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勇者パーティにはピエロはいらない  作者: トラタロウ
あらくれサーカス団
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勇者新聞

 王都北西区にやってきた俺は、さっそくポスターの貼るための場所を探していた。


 「やっぱり、目立つところがいいよな」


 苦労して作ったポスターなのだから、多くの人に見てもらいたかった。

 となると、人が大勢いそうな大通りあたりに貼るのがいいなと考えた。


 「ただ、ここってあまり知らない場所なんだよなぁ」


 この王都ナザレには1年以上暮らしているが、ここ北西区にはほとんど足を踏み入れていなかった。

 なぜなら、この地区は富裕層が暮らす場所だからだ。

 貧民街である南西区で暮らす俺にとって、ここは無縁の場所よ。


 「あーこの辺りがいっかなぁ。それなりに人が歩いてるしな」


 道の両脇にお店が立ち並んでいる大通りに着いた俺は、ポスターを貼るのに適した場所を探した。


 辺りを見回していると、大通りの中央に気になる立て看板を見つけた。

 その立て看板には勇者新聞と書かれた紙が貼ってあった。


 「勇者新聞か‥‥‥」


 勇者新聞。

 勇者の日常や状況、成し遂げた事を記事にした新聞だ。

 勇者班の記者達が、命がけで勇者パーティの後ろを追って事細やかに彼らの勇姿を記事にしているのだ。

 

 「それでなになに。今あいつはどこまで行ったのかな」


 俺の親友は今どこにいるのかなと思い、勇者新聞を見た。





 勇者パーティ、アレンシア王国でも大活躍。


 アレンシア王国の王都アレンシアでは、毎晩バッドフルと呼ばれる蝙蝠の魔物に度々襲われて被害を出していました。


 そんな中、勇者ローレンス、神官メシア、武道家ミリカの勇者パーティが王都アレンシアに到着。


 アレンシア王国のラグナ王はすぐ勇者パーティを王宮に招待し、バッドフルの討伐を依頼しました。


 ラグナ王の依頼に勇者は頷き、すぐにバッドフル討伐のための対策をたてはじめました。


 バッドフルという魔物は危険を察知すると、すぐに空へ逃げるため、何らかの対策をしておかないと逃げられる可能性があったのです。


 勇者はバッドフルのこれまでの傾向を調べ、罠でもって対処することに決めました。


 そして夜、罠の設置を終えた勇者パーティは、落ち着いた様子で空を見上げてました。

 勇者班の記者こと私、コーディックスも空を見上げてました。ただ、私の場合はいつバッドフルが現れるかと戦々恐々としてましたが‥‥‥。


 待つこと数刻。バッドフルが現れて王都アレンシアの市街地を襲撃。勇者パーティは設置した罠の近くで待機し、罠にかかるのその時を待ちました。


 被害が増えて行く中、それでもじっと我慢する勇者パーティ。まさに忍耐を試される状況でした。

 

 そして、ついにバッドフルが罠にかかり、空を飛ぶための翼を使えなくしました。

 罠にかかったバッドフルを確認した勇者パーティは早速戦闘を開始した。そして激しく暴れるバッドフルとの激戦に勝利しました。


 これを喜んだラグナ王は、勇者パーティを王宮にて盛大にもてなしました。



 *記者コーディックスが勇者達とバッドフルの戦闘の余波で大怪我を負ったため、次回からは記者レオナルディが引継ぎます。皆さまどうぞ宜しくお願い致します。 

 

 



 「へぇ、がんばってるじゃん」


 バッドフルは冒険者組合でも討伐難易度が非常に高いモンスターと聞いたことがある。

 国でさえ対処が出来ずに困ってる強力な魔物を難なく退治しているなんて、さすが勇者なんだなぁと思った。


 おっ、そうだ。この看板の下にでもポスターを貼ってみようか。

 この勇者新聞を見るについでに、見てくれるかもしれない。


 この立て看板、実は国が管理しているもので、勇者新聞がそこに貼られているのも、ちゃんと国から許可を得て貼られているのだけど、そのことを知らない俺は、何知らぬ顔でポスターをペタペタと貼っていった。


 「これで、よしっと」  


 ポンポンと手を叩き、少し離れてから見た。


 よし、目立つな!!


 周りで歩いている人も、ちゃんとポスターの方を見ている。

 ついでに、なぜか俺をも見ている。

 

 やっぱりあれかな。ピエロの服を着ているから目立つのかな。

 

 通りを歩く人達は、さすが裕福な人達と言えるだろうか、清潔できっちりとした服装をしている。

 だが俺だけは、赤と白の縦じまといった、ちょっとばかし際立った服装をしている。


 「ふっふ、目立つのはいいことさ」


 俺のような芸人は目立つのが仕事だ。

 目立てばめだつほど、人気に者になるし、仕事も増えるのだ。


 「さぁてと」


 やることを終えた俺は空を眺めた。

 太陽が地平線の先へと落ちていき、空全体を赤く染め上げていた。

 そしてそれが少しずつ、暗い闇に塗りつぶされて夜空へと変わっていった。


 「もう夜か‥‥‥眠くなってきたし帰ろう」


 辺りが暗くなってきたので、俺はあらくれ劇場へと帰ろうとした。


 「おや?」


 王都南西区の方向へと歩き出していると、貧民街から煙が上っているのが見えた。

 いや、それだけではない。あの辺り一帯だけが不思議と明るかった。


 なんだか胸騒ぎがした。

 なんとなくだが‥‥‥嫌な予感がした。


 俺は急いで走り出した。



 


 「はぁはぁはぁはぁ」


 王都南西区に戻ってきた俺はさらに不安が高まり、気づけば全速力で走っていた。

 向かってる場所はもちろん、あらくれサーカス団皆の家であるあらくれ劇場だ。


 「はぁはぁはぁはぁ」

 

 近くまで来たけど、ここからだとまだ火元はわからない。

 だけど、あらくれ劇場がある辺りで火柱があがっているのがわかった。


 さすがに、あらくれ劇場が燃えているわけではないと思うけど、火災が近くで発生してるなら燃え移る可能性がある。


 そ、それは困るぞ!! 帰る家がなくなっちまうぞ!!


 焦りながら走ってると、慌てた人達の声が聞こえてきた。


 「おいおい! なんだありゃ。ものすごい燃えてるぞ」

 「どこが、燃えてるんだ!」

 「あらくれ劇場っていう、ちんけなサーカス団がいる場所だ」

 

 ちょっと、嘘だろ!! 


 聞こえてきた話し声に驚愕した。

 近くで燃えてるとは思っていたけど‥‥‥そうではなかった。

 あらくれ劇場が燃えているのだという。


 「おいおい、そんな馬鹿な」


 俺は声をあげながら全力で走って走って走った。

 そして‥‥‥着いた。


 燃え盛る火に包まれた、あらくれ劇場に‥‥‥。


 「うぉぉ‥‥‥なんじゃこりゃ!!!」


 俺は唖然とした顔をしながら絶叫した。


 あらくれ劇場の周りでは「水だ水!!」「いかん、このままだと俺の家も燃え移ってるぞ!!」「なんかじいさんがあの建物に入っていたの見たぞ!」「なにぃ!」そう言った声で大騒ぎになっていたが、俺は絶叫したまま固まっていた。






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