プロローグ
前書き失礼いたします。色々あって書けなかったですが、これから更新は遅いですが執筆していきます。また、本作で使用している氏名を私が執筆している別作品でも氏名のみ兼用しています。人間性と内容は全く違います。紛らわしいと思いますが、愛着があるので使用しております。何卒ご了承くださいませ。
テレビやネットニュースを見るたびに、考える事がある。
「SNS上で知り合った相手に暴行を受けた。」
「LINEグループ内でのいじめが原因で自殺。」
「ネット上に個人情報を晒された。」
「バイト店員が食材をゴミ箱に入れていた。」
「店のホームページに辛辣なコメントをされた。」
最近では、事件やトラブルも段々と近未来的になって来た。新たにウイキペディアにも「バイトテロ」、「バカッター」、「炎上」等と言うインターネット犯罪の項目が更新された程だ。
年号が平成から令和になって間もない頃。この頃、文化は大いに発展していた。一昔前までは、赤電話だとかテレフォンカードだとかが、顔の見えない人間をつなぐ連絡ツールだった。ましてや調べ物がある時は、広辞苑の様な辞書を開くか市立図書館に行って書籍を閲覧するしかなかった。それが当たり前だった。段々と携帯電話だとか電子辞書だとか、近未来的な道具が生まれ、これら最新鋭の電化製品が人々の暮らしを支えていた。極端だが、言わば電化製品は我々を支える縁の下の力持ちであると言えよう。
だが近年、スマートフォンと言う更なる電化製品が生まれた。このスマートフォンは、スマートフォン一台で電話もメールも可能で、「ググれ」と言う単語が生まれたように、あらゆる調べ物が可能になった。同時に、ゲームだとか辞書だとか、果ては「この男性、貴女にピッタリですよ?」だとか「この女性、将来のパートナーにいかがでしょうか?」とでも言いたげに、将来の伴侶を世話するお見合いおばさんさながらのマッチングアプリ等、アプリケーションも充実しつつある。
こう言う物が生まれ、昔は電車や車の外の風景や、何気ない世間の変化を二つの眼でみていたものだった。しかし、昨今ではまるで取り憑かれたかの様に、暇さえあれば一心不乱にスマートフォンを眺め、スライドさせたりつんつん指で突いている。
中でも大流行りしているのは、インスタグラムやFacebook、Twitterと言った顔や身分をさらさなくてもコメントを送る事が出来るツールと言うか掲示板の存在だ。これさえあれば、遠方ぐんだりに足を運ばなくても、批判する相手に顔を晒さなくても言いたい事をずけずけ言う事が出来る。最近の人々は、良し悪し真偽問わずに言いたい事を言っている。しかし、新しい物が生まれれば新しい犯罪が生まれる者。インスタグラム内での度重なる誹謗中傷や批判が原因で、活動休止や最悪自殺に追い込まれた事例も存在する。
今回ここに記述する内容も、発展し過ぎた昨今が生み出した凄惨な事件と言っていいだろう。
ある日、動画を閲覧していると自然とコメント欄へと目が行った。動画配信者、俗に言うYouTuberの中でも特に名を挙げている「オカリナTV」に関する罵詈雑言と言うか批判のコメントだ。最近、このチャンネルは他の動画配信者の作成した動画を無許可で投稿する無断転載、サムネイル画像とまったく違う内容の動画を上げる「サムネ詐欺」に該当する行為をしたと言う事で炎上状態だった。まあ、内容的には面白いのだが、この動画配信者の活躍を認めたくないファンからすれば、これらのルール違反を犯してまでYouTuberとして幅を利かせていると言う事は、これ以上不快なことは無い。
オカリナTVに関するつながり動画からオカリナTVの悪行に関する動画に繋がり、そこに記載されていたURLから別のスレッドにジャンプした。そこの掲示板では、オカリナTVに関する声の聞こえない電脳世界での熱い討論会が繰り広げられていた。
「《オカリナTVの悪行に関するスレ》
700:名無しの書記2020年11月20日20:30:42
皆の衆、今日も良く集まってくれた。本日はオカリナTVの度重なるサムネ詐欺についてのスレを集めたい!よろしく頼む!!
