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episode 5 休戦


 扉から顔を見せたのは、山田 虎之助。


加賀の足元にいる桜子ちゃんが目に入った虎之助は、加賀に突っ込んでいくがそこまで体格の良い方じゃない、ましてや足が遅い虎之助が突っ込んでいったところで、加賀はひらりと虎之助を躱す。


余裕そうな笑みを浮かべたまま、手に持っていた斧の柄を虎之助に叩き込もうとするが、

加賀はその身を吹き飛ばされた。


「桜子!大丈夫!?」


そんな加賀には目もくれず、すぐに虎之助は桜子ちゃんを抱き起こし、軽く体を揺すっていた。俺もすぐに彼女に駆け込み、容体を見るためにしゃがみこむ。


「待て虎之助!!頭を打ってる可能性がある、極力体を揺らさず安静にできる場所へ・・・」


うっ、と小さくうめき声を上げながら、桜子ちゃんはゆっくりと立ち上がる。


「桜子ちゃん、無理して立ち上がらない方がいい!」


「大丈夫、です。ちょっと背中を強く打っただけですから・・・兄様も、ごめんなさい、迷惑、掛けて・・・」


「ごめんなさいって、謝らないでよ。僕、桜子のお兄ちゃんなんだから。」


立ち上がる桜子ちゃんを、虎之助と2人で両端の肩を支える。



「副会長、もう、こんな事やめないか」


ふと顔を上げると、松原くんが仁王立ちで加賀を見据えていた。

そうか、加賀を殴り飛ばしたのは、彼か。



「いったた、あー、会長。いやぁ、あんたが殴ってくるのは予想外。そこで棒立ちしていてくれたらよかったのに」


「ここで殴らないと、お前はもう、戻ってこないだろう?」


「はぁ?意味不。戻るって、なに?こ〜んなパーティーを催した俺に、何言ってんの?て言うかやっぱり、あの結界外側からだと簡単に破れるんだなぁ。あ〜、面倒くさいことになったぁ」


加賀は目の前の松原くんから、虎之助へと視線を移す。

思わず、俺も視線を追ってしまう。そうだ、虎之助。なんでこいつがここにいるんだ?


「えっ、海くんどうしたの?僕をそんなに見つめて、いやん照れる。」


桜子ちゃんを支えたまま、そんな事を言い出すこいつは、マジで空気読めないんだなぁと思いました。

仕方なく、扉を吹っ飛ばした後、静かにそれを直していたサファリーさんに顔を向ける。


「・・・・俺のぽんつくいた??」



この人も話が通じなさそうだ。



「俺たちが、副会長によって不気味な手に捕まった時、たまたま書記のお兄さんが校舎に来てくれて、扉が開いた瞬間、手から解放された、です。」


見かねた?聞きかねた?のか、松原くんがさりげなく説明してくれた。


すまん、今の心境はそれどころじゃないだろうに、助かったよ。



「どうしようかなぁ、お兄様も捕まえる予定だったけど、今じゃないんだよなぁ。ゴリラと、会長、桜子に、一般人、それからお兄様。うん、流石に分が悪いよねぇ」



ひとりひとり指を指しながら、困った困ったと、肩を竦める。

一般人って、俺の事か??いや、この中では比較的一般人だな。間違いではない。


「んじゃあ、またね。今日は楽しかったよ、今度は君の四肢を切り落としてでも連れて行くね桜子。」


加賀は2階の窓を斧で叩き割り、そこから飛び降りた。



「えっ、ばっ!!!!」


俺は呆気に取られたが、割れたガラスの破片に気をつけながらも、すぐに窓へと駆け寄り下を覗き込む。

斧をその場で投げ捨て、こちらに向かって舌を出して去っていく加賀姿が見えた。


早くあいつを捕まえないと!!



