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会長の前世

「俺はとある腐敗した王国の公爵令嬢として産まれた。

 もう王族も貴族も腐りに腐っていて、まともな人間は理由をつけて他の国に亡命していた。俺の家族もその流れに乗ろうとしたがそうはいかなかった。

 何故ならあの屑が俺を婚約者に選んだからだ。


 あの屑は俺の事を『初恋の人』と言うが、正直言って俺は奴が嫌いだ。憎んでいると言っても良い。

 何故ならあの屑は俺の婚約者になる筈だった三人の男達を()()()()からだ。


 一人目は俺が五歳の頃に。幼い子供が一人では来られない場所で水死体となっていた。俺の幼馴染で、一緒に野原を走り回る程仲が良かった。


 二人目は俺が八歳の頃に。十二年間風邪一つひかない事が自慢だった従兄弟が、俺と婚約成立した日の朝に心臓麻痺で冷たくなっていた。


 三人目は俺が十歳の頃に。剣の才能があった隣国の騎士だった婚約者が、滅多刺しになった時に自分の結婚は諦めたが、その時あの屑の方から婚約の打診が来た。


 俺の父方の祖母が先代の国王の妹で、国の決まりで『三親等に王族が嫁いだ・若しくは婿に入った家は王族と結婚してはならない』と決まっている。貴族と王族とのパワーバランスを考えて決められた法律を、法律を作った王族が破ったのだぞ?

 互いが愛し合っていればまだマシだったかもしれないが、俺はあの屑に愛情なんて一欠片もないし、婚約したのもこれ以上俺が愛した人を殺されない為に、半ば脅された形でなった様なものだ。


 家族や使用人、親しい人達を国外に逃がす事を条件にあの屑の婚約者になってやった。無論一度たりともあの屑に肌を許した事はない。あの屑に犯される位なら命を絶った方がマシだ。

 まぁ、あの屑は俺とヤレないと分かると直ぐに愛妾を作りまくっていたがな。と言うかお気に入りの女を見つけた途端、その女が『初恋の人』で俺は『無理やり婚約者の座に居座った悪女』と言う風になっていた。

 それを聞いた時はあの屑と刺し違えてもぶっ殺そうかと思ったぜ。お陰で俺の待遇は王太子の婚約者なのに徐々に悪くなっていった。



 あの屑を殺そうと決心した時にヴィヴィアが俺の目の前に現れた。

 先に言っておくが俺の母方の祖母は隣国の王女だった。家族達もその縁を伝って隣国へ逃げていった。


 ヴィヴィアはその国からやって来た大使だった。ヴィヴィアは大勢の人間の目の前であの屑と、王族を糾弾した。どうやら俺の侍女だけではなく城に何人もスパイを紛れ込ませたみたいだ。スパイの中には上層部に近い所まで入り込んでいた者もいたらしい。お陰でザクザクとあの屑達の悪事の証拠が出て来たよ。


 隣国の血縁者である俺に対する冷遇、そして最後の婚約者だった隣国の騎士様、実は彼は隣国の騎士団長の御子息でな。彼を殺した実行犯達の捕縛と主犯の名前が記入された暗殺命令の書類。

 その書類には一人目と二人目の婚約者達も暗殺した事も書かれていた事が暴露された。


 そして二人目の婚約者だった俺の従兄弟も隣国の王族の血縁者だ。その血縁者を殺すという事は宣戦布告も同然、知らなかったでは済まされない事だ。

 ……と言うか息子が勝手に暗殺者を雇って、王族に連なる一族の婚約者を殺していた事を本気で知らなかった時点で無能過ぎる。彼のギロチンによって露と消えたフランスの国王も評価されている所があったがあの王にはなかったな。


 ヴィヴィアは宣戦布告を宣言し、俺を連れて隣国へと連れ帰ろうとした。

 流石にあの屑は俺を『自分の婚約者だ、勝手に連れ帰る事は許さん』と言ったがヴィヴィアはそれを鼻で笑った。


『先程言いましたよね? 貴方が彼女に対する扱いは婚約者としてのあつかいではありません。そもそも貴方の方から婚約を破棄しているんじゃありませんか』


 実はあの屑の寵姫はヴィヴィアの刺客で、そいつがあの屑を酔わせ、その時に唆して勝手に婚約破棄の書類を捏造して神殿に提出していた。

 因みにその寵姫を捕縛しようとしたが、霧の様に忽然と姿を消していた。



 結局俺はヴィヴィアに連れられて隣国に入国し、家族と再会できた。そのまま俺は療養していたが自然と屑の国について耳に入る事があった。


 俺が国を出るのと入れ違いに隣国の軍隊が大量に攻めてきた。

 民達は逃げる所か両手を上げて喜んだ。それ所か兵士に激励する民もいたとか。城を守る兵士達も平民ばかりで貴族の圧政に不満が溜まっていたせいで抵抗せず、数少ない貴族の兵士は碌に訓練を受けていなかったせいで、鞘を抜かず頭を叩けば直ぐに気絶する程弱かった。結果誰も死人も怪我人も誰一人出さずに城を墜としていた。国王家族は宝石が入った箱を抱えて隅に震えて、見っとも無く命乞いをしていた。……何とも情けない話だ。


 その後はあの屑達は火炙りと言う恐らく一番苦しい処刑を受けて死んだ。腐った王族・貴族を排除した後、代わりに俺の祖国を統治したのはヴィヴィアだった。

 ヴィヴィアのお陰で民達は餓死をせず、子殺し・親殺しをしない犯罪もめっきりと減った。俺がもう一度その土地に足を踏み入れた時は民達は皆笑顔だった。


 俺? 俺はまぁ何処かで聞いた事がある様な展開だ。

 隣国の王子の一人に見初められて、彼が俺の家に婿養子の形で結婚。その後は特に何の波乱もなく普通に孫や子供達に見守られて老衰で死んだ」

 終始怒りの表情で前世()を語っていた会長が、最後にやっと笑みを浮かべてくれた。



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