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episode 6 日誌


 ○月○日 晴れ

 今日も1日変わりのない日だった。……ちゃんから放課後授業の質問を受ける。みんなきちんと授業を受けてくれて嬉しい。


○月□日 曇り

 今日も1日変わりのない日だった。生徒たちみんなと鬼ごっこをする。中山くんは運動場で転んでしまった。幸いにも擦り傷程度で済んだようだ。よかった。


○月×日 晴れ

 今日はみんなで山の方へ出かけた。晴れていて、気温も暖かかったので川で遊んだ。いや、川の生態を学習した。服がかなり濡れてしまったが、とっても楽しかった。


○月△日 晴れ

 今日も天気が良かったので、みんなでかげおくりをした。みんなで運動場へ出て、手を繋ぎ空を見上げる。大きな大きなかげおくりが出来た。



「これは・・・女性が書いたものかな?」


白咲さんはノートから目を離さず、緊張しているような声色で言う。

所々擦れたり、紙が破れたりしていたが、なんとか読むことができた。

数ページに渡って、学校での出来事や生徒たちと仲睦まじい様子が書かれており、特に変わったような点はなかった。


しかしノートの後半に差し掛かると、


×月△日 雨

 今日は都会から転校生がやってきた。クラスの子達と仲良くできるといいが。不慣れな事も多いだろう、できるだけ気にかけよう。


×月○日 曇り

 転校生はたった1日でクラスに馴染めたようだ。とても環境への順応力が高い子みたい。よかった。


×月□日 曇り

 今日は川の方へ行ってみようと思ったけど、転校生の事を考えてと生徒たちに言われて断念。そうね、ちょっと急すぎたかな。


×月◇日 雨

 あれ?みんな、どうしたんだろう?あれ?私、みんなに避けられてる?いや、気のせいかな。


×月

 みんな、どうして?どうしたのかな、様子がおかしい。みんなの視線が恐ろしい。私が話しかけても返事してくれない。……ちゃんは……だった。よか……


×月

 ちがう、注意しないと。これは、ダメ。誰がこんな事を?転校生?いや、疑うのは良くないわ。


それから、1ヶ月近くに掛けて、字は乱れ、生徒たちへの不信感が短く日誌が綴られているだけになった。


転校生?


都会から転校してきた子が登場して以降、なんだか不穏な空気が流れ出す。


そして、最後のページには・・・


『死んだ。私の味方が死んだ。ごめんなさいごめんなさいみんな助けてあの子がこっちを見てるの怖い私が悪かったのいやあの子がちがう悪いのは私であの子が死んだのも私のせいでみんな責めて悪い悪い悪い事は私で何もできなくてけどあの子がこなかったらこんなことにはならなくてでもあの子が死んだのは私のせいでもう違う言わないで責めないで私は悪くないあの子が悪い悪い悪い悪い子悪い子でもちがうのやっぱり私がきちとんみんなに伝えなかったせいでだからあの子が死んでそれでこんな事になってからだからやっぱり私のせいなのかな?



わ   た   し   の   せ   い  』




冷やっと、背筋が凍りつく。

余程精神が錯乱していたのか、書き殴られた文字だけが、ページ一面を埋め尽くされていた。


「うわぁ、海くんこのノートヤバイね!!めっちゃ最後の方自己嫌悪に侵されてるよ!!」


「虎、言い方を考えなさい。女性が記したものなんだ、もう少し丁寧な言い方を心がけろ。」


「うっ、は、はい、白咲さんすみません・・・」


白咲さんに軽く注意された虎之助は、目に見えて落ち込む。

落ち込む虎之助の頭に、白咲さんは軽く手を置く。次、気を付けろと一言添えて。その瞬間、落ち込んでいた虎之助は一気に瞳を輝かせ、大きく頷いた。


流石白咲さん、飴と鞭の使い方がうまい。



「でも、虎丸の言いたいことにも一理ある、かな。前半は物凄くいい感じ、と言うか生徒とも仲良さそうで、悩み事みたいなのも書いていなかったのに、後半からは・・・」


「そうだね、転校生が来た辺りからがターニングポイントだったのかな。後は・・・このノートだけを見る限り、生徒の誰かが亡くなられたか。」


ひとまず、このノートは元の場所へと戻す。破壊された棚に一瞬目眩を起こしかけたが、しっかり意識を保つ。


「とりあえず、もう少し学校内を調べたら帰ろうか。明るいうち帰った方がいいだろうしね。」


「了解です白咲さん!!僕、しっかりなんか調べます!!」


「虎丸、意気込みは評価するが、あまりいい加減な事ばかりするなよ・・・」


俺たちは次の場所を調べる為、この場を後にしようとした時、教室の扉が勢いよく開いた。自然と、全員の視線がその音の下方へと注がれる。


教室の扉を開いたのは、黒の長い髪を一つにまとめ、切れ長の瞳をした少女だった。

地元の子なのか、セーラー服を身に纏い、鋭い視線でこちらを睨む。


「あんた達!!肝試しかなんだか知らないけど、早くこの学校から出なさいよ!!じゃないと、あの人がこっちに・・・」


少女の言葉を遮るように、けたたましく校舎のチャイムが、重く、鈍く鳴り響く。



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