第四話 昼休み 信介・祐樹side
翌日の金曜日
今日この日を終えれば、後は土日休みと言う事もあって多くの学生達は最後の力を振り絞る様に頑張って授業を受けていた。
その中には授業中に良く寝てしまう信介も含まれていた。
昨夜も学校のマドンナである新城葵と話していたが、今日はそこまで眠たい気持ちは無かった。
そこにはやはり信介の提案にあった通話に効果があった。
メールと言う相手の感情も読み取れないものよりも、相手の声をリアルに聴ける通話又は電話により相手の感情が少し分かる。
それにメールを打つ時間を口にして出す事で時間が多少なりとも短縮される。
昨夜は基本的に新城の学校であった出来事など雑談を信介が聴いて時々相槌をうつと言った感じだった。
それにより、話したい事も無くなりそのタイミングで通話を止めた。
なので昨夜寝た時間は12時とそこまで遅く起きてたわけではないので眠たくないのだ。
その調子で午前授業は終わり昼休憩を迎える。
「信〜飯食おうぜ!」
「はーい」
友人である祐樹の誘いに乗り信介は移動する。
移動した先の席同士をくっ付けて信介と祐樹は一緒に飯を食べる。
「あと2時間で解放される〜」
「昼休憩も合わせたら後3時間だけどね」
今日もまた2人での昼食だ。
共通の友人は今日も体調不良を理由に休んでいる。
「木村、何で休んでんの?」
「風邪だと。でも、ほぼ熱は引いてるからゲームしてるって」
「クソかよ」
共通の友人は木村と言う男子生徒だ。
「俺も学校休めば良かったわ。そうすれば3連休になったし」
「どうせ授業寝てんだから来いよ」
「今日は寝てねえよ」
コンビニのパンをかじりながらその様に言う。
ブー ブー ブー!
「ん?スマホなってないか?」
スマホのマナーモードの時のバイブ音が聞こえて来た。
「俺じゃねえよ。信じゃね?」
「..........あっ、ホントだ」
祐樹に言われ信介は制服のポケットに入れていたスマホを取り出す。
信介の通う高校は基本的に授業中につつかなければスマホを持って来ても良いし、こうやって休憩時間に使っても先生達から怒られる事はない。
それでも2週間に1人ぐらいのペースで授業中にゲームをしていたとかで指導室に連行、生徒指導の先生の少し長い説教に反省文、そして1日スマホ没収と言う罰がつく生徒がいる。
皆んなそれが分かっているので安易と授業中にスマホを操作する事はないが、それでも昼休憩の様な少し長い休み時間に突入すると我慢していた反動なのか仲の良い友人と通信などをして楽しんでいる生徒が多く信介のクラスメイトも同じだった。
バイブ音を鳴らしていたのは信介で、取り出して画面を見ると通知が来ていたのか画面はロック画面だった。
【新城】:現代国語の教科書を貸して下さい!
相手は新城で内容は学生なら良くある教科書を貸してくれと言うものだった。
その内容に信介は新城でも忘れ物するんだな.....と思った。
やはり何処か新城には完璧と言うイメージがついているのかもしれない。
しかしこのメールの内容を見るにどうやらそうでもないらしい。
信介は午後からの授業を整理する。
信介のクラスと新城のクラスとは授業が交互になるようになっている。
今日の日程では、信介のクラスで現代国語があるのは最後の6時間目なので隣のクラスは5時間目と言う事になり、信介が5時間目に受けた授業を新城のいる隣のクラスは6時間目に受けると言う事になる。
教科書を貸す分には全然問題はなかった。
了解、後で持っていく
と新城に送り、残りのパンを食べる。
昼休憩はまだ始まったばかりで、すぐに教科書を貸しにいく必要はないのだ。
「何だったんだ?」
「隣のクラスの奴から現国の教科書を貸してくれって」
「ああ。次あっちは現国か。教科書忘れるって、置き勉すればいいのに」
「真面目なんだよ」
新城に置き勉のイメージはないな。
夜遅くまで起きてるのは慣れてると言っていたから、持って帰った教科書で勉強しているのだろう。
勝手なイメージでしかないが。
「そう言えば教科書を貸すって誰に?」
「新城」
信介はスマホを操作してニュースを見ていく。
しかしお喋りな祐樹が急に黙ったので目線だけ目の前の祐樹に移す。
すると祐樹は鳩が豆鉄砲を食らった様な顔で固まっていた。
信介は自分が何か変な事を言ってしまったか?と思う。
「どした?」
「...............もう1度聞くけど誰に教科書を貸すって?」
「新城だけど」
「新城葵?」
「そうだけど」
「......マジで?」
「何で嘘つくんだよ」
祐樹の問いに信介は意味が分からなかった。
新城と言ったのが悪かったのか、何故何度も確認してくるのか。
証拠として信介は、新城とのメッセージのやり取りを見せる。
それを見た祐樹は驚愕の表情を露わにする。
「めちゃくちゃ仲良しじゃねえか!どんだけトーク上まであるんだよ」
「普通じゃない?」
「そもそもお前が女子と連絡取ってることに驚きだわ!!」
祐樹の中での俺はどうなってるんだ?と信介は思う。
「うわっ、昨日なんか2時間ぐらい通話してやがる」
「あ〜、もう文字うつのめんどくなって。それよりもそんなに騒ぐ事?ただ同級生の女子と話してただけで」
