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第三十二話 一学期最後の会話


春の日差しよりも強烈な太陽の光。


季節の風物詩となったセミの鳴き声が様々な場所で囁かれる季節となった。


街では暑苦しいスーツを脱ぎ、シャツの袖をまくり上げて歩くサラリーマンの数が多く見られるようにもなった。


長袖から半袖へと変わり、店のバリエーションも夏の一点ものへと変わるこの頃、信介は夏休み前の最後の一日をのんびりと過ごしていた。



「......暑い」



ぐでっと溶けた液体のように机に張り付きながらそんな文句を呟く。


昨今、夏の授業環境改善の為、国は総力を上げて夏でも十分な授業に出来るようにと送風機やら技術の進歩とも言えるエアコンなどの空調機の配置を徹底していた。


しかし実際の所、高校のあまりの多さに業者は翻弄され各高校の順番待ち状態。


結局、一学期最後の今日まで業者は来ず、信介の通う高校は最後まで扇風機と言う暑い風を送るだけの機械を置き暑苦しい状態で一学期を終わろうとしていた。


先生から知らされた業者の来る日程は夏休みだそうで、信介達のもとに授業中涼しい風が来るのは二学期に突入してからだと言う。


正直遅いとしか言いようが無いが、文句を言ったってどうしようも無いので生徒は早々に諦めた。



「涼しい部屋で...........ゲーム」



隣で同様に机に張り付いている木村はそんな願望を呟いた。


口から出て来る言葉は“またか”と言いたくなるが正直自分もその様な生活を送りたいので何も文句は言えない。


帰りたいの一言しか今は思いつかないのだ。



「おい!2人共元気だせよ!」


「うっわ.......」



そんな2人の後ろから元気な近藤が前に出て来た。


ただでさえ暑苦しくて苦しいのにそこまでハイテンションで来られても理不尽な怒りが込み上げて来るのだろう、木村は冷めた目でやって来た近藤を見つめる。



「暑苦しいのが来たぞ」


「信、相手お願い」


「無理」


「人を厄介者扱いすんなよ!」



近藤の相手を両者共擦り付けようと必死だった。



「お前ら元気出せよ。明日から待ちに待った夏休みだぞ?」



学生の殆どが心の底から楽しみにしている長期休暇“夏休み”。


学生の間は、学生にとって一番長い休みであり人それぞれの個性が色濃く出る期間。


学校によって変わる所はあるが、期間にして約1ヶ月ある。


何より今年の信介はこれまでの年とは大いに違う事がある。



「それに信は新城って言う彼女も出来たしな〜!」


「っ........」



近藤の言葉に信介は言葉を詰まらせる。


信介が新城に想いを伝え、正式に彼氏彼女の恋仲になってから早一月半が経過した。


信介は勿論のこと、まさかの新城も初めての彼氏だと言う事で、この日まで慣れない関係に悪戦苦闘しながらも何とか続いている。


あまり大きく話にしていないが、主に信介を目の前にした時の新城から溢れ出る幸せオーラにより大体の生徒がその関係を把握しているだろう。



「まあ、幸せならなによりだよ」



木村はそんなワイワイと騒ぐ2人に相変わらずのゲーマースタイルでスマホの画面から顔を動かさないで言葉を発した。


今やっているのは銃などを使って相手を倒すシューティングゲームなのだろう。


木村なりに音量を最小限でやっているが2人の耳にはちょくちょく会話の間にドババババ!!と連射音が聞こえてくる。



「ったく。彼女出来ないって言ってた信に彼女が出来たって言うのに。駿は相変わらずだな」


「まあね」



ゲームオーバー!と言うゲーム音と共に木村はスマホをズボンのポケットに入れる。



「木村は居ないの?気になる女子」


「お前顔は良いんだから誰だっていけるだろ」



木村は学校の休憩時間は絶対スマホを取り出してゲームをし始める程のゲーム好きでそれはこの2学年の間では有名な話だ。


顔はイケメンと呼ぶに相応しいのに性格に難があると言う話を信介は時々耳に入っていた。


信介と木村は1年の頃が同じクラスで高校生になって初めて出来た友達と言え、木村繋がりで近藤とも仲良くなれた。


出会った当初からスマホでゲームをしてたのでこの中で唯一変化が無いとするなら木村だろうなと信介は思う。



「俺はいいかな」


「もったいないなぁ」


「良いんだよ。それよりそろそろ体育館行かない?」



時計を見ながら木村は言った。


次の時間は1学期最後にある終了式があり、授業の1時間を使って全校生徒と全教師が一つの体育館に集まって夏休みに入る前の注意事やらを長々と話す生徒からしたら長期休みに入る前の最後の関門がある。


全校生徒が集まる事もあって最後の方に体育館に入ると多くの視線を浴びると言う少し恥ずかしい目に遭う場合がある為、信介達は開始残り十分前に席を立ち教室を出た。



「..............彼女..........か」



体育館と校舎を繋ぐ道を歩き、前でワイワイと話す信介と近藤の2人には聞こえない声で木村はボソッと快晴な空に向かって呟いた。












読んで頂きありがとうございます。


感想で“木村の今後が気になる”的な事を書かれて思ったのですが、この作品内で人気があるキャラって誰なんでしょうね。



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― 新着の感想 ―
[一言] 再開ありがとうございます! 楽しみです\(//∇//)\
[一言] この作品もモブ同士をくっつける作品となりそうで怖いわ ラブコメにありがちだけど嫌いな展開すぎる
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