「先輩、ストップ。多分、副会長の後追えねぇぞ、だ、です。まだ、玄関に手いる、ます。書記のお兄さんが来た時、一瞬消えたけど、すぐにまた手が生えて?きた、ました。」


・・・まだ、玄関の手は浄霊されていないのか・・・


そうだ、この教室に来た本来の目的を忘れていた。


「虎丸!!お前昔買った木刀どこに置いた?!」


「えっ、木刀??僕そんなの買ったっけ??」


「修学旅行でお前が買ったやつ!!あの・・・いつかの日の為に的な事言ってここに置きっぱなしにしたやつ!!今、今がその時だろ??」


あぁ、と虎之助は手を叩き教室の隅にあるロッカーを開け、何やらがさがさあさり出した。

ぽいぽいとガラクタを投げ捨て、やがてあった!!と大きな声を上げる。



「はい、海くん!もしかして、これの事??」


虎之助の手には1本の古びた木刀が握られていた。


「いや〜、卒業する前に誰かに木刀が見つかったらしく

『お前早くそれを持って帰るか処分するかどうにかしろ!』って福ちゃんに怒られてさぁ。でもでも、絶対に持って帰りたくなくて絶対に見つからないように再度隠した!!」


「なるほど・・・兄様が絶対に見つからないように、と思いながら隠されたのでしたら、私達には見つけられないはずです・・・」


桜子ちゃんは1人納得したように、うんうんとうなづく。

さて、木刀が見つかったのなら・・・

怪我をしている桜子ちゃんに頼むのは気が引けるが、彼女に手まねきを祓ってもらうしかない。


その為にも・・・一時的にこいつをどうにかしなくては



「虎丸、サファリーさんと一緒にぽんつくを探してきてくれないか?」


「へぁ?ぽんつく??」


「そう、ぽんつくっ!!!探してあげないと!!怖い思いしてる!!絶対!!行くよ丸助!!!」


「えっ、丸助えっ、僕?えっ、てぇぇぇぇげぇぇえ」


サファリーさんは、半ば強引に虎之助の手を引いて教室を出て行く。

途中で廊下から、痛いと叫び声が聞こえてくるが、とりあえず俺は気にしない事にした。


1階へ桜子ちゃん、松原くんと向かい玄関のまねき手の前へと出る。

先ほどと変わらず青白い手は『こっちへおいで』と言わんばかりに、ゆらゆらその手を揺らして見せた。


「桜子ちゃん、」


桜子ちゃんは、大きな音を響かされる、廊下奥の教室を気にしながらも虎之助の名前が書かれた木刀を握りしめ、綺麗に一閃弧を描く。


青白い手達は、手を揺らめかせながら徐々に消えていった。



「とりあえず、この場に縛られる事はなくなったと思います。後は何処か風の吹くままに、好きな場所へ行き、そして空へ帰るでしょう。」


玄関の扉を開けると、一筋の風が流れ込む。

それと同時に、この校舎一帯を纏っていた重苦しい雰囲気が消えたような気がする。


一歩外に出ると、星々が綺麗に輝いていた。



「うわ・・・もう夜か・・・。あっ、すっかり忘れてた。」


手荷物から携帯を取り出し時間を確認する。もうすぐ20時だ。と言うか今更だが、携帯を使う発想が全く浮かばなかった。

中原さんに連絡すれば一発で解決したような気もしなくはない。


「ぽんつくぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!ごめんね!!ごめんねぇぽんつくぅぅぅぅぅ!!もう、絶対に離さないっ!!!」


校舎からサファリーさんの大きな声が聞こえる。あっちも無事解決したんだろう。

虎之助は肩を軽く回しながら校舎から出てきたと同時に、慌てて携帯を確認しだす。


「やっば!!仕事、仕事行かないと!!!」


ごめん、もう行くねと虎之助が走り出そうとしたのを桜子ちゃんが止めた。


「兄様っ!あの、あの、今日は、どうして・・・」


「えっ、だって昨日、桜子の様子が変だったし・・・」




虎之助・・・お前・・・






「仕事上、女の子の変化には常に気を使っておかないとね!!」




虎之助っ・・・お前っ!!



「なんて、可愛い妹の事はすぐに分かるよ。なんか事態はさっぱり分かんなかったけど、もう大丈夫そうだよね?」



「・・・うん!!」


桜子ちゃんは満面の笑みを浮かべ、虎之助に抱きつく。そんな桜子ちゃんの頭を軽く撫でた後、虎之助は俺たちに手を振りながら去って行った。


相変わらず、嵐のような男だ。



そういえば昔、桜子ちゃんに恋愛相談をされた時、彼女はこう言っていたな・・・




『その、相談するなら別の人がいいんじゃない?女友達とか、おじさんとか虎之助には相談し辛いだろうけど、かすみさんなら母親だし、相談しやすいんじゃない?』


『両親や、両親や兄様じゃダメなんです!!だって・・・だって、私はいつまでも可愛い妹でいたい。ずっと、家族で、妹としていたいから、恋愛事なんて知られたくない!』



当時は、何を言ってるんだ。とも思ったけれど、今なら、彼女が何を言いたかったのか、なんとなく、理解できる気もする。


「先輩、俺たちも今日はもう帰るぞ、帰りましょう。早くしねぇと門閉まるます。また後日色々と、話そう。」



時間も時間だ。今日1日で色々とあった。また後日落ち着いた頃に話し合う約束をし、俺たちは旧校舎を後にした。


そう言えば、サファリーさんまだ旧校舎内にいたの忘れていた。

彼を回収をした後に、俺は桜子ちゃんを送って自宅へと帰宅した。


何故か、サファリーさんは俺の家に泊まっていった。




やっと、episode5終わりました!

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