「これが普通の女子ならまだ俺だってここまで騒いでない。問題なのはお前が新城葵と言う学校のマドンナとメッセージのやり取りをしている事だ」
「それ重要?それより少しうるさい」
目の前で意気揚々と解説している祐樹のテンションに若干ついていけなくなった信介だったが、それでも祐樹の言葉は続く。
それよりも少し声のボリュームを抑えて欲しいとは思う。
チラチラとゲームに集中している友達や、クラスの女子が見てきている。
それに気付いた祐樹は声のトーンを少し落とすが、話をやめる気はなかった。
「相手はあの学校1の美少女だぞ。そんな存在と連絡取ってるって、新城に好意を寄せてる奴からすれば嫉妬の嵐だぞ!?」
「いや知らんし」
「いつから新城と連絡取り合ってたんだよ」
「連絡先交換したのは.......................確か入学式の次の日か。それから着々」
信介は意外と言うか新城と初めて会った時のことは覚えていた。
覚えていたではなく、高校入学式の日にあんな事があったので忘れようにも忘れられないのだ。
マスクをしていて顔の全体像は分からなかったので、入学式翌日の放課後に改めて新城を見た時は、「あっ、凄い美人」と口には出さなかったが思った。
帰り道が途中まで一緒だったので歩いて帰っていて、自分の方向と新城の家の道が逆でそこで分かれて少し歩いた時新城から呼び止められた。
そして連絡先交換をして欲しいとお願いされたのでその願いを叶えたのだ。
「同じ男として、友達として俺は少しお前が心配になって来た。普通ここまで話してんなら「もしかしたら俺が好きなのか!?」とか「俺こいつと付き合いたい!」とか思わねえのか?」
信介は思った。
それが普通なの?
「思ったこと無いな。確かに新城はそこらの女子より見た目とか性格は良いよ。モテるのだって納得する。でもだからって俺が新城の事を好きかって質問されても、俺は友達としての好意はあるけど、そう言った目で新城を見た事はないかな」
新城葵だけでなく、他の女子ともそんな感じになった事のない信介からしたら逆に祐樹の言っている事が良く分からなかった。
連絡を取っているだけでその女子を少し意識したりするものなのか?
「それに新城だって俺の事はただの友達ぐらいにしか認識してないよ」
「......そう思っているのはお前だけかもよ?」
「いいよ、そう言うの。それよりいつまでトーク画面遡ってんの?」
「あ、悪い悪い」
祐樹はスマホを信介に返す。
「さて、昼も食べ終えたし、俺新城に教科書渡してくる」
「おう、いってらー!」
自身の机の中を探り、信介は現国の教科書を手に持つと教室を出て行った。
ーー近藤祐樹ーー
俺はクラスメイトである信が凄いと感じた。
信は俺や他の奴らが言っている愛称で名前は槙本信介。
信介だから信って呼んでいる。
こうして昼飯を一緒に食べているが信とは2年になってからの仲だが結構仲が良い。
信はいつも眠たそうで髪を切りに行くのが面倒だからと前髪が少し長く目にかかっている。
信はやる気が無さそうだが、相手をする奴に合わせてテンションが変わる。
信は周りの人間に上手い事合わせる事が出来、そして人間関係に於いて誰にでも同じテンションで接する。
そんな信なのだが、俺は先程信の連絡先の中に学校のマドンナであり同級生の新城葵がいる事を知りかなり驚いた。
しかも1年の頃かららしい。
(結構トーク上まで続いてたなぁ)
信と新城とのトーク画面を見たが結構上まで続いており、付き合っている男女のトーク画面を見ている感じになった。
(しかも全部新城から信にメッセージ送ってた)
無料通信アプリには、トーク画面の履歴を消さない限りその相手とどんな会話をしているのか全部分かり、その日付まで分かる。
俺が確認しただけでも、日付の下には必ず新城のメッセージがあり、それは新城の方から信に向かってメッセージを送った事になる。
俺はそれを見て、
(新城の方が信に好意に寄せているのでは?)
と思った。
昨日、何故信に彼女が出来ないのかと言う話になった。
俺が知る限り信に女の気配は全くと言って良いほどない。
信も彼女は出来たことないと言っていた。
俺には人の色恋沙汰について結構情報が入って来ており、色々と男子生徒と女子生徒の話を聞く。
信はこのクラス単体で考えたらモテる範囲に入らないもののモテない訳でもない。
女友達だっているし、普通に話しているのを良く見ている。
だがそれが信の恋に発展する事はない。
それに新城とのトーク画面を見るに、今の所新城が信と1番仲の良い異性かもしれない。
(なんか面白くなりそうだな)
俺は静かに自分の席で信が戻ってくるのを待つ。
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最後まで読んで下さりありがとうございます!!
次回は少し間が空くと思いますが、それでも読んでくれたら嬉しいです。
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次回は葵sideです。新キャラも出ます