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事情を聴ける様だ

私は今、現世の喧噪から離れ、山奥にある寺に住み込ませてもらっている。座禅を組み、精神を統一を図る。家にいる時も暇さえあれば座禅を組む様にしている。


「おい、千幸子(ちゆこ)。お前にお客さんだ」

 と座禅を組んでいる途中で伯父さんが声を掛けてきた。


「お客? マスコミなら何時もの様に帰してよ」

「いや。犯人逮捕に協力してくれた学生さん達だ」

「……会長達が?」

 帆見さんの事件後は寺に籠っていたから彼等と会っていない。ただ、お寺に関係者の人達が事件当初毎日の様に来ていたので帆見さんのその後については知っていた。




 結局帆見さんはあの後警察に逮捕された。

 未成年の為そう罪は重くない筈だったが、余りにもやり方がえげつない事とお家がソコソコ有名な会社だったのでマスコミやネットはそれはもう大騒ぎだ。


 如何やら娘に甘かった帆見夫婦は、時には権力を濫用して下請けを脅して私の虐めに加担したり、ある時はお金を使って少々薄暗い事をやっている人達をお金で雇ったりと『親ばか』と言う言葉で片付けられない様な事をしていた。


 元々この夫婦……正確には父親は先代の隠し子で、元々の跡取りだった異母弟から社長の椅子を奪い取ったそうだ。

 まぁこの異母弟も若い頃はドラ息子みたいな感じで、異母兄が社長になる事に当初は社員全員が賛成した。

  ……()()()


 父親は優秀だったが、何処か独善的で下請けにかなりの無理難題を言い渡していた。下請けは何とかその無理難題を解決していたが、最近では如何にもならず依頼を断る会社も出たが、父親は一度断った会社を直ぐに契約解除したのだ。祖父の代からお世話になっている会社でもだ。

 母親(元々は異母弟の婚約者だったが、彼が破棄した直後に現夫と付き合う)は自分が信頼する人間ばかり厚遇して他の人間、特に自分と反対意見を持っている人間に対しては徹底的に排除していた。お陰で彼女の周りにはイエスマンしか居らず、偏った意見・知識しか持っていなかった。


 しかも母親は一人娘をかなり溺愛しており、娘の願い事なら何でも叶えた。例えを言うなら娘をピアノのコンクールに優勝させる為に、審査員に賄賂を贈ったり他の参加者の演奏を妨害した(最悪再起不能になる寸前だった)りして優勝させた。


 一方放逐された異母弟はと言うと、金も権力も奪われた後それでも彼を見捨てなかった友人達と恋人(庶民出で現在の奥様)が助けながら、傷物等の訳アリ高級ブランドを格安で売る通販アプリを作成した途端大ヒット。今では実家の会社よりも名前が知られる様になった。

 そもそも彼が馬鹿息子になっていたのは、政略結婚した母親が異母兄と何時も競争させ少しでも彼に負ければ癇癪を起す事と周りが優秀な異母兄と比べられたせいでひん曲がってしまったのが原因だった。余談であるが特に異母兄と比べ、あからさまに彼を馬鹿にしていたのは元婚約者であった。





 話が逸れたが、彼は追い出された事に関しては自分の自業自得だと怒っていないが。


『自分が優秀だからと俺を追い出した癖に何業績悪化させてんだよ! と言うか会社内の環境や下請け会社の関係がブラックとかどう言う訳だよ!! オッサン達(会社の幹部達の事)は何で一言も俺に相談してくれないんだよ!!!! 追い出されても俺はこの会社の事を一度も恨んだ事ねぇよ!!!!!!』


 とキレながら問題解決に走り回ったお陰で、会社を異母弟が買収する形で何とか解決出来たそうだ。 




 そんな事を思い出している内に会長達がいる部屋に着いた。

「よぉ満野。暇そうだな」

「ええ。誰かさん達のお陰でマスコミの姿がたった二日で見えなくなりましたし、平穏其の物ですよ」

 事件の当事者として山奥にあると言うのに相当数のマスコミ達が集まっていた。それが二日後には元の静かな境内に戻っていた。偶に一人二人程度には来るが毎日来る事はない。ある人によれば手を廻してくれたのは会長達の実家が色々圧力を掛けてマスコミを大人しくしてくれていたのだ。


「会長達の方どうでしたか? 私と違って自ら矢面に立ってテレビに出ていたそうじゃあないですか?」

「まぁ私達は貴女とは違って御曹司ですから、それなりに世間やマスコミへの対処には心得がありましたからね。一般人の貴女は大人しく弁護士経由で文章を出してれば良いのです」

 冷たい事を言うが副会長の言う事は殆ど正しい。テレビを出ている会長達はそこらにいる政治家達よりも正々堂々と毅然とした態度だった。(其のお陰で世間は会長達を好意的に見ている)




「単刀直入に聞きますが。会長達は帆見さんが言っていた『愛しい人』の生まれ変わりですか?」

「「「「生まれ変わりは本当だが(だけど)(ですけど)『愛しい人』ではない(じゃあない)(ではありません)!」」」」

 即答だった。


因みに帆見さんの両親について当初は書く予定はなかったのですが、いつの間にか書いていました。


母親は逆転した悪役令嬢だが性格がガチの悪役な性格だった。父親はワンマンで弱者の気持ちが分からない経営者。二人共転生者ではない。


異母弟と結婚した当時の恋人は玉の輿目当てだったけど、虐めを受けたみたいなテンプレ転生ヒロインの様な嘘はついていない。

一気に一文無しになった異母弟を見捨てない程度には彼の事を本当に愛していた。

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