優秀種④
―― ★ ――
「……あの一年共……」
上空からサステナ・カレッジの様子を一望していた少年が歯軋りをした。
草原区域で放出された、過剰な『細胞電子』。その気配を察知した少年は、気まぐれに発生源を観察――入学したばかりの新入生が発した『劣化の光』だった事を知った。
少年は、高等部内でも有名な和石癒羽の診療所を真上から見下ろしている。そこから出て来た、金髪の女子を背負う黒髪の男子。その二人の姿に、ハッキリとした嫌悪を抱く。
――それなりに大きな力の気配だ。そう気を引かれたのは、間違いなくあのバカそうな二人が――ただの『劣等種』たちが発した『細胞電子』だったのだ。
「……生意気なんだよ、ホントにさあ」
その事実が、気に入らない。少年は握った拳に力を込める。
――その瞬間、大気が震えた。空気が軋んで、耳障りな音を不気味に響かせる。
「……『劣等種』が、なに希望なんて持っちゃってるんだって話だよねえ」
少年は、口元を歪ませる。その身体から『白色』の雷光を発して、夜空を明滅させた。
『蒼い』輝きならば、少年が見下ろす都市の至る部分で見る事が出来る。『劣化因子』を凝集し、安定化させた物質――マスメタルは、建物や装備品などに利用されているからだ。
ただしそれは、物品に限った話ではなく――。
「劣化しているお前たちは、そこら辺にある『モノ』らしくしていれば良いんだよ!!」
――自身の揺るがない立ち位置から、都市全体を見下し、嘲笑う。
「この『優秀種』――未済に、踏みにじられるだけの存在なんだからさあ!」
未済は夜空に笑声を反響させ、『玩具』を使った遊びを心底楽しそうに考える。
「……そうだ……玩具は玩具らしく、遊んであげないとだよねえ……!」
純粋で、無垢な声が嗜虐を奏でる。紛い物の天井に覆われた都市で、声が映された星空に弾んでいた。