらず、母は女手一つで俺を育ててくれた。


母は出版社の部長をしていて、あまりの忙しさに社内に泊まる事なんて当たり前で、滅多に家に帰ってこず、帰って来ても俺の寝ている夜遅くまでの時間になることが多く、朝も俺が学校に行く前に仕事へ向かうので、殆ど一緒にいる時間はない。


なので、実質一軒家に俺1人暮らしの状態だ。


俺と母の2人暮らしだが、それでも家は2人暮らしにしては広く、母の帰ってこない時間は普段よりとても広く感じる。


俺は玄関の鍵を開けて中に入る。


内装は白で統一されたシンプルな造りで、母はいつも通り帰っておらず静かだ。


俺は2階にある自分の部屋に荷物を置き、1階にあるリビングへ向かった。



「ああ腹減った」



俺はリビングにあるキッチンの冷蔵庫を開けて中を確認する。


マジか。


冷蔵庫の中はものの見事に空っぽだった。


俺は普段から食材の買い出しには行かず、母は帰って来ても忙し過ぎて買い物などに行く時間はない。


現在時間は午後6時。


俺は1度自分の部屋に戻り、制服から部屋着に着替える。


上下黒のスウェットの部屋着の上から白のパーカーを着る。


パーカーのポケットにイヤホンを挿したスマホと2千円が入った財布、家の鍵を入れる。


玄関のドアを閉めて、俺は先程まで歩いて帰って来た道を歩く。


目的はコンビニだ。


食べる物が何一つ無かったので、俺はいつものコンビニを利用する。


俺の身体は100パーセントコンビニ弁当で出来ていると言っても過言で無い程コンビニを利用している。


朝は行きがけにコンビニに寄って昼飯を買い、夜は夜飯を買うためにコンビニに行く。


殆ど毎日行っているし、場所も一緒なので店員のおじさんと会えば、挨拶をするぐらい仲良しになってしまった。


イヤホンを耳につけ、適当に音楽アプリでインストールした曲をランダムに聞く。


道中は時間も時間で住宅街というのもあって、仕事帰りのサラリーマンや、幼稚園からの帰りなのか、仲良く手を繋いで歩く男の子とそのお母さんとすれ違う。


俺は無意識にその親子を立ち止まって目で追ってしまった。



「お母さん、今日のご飯は何?」

「今日はハンバーグよ!」

「やった!!」



男の子は今日の夕食がハンバーグと知ると、目に見えて喜んでいた。


それを優しい眼差しで見つめる母親。


俺も昔はあんな風な頃があったのだろうか。


久しくまともな会話をしていない母親を思い出して、俺は再度コンビニへの道を歩く。


コンビニに入ると、レジに居た顔見知りのおじさんに会釈だけして、弁当コーナーへ行く。


この時間、弁当コーナーは夜ご飯の代理として活躍するので品数はあまりなく、俺は余り物扱いされているカツ丼を選ぶ。


それを手に持つと顔見知りのおじさんが俺に近付いてきた。



「どうも」

「君また来てるね。今日もお母さんは仕事?」

「そうですね。最近は特に忙しいそうですよ」



俺は明日の朝食べるためのパンを選ぶ。


やはり、惣菜パンと菓子パンをそれぞれ1つ選んだ方が味変えになるな。



「まあ毎日来てくれるのはありがたいけど、たまには仲良く家族揃って食べるのも良いと思うよ」

「あんまり母さんには迷惑を掛けたくないんですよ。俺の家、母子家庭なんで、これ以上母さんに負担をかける訳にはいきません。」



家に居ない分小遣いは貰っているし、学校だって行かせて貰っているが、この歳になると母の苦労がよく分かってくる。



「......子供っていうのは親に迷惑をかけるもんだと思うけどね」



おじさんはそんな事を言うが、俺はよく分からない。


店内に自動ドアが開いたチャイムが鳴り響くと、おじさんは「いらっしゃいませー!」と俺の近くで来店して来たお客さんに挨拶する。



「........あれ?信じゃん」

「え.......あ、中条」



俺は自分の名前を言われたのでそちらを見ると、制服を着た中条が居た。


中条は俺に気付くと、こちらに近付いてくる。



「何してるの?」

「俺は今日の夕食と明日の朝ご飯を買いに来た」

「そうなんだ」



おじさんは俺と中条が親しそうに話し出すと、自然に離れて行った。



「中条は部活帰り?」



俺の記憶では確か陸上部に入っていた気がする。



「そう。いや〜、練習で疲れて少しお腹が空いてね。まさか信に会えるとは思わなかったけど。家はこの近く?」

「歩いて7、8分ぐらいの所」

「結構近いね。それにしても信の私服姿って中々レアな気がするよ。1枚撮っていい?」

「何でだよ」



聞いておきながら俺の許可無しに中条は俺を自分のスマホで撮りやがった。


なら最初から聞くなよ。



「葵に送ってあげるんだ〜」



何故?



