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episode 5 策


『海くん、俺の力をここに残していくよ・・・いつか、いつかその日の為に』


夕暮れ時。誰もいない教室で虎之助は一本の木刀を手にしていた。

黙っていれば眉目秀麗なこの少年は、油性ペンで手にしていた木刀に何かを書き込む。


『おい、虎丸。世間一般的にそれは厨二病と言うぞ。』


『いいじゃん!!こう言うのは気持ちの問題だよ!!しっかしなぁ〜、割とこの校舎好きだったんだけどなぁ俺』


『たまに虫が出て最悪だけど、まぁ、木の匂いとか、いい感じではあった。』


『でしょ!だからタイムカプセル的な感じでこれをこの教室に置いていくわけ!!運命的な出会いを果たしたこの木刀を!!』


刀身部分に山田 虎之助と、無駄に綺麗な字で書き終えたようだ。それをまじまじと見つめては恍惚とした表情で、虎之助は目を輝かせていた。


『お前・・・それ、修学旅行先で買ったやつだろ。しかも、先生に木刀買うの禁止されていたのに。』


『福ちゃんには黙ってて!!またげんこつ落とされるのマジで勘弁!!』


手を合わせて懇願してくる虎之助を横目に、俺は自分の鞄を手に取る。

まだ17時前だと言うのに、日が暮れるのが早い。


『ほら、早く帰るぞ。』


『はいはーい。う〜ん、あっ、このダンボールの中に入れておこうっと』


虎之助は教室の片隅に置かれたダンボール内へ木刀を入れ込む。

箱と木刀の大きさがあっていない為、かなり出っ張っているが、まぁ本人がそれでいいなら問題ないのだろう。と言うか、早く帰りたい。


当時は、虎之助がまたバカな事を言い出したなとしか思っていなかったが……












「いや、本当に。まさか役立つ日が来るとは、微塵にも思ってなかった。」


2階へと戻り、松原くんが閉じ込められていた教室の2つ前の教室へとやってきた俺と桜子ちゃん。

ここは鍵など掛かっていなかったようで、すんなりと扉は開く。


教室には、様々な大きさのダンボールがいくつも積まれており、虎之助がどこに木刀を放置したか分からない。


「こ、このダンボール達の何処かに虎之助が置いて行った木刀があるんだけど・・・桜子ちゃん、なんか、その、オーラ的なもので分からない?」


「任せてください。兄様のオーラを、兄様の匂いを辿ってみせます!!大丈夫です!!私なら、できるはず!!」


と、意気込みながらダンボールの海へ飛び込み、1つずつ中を確認していく。

あっ、地道に探していくんですね。俺も頑張ります。


一つ一つ、目を凝らしながら探していくが、それらしき物は見当たらない。

数が多すぎる。この学校の教員はこの校舎をゴミ置場か何かと勘違いしているのではなかろうか。


「兄様、どこに、どこにいるんです兄様・・・」


桜子ちゃんがちょっと怖いから、早く探そう。それに、足止めしてくれている2人も気がかりだ。

あれから、どれだけ探しても木刀は見つからない。もしかしたら、もうすでに処分されてしまったのかもしれない。

誰かが持って行ったのかもしれない。


どうする、もうこれ以上時間は掛けられない。かと言って、今から塩を探すにしてもさらに時間を費やしてしまう。

下から物音がしないのも不穏だ。


「桜子ちゃん、一旦俺は下に戻るから、君は二階に「あぁ、戻る必要はないと思いますよ?」


俺の声を遮り、聞き覚えのある、でも今は聞きたくない声が教室の扉から聞こえてきた。

加賀の、声だ。


「2人共遅いから、迎えに来たよ。」


扉はゆっくりと開き、斧を持ったままの加賀は不気味な笑顔のまま、顔を覗かせた。

加賀・・・?

えっ、じゃあ2人はどうなったんだ??サファリーさんは?松原くんは???