701:名無しの書記2020年11月20日20:30:45
またやったのかよ、開き直りワロスワロスWWWWW
702:名無しの書記2020年11月20日20:31:00
こやつめ、凝りませぬなあ
703:名無しの書記2020年11月20日21:00:00
神聖なYouTubeの世界を汚しやがって
704:名無しの書記2020年11月20日21:00:10
>>>703いやいやいや○○○さんの動画をパクった事の方が罪が重いっしょ
705:名無しの書記2020年11月20日21:00:30
>>>704うむ、この前のは万死に値する行為だよ
706:名無しの書記2020年11月20日
おい、誰か特定できねーのか?
707:名無しの書記2020年11月20日21:03:00
いやいくら何でも無理っしょ?顔出ししてねーし。
708:名無しの書記2020年11月20日21:04:00
顔も見せずに好き放題とかくそ杉草wwwww
709:名無しの書記2020年11月20日21:05:30
>>>(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪、断固天罰求ム!!!
710:名無しの書記2020年11月20日21:05:55
>>>709それな!!
711:名無しの書記2020年11月20日21:10:00
おい、マジで誰か粛清しろよ!
712:名無しの書記2020年11月20日21:11:00
お前こそ人任せじゃんwwwww
713:名無しの書記2020年11月20日21:12:00
wwwwwwww
・・・・・・・。」
やれやれ、みんな暇なんだなあ。いろんな動画配信者がいるし、普通に黙ってみていれば良い物をこうやって文句を言い荒らすアンチが増えすぎて本当に困る。彼らの行動が、youtubeを汚していると気づかないのか。こっちも別に、この配信者が好きなわけではないが、ここまでされるとこのチャンネルの動画を閲覧するだけで悪事に加担している共犯者に思えて、罪悪感に苛まれる事がある。普通に動画を楽しみたいだけなんだが。
頬杖を突きながらパソコンに齧り付いていると、遊びに来た友達がピザの入ったケースを三つ、ストロングの数本入ったショッピングバッグをぶら下げて来た。
「おいこら!手伝え、重ってえんだよ!!」
「あー、わりーわりー。」
「ったく、飲みながらネトゲやろうって誘ったのはそっちじゃねえか。」
「だからごめんてば。」
「まあいいや、んで何見てんだ?」
「ん?オカリナTVに関するスレ。」
「なんだ、ようつべじゃなくてスレ見てんのか。」
「うん。ぼろっかす書かれてるぜ。」
と言いながら、差し出された限定品のストロングをプシュッと開けすすりながらもう一度画面に目を向けた。
「アンチの見方する訳じゃねーけどさ、今回のはやばかったよなあ。」
「サムネだけじゃなくて、中身も結構似てたな。」
「ああ、あれ完全に○○○さんの名作だったもんな。」
「ステ垢使って無断転載してたって、アンチに特定までされちまったしな。」
チーズをふんだんに使った新製品にピザのチーズと格闘しながら友達は、チラチラと画面に目を向けていた。
「良くアカウント凍結までいかないよな。」
「そろそろなんじゃね?」と、メロンの香りのするゲップをしながらタブに画面で動画と並行してスレを見ていると、新しいスレが投稿された事に気が付いた。
「おっ。」
「どした?」
「新しいスレが付いた。」
「どれどれ。」
今まで名前が無かったが、今回は名前があった。
「714:FIREMAN:2020年11月20日21:30:00
通報ありがとうございます。これから炎上しているオカリナTV配信者の元に赴いて消火活動を開始致します。」
とあった。
「何て読むんだこれ。」
「ファイアマン。」
「何それ?」
「消防士だとか、火消し役だとかの意味らしいよ。」
「早っ、もうググったのかよ。」
「すげーだろ。」
「ってかさあ、新しいアンチかな。」
「じゃね?」
「ダメだ腹減った、ビザ食お。」
と、一旦パソコンから目を離してチーズピザを食べ始めた。食べながらも、ファイヤーマンなる新しい書き込みに関して気になった。みんな名前を記載しないで“名無しの書記”と言う名でさんざん悪態ついていたと言うのに、よっぽどのアンチなんだな。