「止めろ。俺の事嫌いっぽいから」



友達から嫌いな奴の写真送られるとかどんな罰ゲームだよ。



「は?誰が?」

「新城が」

「葵が?何で?」



俺は中条に教科書を返す際に新城に取られた行動を教えた。


中条は「あ〜..........」と言うだけで俺の意見には賛成していない様だ。



「友達の私が言うけど、葵は信の事嫌いではないよ」

「嫌いではないけど苦手意識は持たれてると?」

「いや違うよ!何でそんなネガティブな考えしか出来ないの!?単に今まで直接接した事がないからどう関わっていけばいいか分からないだけだよ」

「.................まあ分からないでも無いけど、新城ってメッセとのイメージとリアルが合ってないんだよなー」



スマホでのやり取りとなるとあんなにも多く俺と話をしてくるのに、現実では全然話してこないし、顔すら見てこないからな。



「顔が見えないからじゃない?」

「だったら今度はビデオ通話で話して見るか」



それで俺の事をどう思っているのか分かる気がする。


声だけの普通の電話ならセーフ、俺の顔が映る状態で話してアウトならば俺は新城とはなるべく会わない様にする。


それがお互いの為だ。



「信って、付き合っても無い女子と通話するのに抵抗とか無い人?」

「?別に通話するのに付き合う付き合ってないとかないだろ?」

「...............そうだよね。信は気にしないタイプだよね」



何で俺がおかしいみたいな反応をされているんだ?


メッセージで文字を打つのが疲れたら俺は通話の方が楽だと思うんだが。



「それより本当に送ったの?さっきの写真」

「ん?送ったよ。だってレアだよ?信、去年の体育祭と文化祭の打ち上げ来なかったでしょ」



確かに行っていない。


何故朝から午後まで学校行事で疲れているというのに、その後クラスでの打ち上げで馬鹿騒ぎ出来るのか、俺にはよく分からない。


疲れているなら馬鹿騒ぎなぞせずに、帰って休めよ。


それかせめて日にちをずらしてくれ。



「行かないよ、疲れてんだから」

「今年は行きなよ!楽しいから。学校では分からないみんなを見る事が出来るよ?」

「人生に於いて知らない方が良いこともあるんだよ」



クラスの奴らの事なぞ正直興味ないし。


俺はレジでカツ丼と朝飯のパンを買う。


カードはあまり信用ならないので俺は現金派だ。


商品を袋に入れてくれたおじさんに「また来ます」と言い、俺はコンビニを出ようとする。


すると、後ろから中条も商品を持って出て来た。



「おにぎり一個で足りんの?」

「小腹程度だしちゃんとしたご飯は家で食べるから」

「あっそ。じゃあ、俺の家こっちだから」

「じゃあね信!」



コンビニの前で俺と中条は別れた。


家につき、買ってきたカツ丼をレンジで温めてリビングで食べる。


テレビで今日起きたニュースを観ながら、俺はカツ丼を食べた。


シャワーで風呂へ入り、俺は2階の自分の部屋に戻る。



ピロン♪


「...ん?」



勉強机に置いておいたスマホが鳴る。



【祐樹】:19時半に木村とゲームやるぞ!ログインしとけ!!



祐樹からのメッセで俺はそれに了解とだけ打ち込む。


現時刻は午後7時。


俺は祐樹に言われた通りゲームPCの電源をつけ、祐樹と木村の3人でやるゲームを時間前に起動する。


今日は金曜日で明日から学校が休みだから、今日は徹夜か?と思いながら、ゲームの自分のキャラを操作する。









最後まで読んで頂きありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公は発達障害みたいなものを抱えているのでしょうかね?
[気になる点] ゲームPCとありますがゲーミングPCの間違えですかね?
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