「海さん!」


少し離れた場所にいた桜子ちゃんはこちらへと駆け寄り、隣に並ぶ。

桜子ちゃんは、その辺りに落ちていた箒を手に取り、加賀に対峙して見せる。気休め程度だろうが、手ぶらよりマジか。


俺も机を手に取る。少しでも距離を稼げるように、なんなら直ぐにでも机を投げれるように。


「ふふ、やっと2人きり・・・いや、3人きり?になれたね。」


「2人はどうした。」


「あぁ、生きてますよ。まぁそれも時間の問題だろうが」


生きている、その言葉に安堵するが時間の問題と言う事は、直ぐにでも助けに行かなければいけない状況なのは間違いない。

教室の扉は左右に1つずつ。しかし、1つはダンボールで封鎖されており、通るには時間が掛かるだろう。

もう1つは・・・言うまでもなく、加賀が立ち塞いでいる。


「海さん、下がってください。ここは、私が・・・」


「下がるのは、桜子ちゃんだろ」


彼女の肩を軽く掴み、少し無理矢理に後ろへ下がらせる。

とにかく、加賀隙を突いてこの教室から出るしかない。考えている隙など、ない。


「あれ、先輩が相手になってくれるんだ。う〜ん、手足を折ってしまって動けなくするのが1番効率がいいな。死ななかったらいいんだし。桜子は・・・折るだけじゃ逃げられるかもしれないから、切り落とすか。」


独り言を呟く加賀に、俺は斧を落とすべく、彼の右手目掛けて手刀を切る。

ドスっと鈍い音と共に、うまく決まったが強く握られた手から、斧を落とすことはなかった。

そのままこちらを見ずに斧を振り上げてくるので、すぐにその場を飛び退く。


「なんか、考えるのも面倒になってきた。もういいや、1人殺そう」


笑顔を貼り付けたまま、こちらへ走ってくる。武器を持っている相手に接近戦は不利だ。


「くそっ!!」


俺は近くにあった机を加賀に向かって蹴り上げ、距離を取る。

だが、相手も俺の考えが読めていたのだろう。机をヒョイと飛び越えてくるが、そこを狙って桜子ちゃんは箒を打ち込む。


「そこっ!!!」


しかし、加賀はその箒を左手で掴み桜子ちゃんを地面へと叩きつけた。


「っあ、」


「桜子ちゃん!!」


俺が駆け寄るよりも先に加賀は桜子ちゃんの上に跨り、手斧を彼女の首筋に当てていた。


「あ、見たら分かると思いますが、動かないでくださいね。桜子を殺したくないんで。」


思った以上にダメージが大きかったのか、桜子ちゃんは動けなさそうだ。


「さて、じゃあとりあえず・・・先輩、こっち来てくださいよ。胴体と首2つにするんで」


万事、休すか


もう打つ手がない


桜子ちゃんを置いて逃げることもできるだろう


だけど、桜子ちゃんを置いて逃げるなら、死んだほうがマシだ


「あっ、素直。いやぁ〜本当に助かります。じゃ、さようなら」


加賀は桜子ちゃんを足で押さえたまま斧を大きく振りかざす。目が離せない。

狙いは、俺の首


「あっ」


しかし、加賀斧は振り下ろされる事なく、動きを止め、扉の方へ目を向ける。

なんだ?


と思った矢先廊下から凄まじい音が聞こえてきた。

これは、廊下を、走る音??


一瞬何かが駆け抜けたかと思ったら


「さふぁりーダイナミックきーく」


ダンボールで封鎖されていた方の扉が、吹き飛んだ。


綺麗に、吹き飛んだ


「えっ、はっ、えっ?」


突然の事に自体を飲み込めない俺。

加賀も吹き飛んだ扉を唖然として見ている。


「海くん大丈夫!!!?」


さらに予期せぬ人物が、吹き飛んだ扉とは別の扉から顔を出す。


「とら、のすけ??」



ちょっと長くなりました。サブタイトル変えるかもしれないです

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