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勇者パーティにはピエロはいらない  作者: トラタロウ
あらくれサーカス団
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あらくれサーカス団

 「ふぁーあ」


 欠伸をしながらベッドから起きあがった俺は、両手をぐっと伸ばしながら窓の外を見た。

 雲一つない青空、まさに晴れやかなる朝、気持ちの良い朝だ。

 そんな空を眺めていると窓辺にいる小鳥達がチュンチュンと鳴きながら、窓を叩いた。


 「あぁ、餌だったな」


 パン屑が入ったコップを持って、窓辺に置くと小鳥達一斉にコップに集まり、パン屑を食べていく。


 「沢山食えよ~‥‥‥さてと、着替えるか」


 小鳥達から視線を外して、もう一度体を伸ばして、部屋の中にある縦長の鏡で自分の姿を見た。そこには、寝ぐせのついたボサボサの茶髪の青年が鏡に映し出されていた。

 

 「すげぇ寝ぐせだな」


 自分の姿を見て驚き、手に唾をつけて寝ぐせを直すように髪を押さえつける。

 そうしていると、突然部屋のドアがバンっと開いた。


 「おう、おはよう。我が息子よ」


 親父が元気よく部屋に入ってきた。


 「おう、おはよう。我が親父よ」


 部屋に入ってきた親父はなぜかパンツ一枚の半裸姿だった。

 フンフンーと鼻歌いながら、鏡の前に立って色んなポーズをしている。


 「よしよし、今日の俺は、一段とイイ男だなっ」


 俺から見る親父はどちらかというと、カッコいい顔とはいえない。

 どちらかといえば船乗りにいそうな茶髪の厳つい顔だ。銛とハチマキをすれば、完全な海の男といった姿だ。


 「そういえば、夜帰ってこなかったけど、いったいどこ行ってたんだ?」


 この部屋では俺と親父が寝泊まりしている。

 昨日の夜、俺が寝る時には親父のベッドは空だった。

 そして目が覚めた後もベッドは空だった。


 「ムフ、我が息子よ。そう言ったことを聞くのはヤボってもんだぜ」

 「あ、そう」 

 

 どうせ女遊びあたりだろうな‥‥‥。


 呆れた俺は、赤と白の縦縞が入った派手な服、ピエロの服に着替えた。


 「ほら、親父行くぞ。朝に会議するって言ってたろ」

 「お前は先行ってろ、俺はちょいと軽く運動してからなっ」


 フンフンと鼻息を荒立てせながら鏡の前でポージングをしている親父に、軽く返事をして部屋から出て行った。




 

 俺の住んでいる建物は3階建ての木造建築、これまたちょっとした大きな建物なる。

 そしてこの建物の名前はあらくれ劇場、住居と仕事場を兼ねた場所だ。

 1階は舞台と観客席、2階は控え室と座長室と会議室、3階は俺などが暮らす団員室だ。


 俺は階段で2階に降りて会議室へと入った。

 そこにはすでに何人かの団員が席に座り、丸いテーブルに御飯を置いてもくもくと食べていた。


 「おや、ロジック君おはようございます」

 「おはようです、トム座長」


 リスの様に頬袋を膨らせてご飯を食べているトム座長は俺を見て微笑んだ。


 トム座長はあらくれサーカス団を率いるリーダーで、ユーモアを兼ね備えた紳士。顔は、真ん丸顔に白くて立派な髭、常にシルクハットと黒いスーツのような服を着ている。


 ーー モノポリー ーー


 「はっ!?」


 今、星の囁きが聞こえた。


 星の囁きは、頭の中に直接声が降りてくる現象だ。

 その声の主は星の神だと言われており、人に何かを教えるように囁きかけてくるのだが、その内容はまったく意味が分からない事が多い。


 さっき降りてきた言葉はモノポリーという言葉だけど。‥‥‥うん、まったく意味が分からん。 


 「あら、おはようね」

 「よぉ、おはようさん」


 トム座長のとなりで御飯を食べている団員、ダンサーの姉弟のティティとアレクが同時に手を振った。

 砂漠の民と呼ばれる2人は双子で、その姿は黒髪と褐色肌、太めの眉毛と赤い瞳といった特徴的な姿をしている。


 「おはよう。ティティさんとアレクさん」


 俺は朝の挨拶をしてテーブルの椅子に座った。

 座った直後、会議室のバンっと勢いよくドアが開いた。 


 「ふぅ~、おはようさん!」


 調教師のフレディが入ってきた。

 黒髪と髭がボサボサで、すごく毛深くて熊のような大男。

 風呂がまったく入らないので、少々匂いがきつい存在。


 「ういっす。おはよ」

 「うっすうす。おはよさん」


 フレディの後ろから、曲芸師のベルニ-二とバルタがリズムにのって体を揺らして入ってきた。


 ベルニーニとバルタもまた双子だ。

 この2人の兄弟はそっくりな顔をしている。金髪モヒカンの髪型も同じだ。

 それなりの付き合いだが、どっちがベルニーニでバルタか分からなくなることがある。


 「ふむふむ、あとはバレルクが来れば全員集まるね」 

 「おう、トム座長、俺を呼んだかい?」


 部屋のドアを開けて、サイドチェストのポーズをして入ってきた。


 「さてさて、皆さん方おはようだぜぃ!」


 頬を持ち上げて、キランと歯を光らせて挨拶をした。

 それから鼻歌交じりに両腕大きく振りながら自分の席に座った。


 「よしよし、全員集まったね。それではさっそく始めようか」


 トム座長はテーブルの下から丸まった紙をテーブルの上に置いて広げた。


 「それでは、あらくれサーカス団の会議を始めるよ」

 「おう!」


 俺を含める総勢8人のあらくれサーカス団は、大きな声を出した。






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