第二十四話 体調不良
『信介と新城が男女の仲にある』と言った内容の噂が学年を問わず校内に広まった翌日
「げほげほ!....ああ......風邪だな」
信介は風邪を引いた
前日の夜に自分の噂の相手となっている新城と噂に対してある程度話し合い、噂が今より少し落ち着くまで直接会うのはやめておこうとなった
そしてまた色々な生徒からジロジロと見られる学校へ行こうと起きたのだが、いつもより身体が重く感じた
暑いわけでもないのに身体は汗をかき、部屋着の上下黒のスウェットが汗とこびりついて嫌な感触をさせる
そして強制的に悪い物を体外へ出そうと物凄い勢いで咳が何度も出る
いくらいつもより頭の回転が鈍くなろうと、この症状で思い付くのは風邪しか考えられなかった
「........38.4か」
信介は机の引き出しにある体温計を使って熱を計る
この様にベットから起き上がれない程体調が悪くなった時の事を考え、信介は熱を計る為の体温計に頭痛薬に解熱剤と言った薬一式が入った袋をベットの下の引き出しに入れている
思いの外熱があり信介はベットへ倒れ込む
昨日の噂によって入学してから1番人と関わった事やジロジロと見られたお陰で精神的にかなりのダメージをおい疲れが出たのだろう
(取り敢えず祐樹に連絡しておこう)
これでは学校へは行けないと判断した信介は祐樹へと
『熱が出たから今日は休む。先生へ伝えておいて!』
の内容を送る
こう言う場合本人或いはその親だったりが学校側へ連絡するのだが、信介は自分が電話しても咳で上手く話せる自信はなく仕事で忙しい母親に連絡するにしても恐らく自分のメールを見るのは送ってから数時間後の仕事の休憩ぐらいだ
それでは間に合わないと信介は友人の近藤に頼んだ
ピロン!
近藤に学校へ報告しておいてくれと送ってから数分
目を開け、自分の部屋の天井を見ながら近藤からの返事を待っていると部屋に通知が届いた事を示す音が響く
いつもならそんなに気にならない音だが、体調が悪いことでその音がいつもより頭に響く感じがした
『OK!俺に任せとけ!!お大事にな〜!』
近藤からの返事を読んだ信介はスマホを枕の側へ置き横になる
いつもなら歯を磨いたり顔を洗っている時間だが、今の状態を考えると一階にある洗面台に辿り着くまでに途中の階段を落ちてしまいそうだ
汗と服により気持ちの悪い感触をどうにかしたいがシャワーも浴びれない
汗も気持ちの悪い感触からして大量にかいているのが分かり、このまま汗をかき続ければ脱水症状になるだろうと考えるがもはや水を取りに行く元気もない
(はあ、噂が出て次の日に休むとか。これだと自分から噂を認めてるようなもんじゃねえか。アオには悪いことしたな)
そんな中新城に対する罪悪感が出て来る
対策として会わないようにしようと提案したのは自分だと言うのに、その自分が噂を肯定するかのような行動を取ってしまった
いっその事木村のいつか言っていた「実は付き合ってるんです!」と言って楽になりたいと思うが、実際に新城と付き合ってる訳ではないのでその様な発言は出来ず、したとしても新城に申し訳がない
(本当に付き合ってれば楽なのに)
熱のせいで正常な判断が出来ないのかいつもだったら考えないような事まで考えてしまう
高校だけではなく、学校と言う年頃の男女の噂は変に対応せずに正直に話してしまえば収まる
しかしそれでも収まらない時には、嘘をついた方がマシな場合だってある
しかしそれが今回の件で通じない
今の所噂で止まってはいるのでまだ疑惑の段階
それが真実となれば今度は本格的に認めない者達が出てくる
(...........分かってる)
どれだけ自分と新城が似合わないなんて分かっている
田中に「お前は新城葵にふさわしくない」なんて言われているが、そんなの新城と接してきて信介が1番感じていることだ
勉学中の下、容姿普通、取り分け人に自慢する事もなければ誇れる物も持ってはいない
そんな存在が似合わないなんて、その存在たる自分が誰よりも理解している
しかし何故だろう
今まで馬鹿にされて来ても、安い挑発を受けようともそれが事実であるから否定はしなかった
プライドなんて持ち合わせてなどいない
だが今は分からない悔しさが信介にはあった
今までにない感覚だった
「?」
こんな感覚は信介にとって初めましてだった
寝返りをうつと背中の汗と服が離れる
それがまた信介に嫌な感覚を与えた
そして不意に信介は新城を想う
(悪いことしたな..........大丈夫だと良いけど)
自分が噂が出て次の日に休むとなるとその相手となっている新城が少し心配になる
だが久しぶりの熱で信介の意識は朦朧としていた
(...........ダメだ)
心で思うがその願い虚しく信介の意識はそこで途絶えた
「あっ、目が覚めた?」
「........え?」