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episode 5 救出


ガシャッっと音が聞こえ、息を呑む。

なんだろう。何か大きな物を落としたような音に聞こえた。

誰か、俺たち以外にも人がいるのか?


「・・・2階からですね。」


「ぽんつく・・・」


訝しげな目で2階を見つめる桜子ちゃん。サファリーさんは姿が見えないぽんつくを心配して、1階の廊下を見つめていた。


ぽんつくを優先して探してあげたいが、不安要素を残したまま、探索を続けるのも得策ではない気がする。

一先ず、2階の音がした場所辺りを軽く見るだけは、した方が良いだろう。


「2人とも、一先ず2階へ行って見ませんか?こんな状況ですし、変に不安要素は残したくないですし。」


「そうですね、私も海さんの意見に賛成です。」


「・・・そうだねー、俺もちょっときになるし」


2人の同意を得れたので、そのまま2階の階段に足を掛ける。

木造の階段は、ギシリと鈍い音を立てより一層の不安感を醸し出す。

まだ完全に日が落ちてないことが幸いだ。

前に行った、高塔山の様に暗闇の中を歩かなくて良いだけマシだ。


2階も、1階と同じ作りで、部屋は4つ。窓が多く配置している見通しの良い廊下だ。

こちらも、窓には極力近付かない方が良いかも知れない。


軽く見て回るだけだから、俺だけでいいか。


「俺が見てくるから、2人はここで待っててください。」


「分かった、気をつけてください。」


早歩きで、1部屋1部屋、窓から中を覗き込む。机や椅子が無造作に置かれた部屋。

紙類が置かれた部屋、体育祭で使われたであろう、看板類が置かれた部屋がある中で、1番端の部屋だけ、今までと明らかに異なっていた。


人がいる。


無造作に置かれた机や椅子の中心に。しかも、椅子に縛られた状態で地面に転がされていた。

顔までは見えないが、うちの高校の制服を着た男子生徒のようだ。


とりあえず、生存確認だけでもしなくては!と言うか見てしまったからには放置できない。

その教室に入ろうとしたが、この古い木造の校舎に於いて、明らかに異質な物があった。

スライド式の扉を開けようとした時、真新しいプレートに、南京錠が付けられていたのだ。


そっと、それに触れ、軽く何度か引っ張ってみる。そこそこ強度があるのか、壊すには少し時間が掛かりそうだな。


「海さん?」


俺の様子に気がついたのか、桜子ちゃん、サファリーさんも教室扉前まで来てくれた。

俺は軽く事情を説明し、2人にも南京錠を見てもらう。


「桜子ちゃん、この鍵開けれそう?ほら、俺の家みたいに・・・」


何度か家の鍵を勝手に開けられた経験がある。桜子ちゃんならこの鍵を開けられるかもしれない。そう思ったが、彼女は首を横に振り、肩を落とす。


「すみません、南京錠は割と鍵穴が小さいので開けるには長細い、そこそこ強度のある棒状の何かが無いと出来ないです。今はヘアピンも持っていませんし・・・


バキッ!!!!!!!


「よーしー、おっけぇー」


桜子ちゃんが言い終わる前に、横から聞いた事もないような、鈍い音が聞こえてきた。

サファリーさんの声だ。でも、彼が何をしたのか、感情を表に出す事も、思考も出来なくて、ただ無表情に音のする方へ顔を向ける。


「案外脆いねぇー」


扉に付いていたプレート部分を引きちぎったサファリーさんの姿が目に付く。

あぁ、南京錠の方を壊すのではなく、そっち壊されたんですね。俺は考えつきませんでした凄いです。


とりあえず、経緯はどうであれ今は直ぐにでも中に入ろう。

サファリーさんに軽くお礼を伝えた後、ゆっくりと扉を開き中へと入り込む。


「!?会長!?」


教室の中へ入るなり、桜子ちゃんが男子生徒へと駆け寄る。

教室からは顔が見えず分からなかったが、その生徒は確かに昨日会った生徒会長だった。


「会長、どうしてこんな所に!?と言うよりどうして縛られているんですか??」


慌てふためく桜子ちゃんを軽く生徒会長から離し、まずは縄で縛られてる手足を解放する。思った以上に簡単に解けてくれた。

そのまま彼を仰向けにし、右手首の脈を確認する。

・・・大丈夫。正常だ。


呼吸も・・・胸部、腹部の動きは大丈夫。


なるほど。



「桜子ちゃん、彼、寝てるだけだよ。」


「寝てる??んー、じゃあ起こしてぽんつく探すの手伝ってもらおうよー!」


サファリーさんは、生徒会長を、思いっきり、揺さぶろうとしたので全力で桜子ちゃんと止める。


「さ、サファリーさん落ち着いてっ!!ゆっくり、ゆっくり声かけてからして起こしましょう!!」


「そ、そうですよ!えっと、サファリーさん?会長、起きてください!ね、会長!!」


先程、鍵を素手で壊した彼の腕力で人を揺さぶったら、この生徒会長はどうにかなるやもしれない。


「ん〜、あぁ・・・うるさい・・・何、人がせっかく寝てるのに・・・くそ・・・」


俺たちの声で目を覚ましたのか、生徒会長・・・松原奏は目をこすりながら上半身を起こし、ぼーっとした表情でこちらを見てきた。

状況がうまく飲み込めていないのだろう。


「会長、大丈夫ですか?」


「んー、ん・・・ねむ。書記?」


松原奏は桜子ちゃんの手を借りながら、ゆっくりと立ち上がる。

その様子を見つつ、周りへと視線を巡らせる。他に、物が落ちた形跡は、特になさそうだ。となると、ここへ来る前に聞いた音は恐らく、こいつが椅子から倒れ落ちた音・・・かな?


「俺、なんでこんな部屋にいるんだ・・・です。」


生徒会長がこの教室にいる理由は知らないが、俺たちがここへ来た原因、経緯を桜子ちゃんが彼に説明した。1階で遭遇したあの手については、まだ説明できていないが。

腕を組みながら、松原奏はうんうん。と頷いて見せた。


「会長はどうして旧校舎の方へ?」


「この校舎に入っていく人影、見たんだよ、でございます。普段は鍵が閉まってるのに、おかしいなぁっと思って後をつけてきたんだ、ます。そして、ここに入った瞬間、一瞬頭痛がして、寝た・・ました。」


頭痛?松原奏の後ろ、頭部へ手を這わせる。


「うわっ、何!?きっしょ、えっ、俺そういう趣味ないんだけど、です。」


「少し頭部を見るだけだ!動くな!!」


俺から距離を取ろうとする松原奏を制し、軽く見てみる。

医者じゃないから、詳しい判断はできないが・・・頭部に、僅かだが傷跡を見つけた。

若干血が出ているから、恐らく彼がこの校舎へ足を踏み入れた瞬間、何かで殴られ、この場所へ監禁?されていたのだろう。


「とりあえず、お前はここから出た後、すぐ病院に行くぞ。」


「えー、俺大丈夫ですよ。別に怪我とかしてねぇから、でございます。」


「怪我してるし、頭部殴られてるんだ。一回しっかり検査しろ。医学生からの忠告だ。」


めんどくさそうな表情を浮かべる松原奏を無視して、この部屋を見て回る事にした。

病院に連れて行くにしても、この校舎・・・強いてはあの手共をどうにかしないといけない。

ひとまず、4人で手分けしてこの部屋を探ってみよう。

思った以上に長くなったので、一度きります。

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