エピローグ ハルカと里桜
――そして、未済戦で最も活躍した剣花里桜はと言えば。
「ハルカさん、お金貸して下さいっ! またマスカの残高が尽きました!」
「え、ええっ!? 今月だけで三度目じゃない!? 四月末に支給されたコインは!?」
「それはもう、食費に全部使い切ってしまったので!」
「くっ……君は大食漢ではないけど、結構グルメだからなあ……漫画も技の参考になっているみたいだし、必要経費か……」
『英雄の腰巾着』と名高いハルカと一緒に成績下位をうろつき、貧乏生活を送っていた。ハルカの呼び出した虚ろな星乙女はカメラで捉える事が出来ず、映像を見ていた生徒たちから、『後ろに控えていた電池君』と認識されていたようだ。里桜はその事に憤慨したが、ハルカは特に気にせず毎日を過ごしている。むしろ、お金が無い事の方が深刻だった。
貧乏の理由として、彼女の放つ『異彩』のコストパフォーマンスの悪さが挙げられる。優秀な成績を収める為に高位の相手と模擬戦闘をするのにも、価値の高い研究生物を討伐するのにも、良質な装備が幾本も必要だ。高い頻度でその装備を失っている事も痛い。
そして、最も問題なのが、彼女たちが戦いに臨んでも勝利出来る事の方が圧倒的に少ない点だろう。敗北の度に私財を失う戦闘で、連敗するような生活が今もなお続いている。
過去の勝利に誇りを抱かない、控えめな立ち振る舞いも相まって――あの勇猛な姿は画面越しに見た夢だったのかもしれない――そう、冗談半分に囁かれる事も多い程だ。
それでも『劣等種』たちは、彼らに尊敬と感謝の念を抱き続けている。学生生活ですべき事、楽しむべき事を教えてくれた『地表で輝く星たち(インフェリア・スターズ)』に。




