4.幼馴染み≠ヒロイン
翌日。
もうそろそろ昼食かな、となるような時間にインターホンが鳴る。
どうやら来たみたいだ。
ガチャ
「よっ!久しぶり。」
「あぁ、ほんと久々だな真昼。」
黒のキャップに、白のパーカーとジーパンというラフな格好で訪ねてきたのは、吉野真昼。
大きなクリッとした目に、色素の薄い肌、後ろで束ねた艶のある黒髪、スラッとした体つき。相変わらず見た目はずば抜けて綺麗だな。
男だけど。
「おー!来てすぐであれだけど、昼飯食いに行かない?彰良もまだ食ってないだろ?」
「そうだな。どこ行く?俺は寿司食いたいんだけど。」
「あー、寿司いいね!そうしようぜ。近くだとどの辺にあんの?」
「歩いて10分ちょいくらいかな。早速行こうぜ。」
「おっけー!」
寿司屋で昼飯を食った俺たちは、再び俺の家に戻ってきた。
お茶を飲みつつ、探索者資格取得後の様子をお互いに話す。
「そういやお前は向こうの初心者用のダンジョンに潜ったんだっけ?」
「そうだよ。牙鼬の森ってとこ。初めての殺生は結構精神にきたな。」
「やっぱりそうだよなー。俺は夜飯食えなかったわ。」
「こっちは親に無理矢理食わされたけどな、吐きそうになった。」
「そりゃ、御愁傷様。親のギルドは最近どうなんだ?」
「まぁ、ぼちぼちだな。所属人員も増えてきたしギルドとしても知名度は上がってるみたいだよ。」
真昼の両親は、探索者を束ねて民間の依頼をこなすギルドと呼ばれるものを経営している。様々な種類のギルドがあるなかでも、特に依頼の多い食材に関するもののみを請け負う食品ギルドと呼ばれるものだ。
ダンジョン内の魔物は体内の魔石を砕くことで消滅するが、魔石をダンジョン内部で砕かずに死体と共に持ち帰り解体することで食肉とすることが出来る。その際魔石はただの石ころになる。
通説ではダンジョン内部で魔石を砕くことで、経験値や経験点等と言われる物が蓄積していき一定の壁を越えることでレベルの昇華が起こると言われている。外部ではそれは起こらないが、唯一の例外として生きたままダンジョンから溢れた魔物を倒し魔石を砕くと死体の消滅と経験値の蓄積が起こるらしい。
そのため、ダンジョン出現初期~中期と呼ばれる4~5年の間は食品ギルドは存在が少なく規模も小さかった。しかし必ず利益が出ると踏んだ人々は粘り強く活動していた。そして現在食品ギルドは、攻略ギルド、生産ギルドとならんで三大ギルドの1つとなっている。
「鹿児島県内だと3指には入ると思うよ。」
「魔境地帯で3指ってヤバイな。」
「鑑定とかってもう取った?」
「いや、まだだな。もうそろそろ届くだろうから取り終わったらまた潜ろうかなって思ってる。」
「俺も向こうに帰ったらまた潜らないとだ。そういや職業なんだった?」
「俺は、契約師だった。ちなみに武器は手甲と小刀が今の手持ちかな。お前は?」
「へぇー、俺は狩人だったよ。出てきたのはクロスボウとゴーグルだった。」
「狩人か!よかったじゃん。家の仕事手伝いやすくなるし。」
「親も喜んでたよ。俺もほっとした。」
しばらく話し込んで夜になると、真昼は最終の新幹線に乗るらしく帰っていった。
適当に作ったハムカツと玉ねぎのフライを夜飯に取りながら、スマホをいじってゲームやネット小説などを読んでいると、ランキングに載ってる作品で『幼馴染みと恋しよっ!』なんてのを見つけた。
「幼馴染み=ヒロインとか、アニメの世界の産物だろ!都合よく女の子の幼馴染みがいるわけあるか~!」
何て言いながら、内心羨ましく思い結局全部読んでふて寝した。