副会長の前世
副会長の話が長いです。恐らく会長の話も他の二人と比べて長いかも……
「私はとある小さな領地を治める貴族でした。優しく時に厳しく育ててくれた両親と大好きな使用人達と一緒に慎ましく暮らしていました。
あの男は領地が隣同士の貴族で、隣同士だからソコソコ交流がありました。が、正直あの男の家族とは関わりたくな家族でした。
あの男の家は昔っからあまり良い噂を聞かず、両親も使用人達もあの男の家族を見る度に眉を潜めていました。
あの当時の私はあの男に関しては特に悪い感情はありませんでしたが、ただあまり良い噂も聞かないのはあの男も同じでしたし、深く関係を持ちたいかと聞かれると『いいえ』と答える様な関係でした。
そんなある日あの男の家から縁談を持ち込まれました。勿論私とあの男のです。
勿論我が家は断りました。正直言ってこの縁談は我が家にとって利益的にも血統的にも何のメリットもありませんでした。
断った一ヶ月後我が家は賊に襲われました。
私は偶々他の領土に出ていたので難を逃れましたが、両親と使用人達が全員斬られ焼かれてしまいました。使用人の中には妻子ある者、幼い我が子がいる者、病弱な身内がいる者、年老いた両親がいる者、婚約者がいた者……全員が生きなければならない者ばかりでした。
絶望の中手を差し伸べてきたのはあの男でした。
馬鹿で愚かだったあの頃の私は、手を差し伸べてきたあの男を王子様だと勘違いしてしまいましてね。全て片付けた後あの男の家に嫁ぎました。
あの家でまぁまぁ良い待遇を受けたと思いますよ? 浮気されたり軽い嫁イビリされたり舅から軽いセクハラを受けましたけどね。あの時の私は愚かでしたから他所はそういう物だと我慢していました。
深夜、一人で屋敷に籠っていた時にヴィヴィアが私の目の前に窓から現れたのです。
ヴィヴィアは王族直属の竜使いで……ああ、『竜使い』と言うのはドラゴンを使役する専門騎士団の事を言います。私の世界ではドラゴン等のファンタジーの生き物がいましたので。
話が逸れましたが、ヴィヴィアはその竜使いの中で隠密業を受け持っていたいました。
何故彼女が深夜二階の窓から突然現れたのか。それは私に全ての真相を話す為に人目を憚って来たのです。
そう。私の屋敷を襲撃した黒幕があの男とその両親だという事を。
あの男の狙いは私でしたが、あの男の両親の狙いは我が領地にあった鉱山でした。確かにあの男の家は私と結婚して以降贅沢品が増えた様な気がしたのですが、まさか勝手に私の父が治めていた領地の鉱山を発掘するなんて思っていませんでした。だって前世の法律で。
『自分の領地を持っている者は例え細君の領地でも勝手に自分の領地にしてはいけない。もしそうなった場合は長男若しくは長女以外の細君の血を引いている子供が後を継ぐ事。子供が後を継ぐまで国から派遣した役人の指導の下、細君又は使用人が領主代理になる』
もし破れば領地を取られても仕方がない事なのです。それ位厳しく取り締まっていたのですから。だからこそ隠密であるヴィヴィアが動いたのでしょう。
あの男達は私と我が領地の鉱山を目当てに山賊を雇って屋敷を襲い、両親と使用人達を殺害。そして私と領地を手に入れたと言う訳です。
しかし実行犯である山賊達が捕まり、金を貰っただけですから恩も何もないからベラベラと話しましたよ。そしてヴィヴィアが私の前に現れた理由。
それは私への死刑宣告であり、救済案の提案をしに現れたのです。
意味が分からないと? 簡単に言えば『あの男の身内であるが、騙されていた被害者であり特に罪を犯していないので無罪としたいが、世間がそれを納得しないので取り敢えず死んだ事にして別人として生きて貰おう』と言う事です。
この事を提案したのは実はヴィヴィアだったのです。ヴィヴィアは何の縁もない私の為にお偉方を説得し、私が死んだ様に見せかける計画も立ててくれたのです。
計画と言うのは、あの男を含めた沢山の民衆の目の前で底が見えない程の深い谷に私を突き落とす。だけど人々に見えない深さに竜使いでもあるヴィヴィアが私を助けてその場から離れる、とても簡単な計画です。
その後私は隣国まで連れて行かれてひっそりと暮らしていました。風の噂であの男の一族が死刑台の上に立たされ死ぬ瞬間まで、石や罵声が止む事がなかったそうですが、亡くなった両親や使用人達の為に祈っていた毎日だったので興味が湧きませんでしたが」
腹が黒い副会長は眼鏡を上げながら終始不愉快そうに眉を潜めていた。




