6.黒石と契約師(上)
翌朝。
机の上に黒石をおいて、ネットや本などで該当しそうなものを手当たり次第に確認してピックアップしておく。午後に届くであろう鑑定のスクロールを待つ間の暇潰しだ。
候補は5つあがった。
1.高純度の魔鉄
2.精霊石
3.悪魔石
4.ダンジョン産の新宝石
5.魔物の卵
この中で可能性が高いのは1、4、5だと思われる。
すでに他のGランクダンジョンのボーナス部屋報酬として、データが掲載されているからだ。特に5の魔物の卵は、光沢がない、単色、サイズは拳程度と特徴がほぼ一致しているため可能性が高い。
しかし魔物の卵だとすると出てくるのは、手にいれたダンジョンの魔物となるのでスライムになる。
契約師は職業レベルに応じて最大で10までの契約を結ぶことができるのたが、現在俺は職業レベル1なので1つの枠しかない。そこを産まれてくるスライムに使うと今後きついのではなかろうか。
「うーん。スライムじゃきついよなー今後。」
そんなこんなで昼が過ぎ、協会を通して購入したスクロールが届いた。
スクロールを使用して鑑定を習得し、早速黒石を鑑定する。
<魔物の卵>
「やっぱり卵か~。」
孵化させるのか、売却か非常に悩ましい。卵から産まれてくる魔物は他の個体にはない特殊技能の所持率が高いといわれている。入隊試験まではあと4年あるのだから急いで強くなる必要もないが、できるだけ早く一度目の職業昇華を経ておきたいと考えてしまう。しかし、ボーナス部屋で手に入れた卵から産まれるのだから何か特別な技能を持っているかもしれないし、今後入手できる確率は非常に低い。
「売らずに持っておいて、レベルが上がってから考えよう。」
と結論を出して、夕方からダンジョン探索に出る準備を始める。
選んだダンジョンはランクG『大猪の山』。
大きな猪のような魔物が出現する、珍しいフィールド型ダンジョンだ。
山に入るわけだから装備もそれ相応のものにしないといけない。
準備は念入りに、そしてできるだけコンパクトにまとめる必要がある。
何だかんだと準備を終わらせ、ダンジョンへ向かう。
しばらくしてダンジョンにつくと、情報収集につとめる。
フィールド型のダンジョンはかなり広大で狩場と呼ばれる魔物の頻出地点の変化が起こるため、常に情報は新鮮なものを手にいれなければ効率のよい探索ができないためだ。
初心者がこれを怠って、全く成果を得られずに帰ってくることもよくあることらしい。
今回得られた情報は5階層と8階層に大規模な狩場が出現していること、最終階層の10階でボスが普段より広い範囲で徘徊していることだ。
準備運動をしっかりとこなし、不備がないか確認したあとダンジョンに潜る。
ダンジョンの入り口を潜ると、そこには草原と森林が広がっていた。
はじめて生で見るフィールドダンジョンに心が踊る。
上を見渡すと二つの大きな太陽のような光源、草木は青々と繁り、風がふわりと吹く。
「これが、フィールドダンジョンか………。」
その景色に圧倒される。足元の草を踏みしめながらゆっくりと動き出す。今回は、踏破ではなくフィールドダンジョンを経験することが目的なので一つ一つ丁寧に探索を進めていく。目標としては5階層の狩場で数体倒すことだ。