一枚目のピザを平らげ、次にピザの箱を開けてもう一度パソコンの画面を見ると無操作だった為か真っ暗になっていた。
ストロングを二本空け、酔っぱらいながらマウスを動かすと、さっきのファイヤーマンの投稿が更新されていた。
「715:FIREMAN:2020年11月20日22:00:00
火消し現場に到着いたしました。これより消火活動に入ります。宜しければ閲覧ください(`・ω・´)ゞ↓↓↓
http:youtube.com/xxxxxxxx」
「あれえ、URL付いてんぞ。」
「消火活動だってさ。」
「暇つぶしに見ようぜ?」
と、記載されていたURLにアクセスすると何もない倉庫と思わしき部屋の映像が映し出された。小学校だとか公民館にある様なお粗末なパイプ椅子に座らされ、手は後ろ手に、足はパイプ椅子に結束バンドを用いて縛られていた。
俯く顔の上部、目には目の手術をした患者の様に黄ばんだ包帯を巻きつけられていた。サラサラとした長い髪柄、グラマラスではないがぷっくりと膨らんだ胸とくびれた腰から縛られている人物は女性であると断定出来た。
「何これ。」
「釣りで下らない偽ホラー映画診せられてんじゃね?」
「それか拘束系のAVか?」
「お、いいねえ。」
と、顔を見合って笑い合っていると画面上から悲鳴が聞こえた。
「い、嫌っ!!ここは何処よ!!!何で縛られてるのよ!!??誰か!!誰か助けて!!!」
「わぁ、リアル。」
ストロングを含みながら見ると、更にもがきながら女性は言った。
「何なのよこれ!!こんな垢バン確定の配信に巻き込まないでよ!!」
そう言う女性の言葉に、男は察知して言った。
「おい、これ、オカリナじゃね?」
「まさか。」
「オカリナは女だって噂だし。」
と、思わず画面に見入っているとシルバーの消防服を身に纏い、これまた消防士がガス防止用に使用するマスクをかぶった、嘗て大ヒットした炭鉱夫の生き残りを描いたスプラッター映画に出てくる、つるはしを凶器とする殺人鬼を彷彿させるような性別不明の人物が現れて、引き続き実況を始めた。
「皆さんこんばんは、FIREMANです。今から、消火活動に入ります。」
「な、何こいつ?」
「怖くね?」
「お、ハリーじゃん。」
と話していると、更にオカリナと思わしき女性が大声を出した。
「何!?誰かいるの!?ここから出してよ!!離してよ!!」
「オカリナさんですか?」
「どうでも良いでしょ!!とにかく離してよ!!!」
と、オカリナが聞くと、FIREMANが目隠しを外した。
「貴女、炎上してますね?」
「は?関係ないでしょ!っていうかあんたは何?ストーカー?なんでもいいから離してよ!!」
「私は、職務を全うすべく消火活動をしなければならないのです。」
「訳の解らない事言わないでよ変態!!」
そうオカリナがじたばたともがきながら、ふと左に目をやると其処には赤いポリタンクがあった。そして、これからされる事を察した。
「な、何をする気・・・・。」
「消火活動です。」
と、上からドボドボと鼻腔を差すぬるぬるとしたオイルの様な液体が注がれていく。
「うえっ、苦っ。」
ツンと鼻腔を刺激する臭いとぬるぬるとした液体、そして「これは食べてはいけない」と口腔内が拒否するこれまでに味わった事のない気味の悪い感触と苦み。これらを繋ぎ合わせて解ったこの浴びせられた液体の正体・・・・、ガソリンだ。
全てを察したオカリナをよそに尚も注がれるガソリン・・・。
「嫌っ・・!!苦っ・・・!!止めっ・・!!」
注がれる液体を拒絶しながらも、全てを察したオカリナは大声を上げた。
「何するの!!止めて!!助けて!!!」
大声で命乞いの言葉を上げながら、注がれるガソリンを避けるかの様に首を振る中で聞こえて来るのは、カチンカチンと言うジッポライターの蓋を開け閉めする音だった。
「ちょっと・・・・!嘘でしょ!?辞めて!!助けて!!誰か助けて!!!」
と、全てを察したオカリナは来る宛てのない救助を呼びながら右往左往しながら拘束具を外そうとしたが外れそうもなかった。所詮は無駄な抵抗だった。この一見現実味の無い動画を見た少し異常な感情を持つ人間は僅かながらも欲求を満たされた事だろう。
そう思いながら、もう一つのタブに映されたスレを見ると掲示板はとてつもなく盛り上がっていた。
「《オカリナTVの悪行に関するスレ》
716:名無しの書記2020年11月20日22:30:45
おいおい!マジか?
