第十五話 勉強会 夜の部
女性陣が作ってくれた料理の数々を食べ、皆んなは満足に腹を満たす事が出来た。
「いや〜美味かった」
「そう言って貰えると作った甲斐があるよ」
近藤の素直な感想は食べ終わった食器類を片付ける宮野のもとへ直接伝わった。
信介も近藤の感想には賛成だ。
そもそもコンビニ弁当以外の物をまともに食べたのは久しぶりであり、初めてでは無いのに何処か新鮮さを感じた。
料理を作って貰い、それに加えて食器の片付けまで女性陣に任せる訳にはいかないと食べ終わった食器をどんどんキッチンへと運んで置く。
その時、キッチン側にある風呂の様子が分かるモニターを確認し、湯船にお湯が溜まりいつでも入れる状態にある事を知る。
「風呂の準備出来たから暇な人から入って」
信介はリビングで寛ぐ木村と中条に言う。
近藤は信介と同じように食器を運び、新城と中条は食べ終わった食器を洗っている。
今のところ何もしていない2人に声を掛けた。
「ん〜、じゃあ私が1番風呂行きます!」
「いってらっしゃい」
元気一杯な声で出て行く中条にテレビの方から顔を動かさないで木村が見送る。
食器を全部洗い終えた後に、中条が風呂から出て来た。
頭の部分が濡れていない事から恐らく洗面台にあるドライヤーでも使ったのだろう。
そこから女性陣を中心に風呂へやり、最後の信介が風呂から上がったのは最初に風呂に入った中条がリビングを出てからおよそ2時間程経った時だった。
信介が風呂から上がると皆んな話しながらではあるが、リビングの机で勉強をしていた。
しかし午後のうちにかなり勉強をした事で集中力は無くなり、いつしかペンを動かす音はなくなり、リビングには若い男女6人の楽しげな声だけが響いていた。
「.......っはあ」
夜の11時過ぎになった所で信介はあくびをする。
いつもなら土曜日でまだ眠くはならないのだが、土曜日にしては頭を使い色々と動いたのでいつもより身体が休めと言っているのであろう。
漏れ出したあくびから急激な眠気が信介を襲う。
それを見兼ねた木村が信介に声をかける。
「信、眠いの?」
「ちょっとね」
「そう言えば私達今日何処で寝れば良いの?」
「押し入れに人数分の布団と毛布があったよ」
「流石に同じ部屋では寝ないぞ」
「俺の隣の部屋が何も使ってないし、何も置いてないからそこに布団を敷こうか?」
二階の部屋は4室あるが、そのうち使っているのは信介の部屋と母の部屋でもう2つの部屋は信介がこの家に住み始めてから使っていない。
それでも掃除はたまにしており、今日信介が掃除した場所にその部屋2つも含まれているので寝るだけなら何の問題もない。
信介の提案でその部屋で女性陣が寝る事になったので、信介達男性陣は客間の和室の押し入れから3人分の寝具を出して2階に運んだ。
部屋は3人分の布団をひくとギリギリのサイズだが何とか入る事が出来た。
時間も時間で今日の勉強会は終わり、皆歯磨きやら寝る準備を整えて2階の部屋前で男女の部屋へ分かれた。
「おやすみ〜」
信介達は、そこから信介の部屋においてある漫画など修学旅行の夜の男子部屋の様な雰囲気で話をしていた。
しかし勉強の疲れが出て、木村が1番に脱落してから近藤と信介も木村に倣うかの様に睡魔に襲われる。
「....駿も寝たし、俺達も寝るか」
「うん、おやすみ」
信介はベットの下にひいた布団で寝る近藤に言う。
そこから数分後、信介の部屋は完全に静寂に包まれた。
隣の部屋から先程まで聞こえていた女子達の声も信介達と同じタイミングで聞こえなくなった。
スマホで時間を確認すると既に日付を超えていた。
信介も眠ろうと掛け布団に潜る。
ピロン!
「.......」
信介のスマホが通知をしめした。
信介はスマホの画面を確認し、決心した様に身体を起こす。
ベットからおり、爆睡している近藤と木村の2人を起こさない様に慎重に歩き、部屋の扉を開けて外に出る。
「あっ........」
部屋の外へ出ると信介の部屋の扉と隣の部屋の扉の間に座っている呼び出した張本人が声を出す。
呼び出した張本人、新城葵はスマホを握りしめて信介を待っていた。