episode 6 集合
虎之助から強制的に話を聞かされて、2日後の朝5時。
「おっはろ〜!海くん!!」
「おはよう、海くん。今日はごめんね?」
前回、ボロボロになったファミリーカーとはまた別のファミリーカーに乗って、俺の家まで迎えに来てくれたスーツ姿の男が2人。
早朝にもかかわらず、家の前を掃除している大家のおばちゃんが2人に釘付けになっていた。
2人ともスーツ姿という事は、仕事明けなんだろう。
・・・元気だなぁ。
「おはよう、ございます。」
「今回は、本当にごめん。虎が無理を言ったんじゃないか?」
「うっ、」
申し訳なさそうに、虎之助の頭を軽く小突きながら白咲さんは言う。
「い、いや、まぁ確かに虎丸から無理矢理聞かされ連行されてるような感じではありますけど、白咲さんには前祖母の件でお世話になりましたし、俺で力になれるなら」
「そうだよ!!このメンバーならどんな困難でも乗り越えられるさ!!」
「こら、海くんを巻き込んだお前が言う事じゃないだろう……と、言いたいところだけど、そのお前を巻き込んだのは俺だからなぁ」
軽く挨拶を交わし、白咲カーのトランクに大荷物を積めさせてもらった後、俺たちは車へと乗り込んだ。
途中コンビニで飲み物や、軽いお菓子を買ったり(※俺が買いに行った)、ホームセンターで何故か白咲さんは大型のスコップを買ったり(※俺が買いに行った)しながらも目的地へと車を進めた。
※スーツ姿のホスト2人が買い物に行くと悪目立ちするので
街の喧騒が徐々に遠くなっていき、静かな木々のせせらぎ、木漏れ日が気持ちいい。
少し車の窓を開け、木々の香りを吸い込む。
あぁ、癒される……
「海くん!!凄いよ!!鳥がいた!!ほら、鳥とりとり!!!」
街の喧騒は遠くなったが、こいつが騒がしくなった。
「あぁ、鳥だな。帰りは焼き鳥食べて帰るか?」
「おう!!僕焼き鳥食べたい!!」
目の前の木々から飛び立つ鳥を見て、俺たちは不意に焼き鳥を思い浮かべる。
鶏肉は、うまい。肉界の王様だと俺は勝手に思っている。
「俺は鳥刺しが食べたいな」
晩ご飯のメニューを決めつつ、俺たちは目的の場所へとたどり着いた。
古い、木造の学校だ。俺たちの母校の旧校舎より年期が入っている。当たり前だが、人の気配はない。
しかしどうだろう?廃校だと言うのに不思議と不気味さを感じない。
所々、確かに苔やら雑草やらは生えていたり、校門も錆び付いてはいるが、それを抜きにしても小綺麗にされているように見えた。
マダムさんが買い取ったとの話だったが、業者の人が綺麗にしていったのだろうか?
いや、でも改装やらする前にトラブルが発生していたと言っていたが……
「白咲さん、マダムさんはこの土地を購入されたんですよね?廃校にしては結構綺麗に見えるんですけど、掃除とかってされたんでしょうかね?」
「いや、マダム百瀬の話によると、この校舎へ入る前に、不慮な事故に見舞われているらしいよ。だから、まだ誰もこの中に入った人はいないはずだ」
「廃校になったのは、つい最近とかなんでしょうか?」
「う〜ん、マダム百瀬が中学3年の卒業と共に廃校になったと聞いたから……少なくとも、40年ぐらい前には廃校になってる」
40年前、ならやっぱり誰か手を入れているのだろうか?
地元の人か……それともマダムが白咲さんに嘘をついたか。
どっちにしても入ってみない事には、何もわからない。
「2人ともとりあえず、中に入ってみましょうか。」
「りょーうかい!」
「そうだね。」
最小限の荷物を持ち、俺たちは錆び付いた校門に手を掛けてみるが、どうやら古びた南京錠が掛けられているようだ。
鍵を壊すか?いや、校門自体は乗り越えられない高さではないが……
「あぁ、ちょっと2人とも離れていてね。」
白咲さんは自身の手に持っていた大きなスコップを虎之助に預け、よっ、と白咲さんはその長い脚を振り上げ、鍵目掛けて踵を振り下ろす。
振り下ろす・・・いい感じでパキッと音を立てて真っ二つになった。
「白咲さん!!さすがです!!」
「白咲さん!?壊していいんですか!?」
「う、う〜ん・・・」
壊した張本人である白咲さんは困ったように鍵を見つめる。
「いやぁ、マダムから南京錠の鍵は開かなければ、壊すことも出来ないって聞いていたんだけどなぁ・・・」
どうやら、南京錠の鍵自体はマダム百瀬さんから預かっていたらしい。
だが、今まで鍵を開けようとしても鍵は回らず、鍵を破壊しようにも、壊すこともできず、仕方なく校門を乗り越えようとするとそこで転落事故が起こるらしい。
「校門自体を壊そうとはしなかったんですか?」
「うんやぁ、マダムはこの校門は残して欲しいって言ってたからねぇ〜。ですよね白咲さん!!」
「マダムの母校らしいからね、思い出の詰まった校舎の入り口を壊すのは忍びなかったんだろうね。」
とりあえず、中の様子を確認してみよう、と白咲さんが先陣を切り、俺たちは後者の中へと足を進めた。
だいぶ遅くなりました、




