地に堕ちた、星の輝き⑤
―― ★ ――
「……言いそびれちゃったわね。次に会うのは、集中医療センターだって」
第四街区の高層ビル内。魔谷竜子は、エレベーターの中で肩を竦めた。
「……『守護暴走』は、自分の身体を焼き尽くすまで止まらない、か……」
運び込まれた集中医療センターで、耳にタコが出来る程に聞いた言葉を思い出す。
ただ、それは真実ではなかった――真実に辿り着く前の仮説に過ぎなかったのだ。
『守護暴走』を発動している最中は外殻の制御が出来ず、使用者の意識も失われる。暴れ回る身体の内側で、『細胞電子』の膜に守られ、眠りに就くような感覚だ。
その膜が失われ、自身の身体を限界まで傷付ける事で発動を止められる。
中庭で未済に対抗しようとした時も例外ではなかった。しかし、『異彩』を放っている最中だと言うのに、その意識が突然に叩き起こされた――目にも止まらぬ金色の閃光が、身を包んでいた闇を『斬り』裂いた気がしたのだ。
「……『細胞電子』の残りは、半分ぐらいかしら……」
全身から放電をして確かめる。里桜に削がれた外殻の『細胞電子』量は、相当なものだったようだ。
「……ま、でも、破壊力だけならそれなりに持つわよね……?」
ポケットに入れていた、蒼い色のベルトを四肢に締め付ける。少女が再び放電をすると、放出した粒子がベルトに引き寄せられ、『細胞電子』が皮膚のほとんどを覆わなかった。
「これで、無駄な電気は使わない。使うのは初めてだから……いつまで持つか、運次第ね」
竜子は、自分の力を頼りにしてくれた仲間たちの為に、自身の身体を荒れ狂う電気の中に投じる覚悟を決めた。
――その『細胞電子』の全てを、守れなかった花たちの仇にぶつける為に。
エレベーター内のスピーカーから、時間外れのチャイムが鳴り響く。
『えー、三年生の未済さんに模擬戦闘を挑みます!! 一時間後に、第四街区の……どこでしたっけ? ああ、そうそう、高層ビルエリアに来て下さい! あと、その様子を学園を動画で中継しますので、皆さん見て下さいねー! 多分むっちゃ面白いですよ!』
「……あの子、ホントにすごいわね……怖いものとかないのかしら……?」
途切れた音声に向かってそう呟きながら――自然と零れた笑みに、自分で驚く。
友達と呼べるような人間は何人か居たけれど、いつ傷付けてしまうか分からなくて、自然と距離を取ってしまっていた。
でも、出会ったばかりの人間に対して力を貸してくれるような物好きたちになら、そこまで気を遣わなくてもいいのかもしれない。
「……なんて、流石に身勝手かしら……でも、その分の働きはしっかりするからね!」
入学して、三年目。ようやく見つけた明るい未来の気配に、竜子の胸が躍っていた。