717:名無しの書記2020年11月20日22:31:00
殺るの?殺るの?殺っちゃうの(*´艸`*)
718:名無しの書記2020年11月20日23:00:00
>>>717いやいや、釣りっしょw
719:名無しの書記2020年11月20日23:00:10
これも捨て垢でしょw
720:名無しの書記2020年11月20日23:00:30
>>>719御明察
721:名無しの書記2020年11月20日23:01:05
おい!いい加減にしろ!!オカT!!!」
722:名無しの書記2020年11月20日23:03:00
マジで炎上させようぜ!w
723:名無しの書記2020年11月20日23:04:00
>>>722それなwww
724:名無しの書記2020年11月20日23:05:30
特定班!出動要請!!
725:名無しの書記2020年11月20日23:05:55
>>>724そうだそうだwwやれやれwww(*´艸`*)
726:名無しの書記2020年11月20日23:10:00
ま、暇つぶしにはなるだろうよ
727:名無しの書記2020年11月20日23:11:00
殺れ殺れ~wwww」
と、まさに大荒れだった。
「おっとっと、新ネタか?」
「釣り動画乙乙。」
「懲りねーなー。」
「待ってました、落ちぶれオカT!!」
「楽しみにしておりマスタ!!」
「♪上手に焼けました~♪♪」
もう押すな押すなのお祭り状態だった。また最近往行している釣り動画かと思い見ていると友達がストロングの赤ら顔をすっかりと消し去った感じの肌艶でパソコンに見入っていた。
「辞めて!殺さないで!!辞めてよ!!話が違うわ!!解ったわよ!!!もうようつべ辞めるから助けて!!!」
椅子事倒れながらも、何とか結束バンドが解けないかともがきながら命乞いをしている時だった。FIREMANは地面に染み込んだガソリンに向かって火の付いたジッポライターを放り投げた。ボウっと勢いよく火が付き、まるでうねうねと地を這う蛇の様に日は目的地の方へ向かい、数秒のうちに火はオカリナの体に到達し、日は一気に業火へと進化しオカリナの体を包み込んだ。
「いやぁーーーーーーーー、ああああああああ!!熱いぃ!!消してぇ!!消してよぉ!!!!」
断末魔の悲鳴を上げながら灼熱地獄から逃れる為に四肢をジタバタと動かそうとするも、結束バンドで縛られており殆ど身動きが取れず、段々と体を焼かれて行くオカリナ。
結束バンドがバツンと溶けて外れた所で、業火を身に纏うオカリナはまるで踊っておるかの様にもがき苦しみながら動き回った所でその場に転がり、少しでも火を消さんと手をバタバタとしていた。
「あ・・・・が・・・・が・・・・。」
口腔内も焼かれたようで、オカリナも声が出せない状態になって行き、動きも鈍くなった。
女体の面影は殆ど無くなり、皮膚は殆ど焼けただれ黒くなり、ところどころ赤い部分が見え始めた所で動きが完全に止まった。するとFIREMANは隅に置いてあった消火器を手に取り、燃え盛るオカリナの炎にめがけて消火剤を噴射した。真っ白な消火剤を吹きかけられたオカリナの姿はまるで人型の木炭とも言わんばかりに見る影もないものになっていた。無論、オカリナは生きていない。焼け焦げた死体となっていた。
何ともリアルな惨劇を目の当たりにし、二人は吐き気がこみあげて行きせっかく味わったチーズピザも限定版ストロングもすべてその場に吐き散らかしてしまった。
その凄惨な姿に、掲示板の連中も目が覚めたようだった。
「727:名無しの書記2020年11月20日23:45:00
お、おい・・・・、マジっぽいぞ・・・。
728:名無しの書記2020年11月20日23:47:00
さっきのマジモンの犯行声明かよ。
729:名無しの書記2020年11月20日23:55:00
だ、誰かマジで通報しろよ・・・。」
これはネタでも何でもない、本物の殺人鬼による犯行の様子が投稿されたのだ。映画ならまだしも、これは現実。前代未聞の事である。
胃液の酸っぱい臭気に顔をしかめながら、口に付いた吐しゃ物の跡を拭きながらふと画面を見るとFIREMANから書き込みが更新されていた。
「730:FIREMAN:2020年11月21日00:00:00
消火完了しました。」