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episode 1 最後のピース


蜘蛛女に対抗すべく、俺たちはこの神社を調べ始めた。

もしこのメモ帳の書いてあることが事実ならば、この神社に何か手がかりが落ちているかもしれない。


虎之助と手分けをして探してみた。


「海くん、これ、これ見てみてよ!」


罰当たりにも、いや、そんなことを言ってる場合ではないか。

本堂の扉を開け調べていた虎之助の方へと向かう。

埃っぽく、薄暗い小さな空間にはボロボロになった木箱、割れた鏡が置いて・・・いや、これは落ちてある、と表現した方が正しいかな。ボロボロの木箱には括っていたであろう赤い紐と一緒に放り出されるような形で開いていた。

その近くに落ちてあった鏡は、恐らく、この木箱の中に入っていたんだろう。


「これ・・・なんか、明らかにヤバそうだよね。めっちゃ封印解かれましたー、みたいな感じになってるよね?」


「そうだな。むっちゃ封印解かれた感じになってるな。」


割れた鏡を見てみるが、かなり年代物らしくこちらも木箱同様古ぼけていた。

現状から推測するに、この木箱に鏡を入れたら封印できるのかな、なーんて。

でも、鏡なんて・・・あっ


「虎丸。お前、鏡持ってるだろ?」


「えっ、持ってるよ。もちろん。」


ナイスナルシスト。虎之助は自身が着ているスーツの胸ポケットから小さな鏡を取り出す。

これを、木箱に入れて・・・鈴を、鳴らす?そんな、単純な事なんだろうか?


「とりあえず、この神社の鈴鳴らしてみようか。もしかしたらこれで上手くいくかもしれないし。」


後、本堂勝手に上がってごめんなさい呪わないでください、的な謝罪も込めて。



虎之助と2人で外に出てから、神社の習わしに沿って鈴を鳴らしてみる。カランカランと、綺麗な音が鳴り響く。


が、特に何か変わった様子などはない。相変わらず白い、霧は晴れない。今気が付いたのだが、森に比べるとここは霧が少ないように見える。やはり何かしたら神聖なものがあるんだろう。


「う〜ん、特に何もないね。どうする?海くん。」


「少しは自分でも考えろ・・・。こうなったら、仕方ないな。手掛かりがないなら、自分達で探しに行くしかないだろう。森に戻るぞ」


「えっ、マジで!?だってあの化け物いんだよ?!」


「こうしてただここに居ても、いつまで経っても白咲さんの元へは帰れないんだぞ。」


それは嫌だ。と目の色を変え、虎之助は付いてきた。

白咲さん効果は絶大だな、気持ち悪いほどに。俺も、蜘蛛女が徘徊する森を歩きたくなんてないが、あと少し、あと少しでいけそうなんだ。





変わらない景色の中を歩き続けて数分、霧の中で、こちらを見ている赤い何かが見えた。

カサカサとその赤は近づいて、ぬっと森の中から姿を見せた。気持ちの悪いニタニタとした笑みを浮かべながら。


会いたかったけど、会いたくなかったそれは俺に向かって走ってきた。


「待ってた・・・よっ!!」


姿を発見するのが早かった為か、あっさりそいつを避け、撲松1号を構える。


「うえっ、で、出たっ!!」


虎之助を蜘蛛女と距離を取り、一歩ずつ下がって行く。

そんな虎之助には気づいて居ないのか、蜘蛛女はただひたすら、俺だけを見ていた。


「はぁ、こんなのにモテても嬉しくないんだけど。」


図体がでかい分、動作がやや鈍くこちらが攻撃を当てるのには十分だった。

先程同様蜘蛛女の胴体目掛けて、撲松1号を叩きつける。

しかし、流石に2度目になるとこいつも学習してきたのか、撲松1号を腕だか脚だかで弾き飛ばす。


木の棒はあっさりと折れた。そのままなぎ飛ばされ、木に叩きつけられる。


「ぐかっ!!」


衝撃からか、上手く動けない俺を目掛け、蜘蛛女は脚を振り下ろす。


「おっり、やぁぁぁぁっ!!ホワイトキャッスルNo.2スピアぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


聞き慣れた声の絶叫と共に、虎之助が尖った木の枝を蜘蛛女に刺した。

蜘蛛女は突然の衝撃に、醜い叫び声を上げ、刺さっている枝を引き抜こうとしていた。


「う、海くん大丈夫?!」


その間に、虎之助は俺に近づいてくる。


「バカ!早く逃げろ!!」


蜘蛛女は、今まで浮かべていた笑みを崩し、血走る目で虎之助の方へと視線を向けるが、蜘蛛女はピタリと動きを止め、挙動不審に辺りを見渡す。


その時、カランカランと神社で鳴らした鈴の音が森に木霊した。


『ギィィィガァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』


蜘蛛女はズルズルと、何か見えない物に引きづられているかのように身体を捕らえられていた。


『アァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!』


しかし、それを払いのけるように大きく腕を振り上げ、森の奥へと消えていく。その直後、鈴の音も止んだ。


「えっ、何あいつ。」


蜘蛛女が消えた後、虎之助から手を借り立ち上がる。

鈴の音が聞こえた直後、断末魔を上げ見えない何かに引きづられているようだった。いや、その前に・・・


「虎丸、お前あの蜘蛛女に何かしたのか?」


「えっ、尖った木の枝刺したくらい?」


もしかして、蜘蛛女には、虎之助が見えていないのではないか?

思い返せば、最初の攻撃も、追いかけてきた時も、今も、俺しか狙ってきてない。


「虎丸、お前今何待ってる?」


「へっ??」


「所持品、今手持ちのもの全部出して!」


イエッサー!!と言いながらポケットに入っているものを次々と取り出す。


白咲さんのプロマイド、名刺入れ、スマホ、財布。

ろくなもん持ってねぇなこいつ。


けど、この中に蜘蛛女が嫌がる、または対抗できる何かがあるのかもしれない。俺が持ってなくてこいつが持ってるもの・・・


し、白咲さんのプロマイドと名刺入れか?


「あっ、見てよ海くん。この白咲さんめっちゃカッコよくない?僕もこんな風に早くなりたくてさぁ。この名刺も白咲さんの真似をちょっとしてみて、金をふんだんに使ったんだよ!」


ちょっ、紙切れになに勿体無いことしてんだこいつは!!それでやたらキラキラしてた・・・金?


「虎丸、この名刺金を使ってるのか?」


「うん?興味湧いたの??むふふ、純金を散りばめて作ってるんだ」


ムカつく顔をする虎之助は、視界に入れないでおく。これ以上のストレスは、いらない。


前に准教授が、金は古くから太陽の象徴とし、魔除けとして使われていたとか何とか。

もしかしたら、これが使えるかも知れない。




不本意だが虎之助と、先程の鈴の音のお陰で最後のピースが何となく、分かったよ。







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