表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/77

episode 1 巫女の鈴音


虎之助から名刺数枚と白咲さんのプロマイドを借り、森の中を歩く。


今度は自分から蜘蛛女を探す。探されるより、探す立場の方がまだ幾分気持ちが和らぐ。


しかし、本当にこの名刺が魔除け的な効果を発揮しているのだろうか?

念の為、白咲さんのプロマイドも借りて来たが・・・。


いや、この名刺には変なオーラが出てる。大丈夫。多分。


あれから俺たちは1度神社へと戻り作戦を練った。

おそらく、蜘蛛女を封印する方法は3つ。


1.神社に近づける。

2.鈴の音を鳴らす

3.ある程度蜘蛛女を弱らせる。


偶然かどうか分からないが、先程虎之助が蜘蛛女に手傷を負わせた瞬間に鳴った鈴の音。

蜘蛛女が引きずられていた方位に神社があったので、上記の推測が立てられる。


何故か封印する方向へとなったが、森を脱出するのも、脱出出来なかったとしても今後の安全対策にも蜘蛛女を封印するのが1番だろう。


虎之助も・・・


『まっかせて海くん!!盛大に鈴を鳴らしまくるよ!!』


と張り切っていたので、鈴担当を丸投げして来た。鈴ぐらい頑張ってほしい。


いくらこちらの姿が見えていないとは言え、ある程度の攻撃を与える必要がある。

その為、俺が蜘蛛女を探し、ダメージを負わせる担当についたのだった。


カランカランと鈴の音が聞こえる。霧のせいで辺りが見えにくい。頼りとなるのは鈴の音だけになるので、虎之助には定期的に鈴を鳴らしてもらうようにしている。


神社の方向もある程度、これで分かるしな。



思いのほか蜘蛛女とは、早々に再会をした。

自身に傷を負わせた者をまだ探しているのだろうか?恐ろしい形相でキョロキョロと顔を動かしている。


貴女を傷つけた者は残念ながら、神社で罰当たりなほど鈴を鳴らしてます。


音を立てず、そろりそろりと蜘蛛女に近づく。

1メートルほど近くへと寄ったが、気づく気配はない。やはり、姿が見えていないのだろうか?


神社で見つけた手頃な丸太を手に、思い切りそれを蜘蛛女に突きつけた。


ドゴッと鈍い音が、蜘蛛女から聞こえる。


丸太すごいなー。


『あ"アァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!』


効いてる効いてる。あっ、そうだ。さっきみたいに蜘蛛女が引きづられた瞬間丸太で押し込もう。


カランカラン。鈴の音が鳴る中、蜘蛛女はズルズルと音に向かって引きづられる。

それに抵抗するかの様に腕を振り上げるが、その前に丸太で殴る。

もう、抵抗などさせない。帰りたい。


振り上げた瞬間、丸太を振り下ろす。

さながら、木魚の様に丸太をぽくぽくと叩きながら神社へと向かう。


「うわぁぁぁっ!!」


神社の鳥居をくぐった辺りで、鈴の音に混じって虎之助の悲鳴が聞こえる。

ズルズルと恐ろしい顔で現れた蜘蛛女にビビったのだろう。俺も真正面から見てたらビビッてる。


思った以上にあっさり行き過ぎて、虎之助に確認を取るのを忘れていた。


「虎之助!!鏡は!?」


「鏡?僕のポケットの中!」


「バカっ!!早く木箱に入れろ!!」


慌てて、本堂にある木箱の元へと向かう虎之助。鈴の音が止んだ為か、チャンスとばかりに蜘蛛女が激しく暴れ出す。


もう、姿が見えようが見えてまいが御構い無しに、全てを壊さんとばかりに。

虎之助に気を取られ、出遅れてしまった俺は暴れる蜘蛛女から距離を取るので精一杯だった。


これ以上近づいたら、無事では済まないだろう。


蜘蛛女は本堂ごとなぎ払おうと体全体を大きく振りかぶる。

このままだと中にいる虎之助が危ない。一か八かで丸太を持って突撃しようとしたその時、カランカランと鈴の音が響く。


風も吹いてないのに、揺らゆらと規則的な動きで鈴を鳴らしていたのだ。


絶叫する蜘蛛女にチャンスとばかりに、そのまま丸太を持って強烈な突撃を蜘蛛女にぶつける。


「虎之助!!避けてろ!!」


本堂へと吸い込まれた蜘蛛女は霧散し、鏡の中へと吸い込まれていくのが見える。

やがて、それらは全て鏡の中へと消えていった。


「お、わったのかな。」


ひよこっと、いつの間に本堂の外にいた虎之助が顔を出す。

相変わらず、逃げ足だけは人一倍に速い。


「多分、ね。」


鏡をのぞいて見ると、濁った汚れの様な、黒い何かのせいで鏡としての本来の役割としてはもう使う事は出来ないだろう。


使う気など一切ないけど。


とりあえず、最後に木箱の紐をしっかり結び直し、木箱はここに置いておこう。それが1番いいだろう。


あっ、借りてた白咲さんのプロマイドも一緒に木箱の中へ入れておこう。


ついでに、名刺もいらないから全部入れよう。魔除けやお札がわりになるかもしれないし、鏡が割れるのを防ぐかもしれないし。


「早く帰ろう。疲れた・・・虎之助、代わりに運転して帰って」


「おっけぃ!!僕軽自動車しか運転したことないけど任せて!!」


心底不安だ。俺の車軽じゃないし。気がついたら、あれだけ濃かった霧も晴れ渡り森の全容が見えた。

もう夜だから暗いけどね!!


「あっ、ごめん虎丸。白咲さんのプロマイドあの蜘蛛女と戦ってた時、俺の身代わりになってどっかいった。」


「白咲さんっ、流石です。遠く離れていても僕たちの事を守ってくれるなんて!!一生ついて行きます!!」


あれお出かけ用だから、大丈夫と言う虎之助を無視して、日守神社の鳥居を出た後2人で軽くお辞儀をする。


「帰ろ帰ろ〜」


と前を歩き出す虎之助を他所に、一瞬だけ日守神社の方で美しい巫女服を着た女性が一礼したような気がした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