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第十一話 信介はやり過ぎた


ーーー槙本信介ーーー


祐樹と木村と階段途中で別れて、俺は田中に続いて先程別れた2人と通ったばかりの廊下を歩き自分達2学年の教室のある方へ戻って行く。


そして田中と一緒に行き着いたのは俺のクラスではなく、その隣にある新城や中条達のクラスだった。


教室内は田中と俺の2人だけしかおらず、外からは部活動の掛け声が聞こえてくるだけだった。



「.............それで、俺に何か用?」

「..............」



俺は連れて来ておきながら一向に連れて来た理由も言わない田中に聞く。


しかしそんな俺の問いに田中は無言を貫く。



「はあ、俺達あんまりと言うか殆ど初対面に近いよな?俺、田中に何かした覚えなんてないんだけど...........」



ただでさえ、外から聞こえてくる部活中の生徒の声しか聞こえないのにここで黙られると困るんだよ。


変に重たいんだよ田中の発する空気感が。


そこから田中は口を開くのだが、田中が沈黙していた時間は数秒な筈なのに俺は数十分にまで体感した。



「君は、新城さんとはどう言う関係なんだい?」

「............は?新城?」



田中は俺と新城の関係を聞いてきた。



「関係...........って言われてもただの友達としか言えないんだけど」

「そんな訳ないだろ!!!」

「!?」



俺と田中以外居ない教室中に田中の大声が響き、俺はそのあまりの田中の勢いに身体をビクッとさせて驚いた。


田中は先程までの冷静な佇まいはなく、まるで俺を親の仇かのような目つきで見てくる。


なんで!?


俺正直に言っただけなのに......


「た、田中?どうした?」

「この際はっきりと言わせてもらうぞ槙本」

「は、はい......」



俺は田中の様子を見ながらなるべく田中を刺激しないように慎重に話す。



「君は、新城葵に相応しい人間じゃない」



田中は俺にそのように言った。


やはりと、俺は心の中で呟いた。


俺は、田中が新城の事を同じクラスのクラスメイトではなく1人の異性として見ていると思っていた。


そしてその考えが田中の発言によって確信に変わった。


だが、それが分かったとしても田中の発言の意味を理解してはいない。


だから俺は聞いたのだ。



「どう言う意味?」



俺がそのように言うと田中は徐に話し始めた。



「新城葵は、まさに完璧な存在だ。そのルックスの高さと勉学においての優秀さ、人間関係も申し分の無い」



田中が口を開いたと思えば、俺に向かって新城葵の素晴らしさを語り始めた。


おそらく田中が知り得るだけの新城葵という存在の情報を田中は俺に熱心に熱意を持って話すのだが、俺はそんな田中に内心引いていた。


何故なら、田中は新城について知り過ぎているからだ。


教室での新城の行動に、授業を受ける態度、ましてや本人でさえ気付いていないかもしれない癖などをまるで暗記した単語帳をつらつらと言うようにどんどん田中の口から発せられる。


そしてそんな長い説明は5分ほど続き漸く落ち着いた。


聴き終えた俺は既にヘトヘトだった。



「結局何が言いたいんだよ」



新城に近付くなとでも言うか?



「そんな完璧な新城葵にこれ以上近付かないでもらおうか」



え、当たったよ



「君の様なだらしない人間が関わって良い人ではないんだよ」

「だったら、誰が新城に相応しい人間になるんだ?」

「それは勿論、僕の様な優秀な人間だよ」



俺は、田中が漫画やアニメの住人なのではないかと思う。


漫画やアニメに出てくる性格が悪く、その事を自覚しないで自分は他の人よりも秀でていると言う、簡単に言えば典型的な嫌われキャラを演じているのではないかと思うほど田中はその特徴と合致している。



「一応聞くけど何について田中は自分の事を優秀だって判断してるの?」

「勉強において僕は学年上位をキープし、ましてや僕は新城葵と同様にルックスだって其処らの男子より上だ。勿論君よりもだ」



確かに、一見クールなキャラでモテそうな容姿を田中はしている。


しかし、それを全て駄目にするレベルで性格が悪い。


そして引くほどの自信家だ。



「分かったな。優秀な人間の近くには優秀な人間としか付き合えない。例えるなら僕と新城さんのようにね」

「...............それで俺に新城に近くなと?」

「そうだ」

「それ無理だな」



俺は即答した。


それに田中は驚きの顔をする。



「な、何故だ!?」

「いや、逆に何であの気持ち悪い説明で俺が納得すると思うんだよ」

「き、気持ち悪いだと!!?」

「そもそもお前何様なんだよ。人の交友関係に口出せるほど偉いのか?偉くないよな?」



俺は自分で自覚する程口が悪い。


男女見境なしに遠慮を知らずに言う。



「新城には新城の望む交友関係があるんだよ。それをお前や他の人間が口を出すのはおかしいんだ。本人から言われたなら俺は今後一切新城に関わらないけどな。それよりもお前もう少し自分の性格直したほうが良いと思うよ?全部自分が上だと思ってんなら直せよ。そんなんだと新城に嫌われるぞ」

「......................」

「ん?お前まさかあんだけ人の事をだらしないとか言っときながら自分の事を言われると黙るのか?相手にそんだけ酷い事言うなら自分にもそれと同じレベルで返ってくるって分かってから発言しろよ。勉強出来るんだろ?だったら人とのコミュニケーションも出来るんだよな?」



俺は自然と話せていた。


そんな俺の喋りを田中は、まさか言い返されると思っていなかったのか硬直してしまった。



「はあ、言い終わったならもう帰っていいか?」

「あ、ああ」



動揺して全然話せなくなった田中を教室に残して俺は教室を出た。




























やり過ぎた。


俺は家に帰るまで田中に言い過ぎたと後悔する。






最後まで読んでいただきありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 決してやりすぎてない。 5分間、話を聴いてあげたのだから、普通、いやもっと言ってもいい。 …これで田中が感銘を受けて、「葵様と友達になりたいのでオレの悪いところどんどん言ってくれ、オレは反…
[良い点] 決してやりすぎでは無くもっと殺ったれ感が有りますね(≧∇≦)b次が楽しみです(≧∇≦)b
[一言] 田中は今まで無機物に一方的に自分から話すのが会話だと認識していたため、返答されると硬直してしまうのであった!!
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