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episode 5 得意分野


「なんか、2人に声を掛けた瞬間、満点の星空を拝んだ気がするよ。」


数分後、目を覚ました虎之助はそう言っていたとか。

桜子ちゃんがエルボーを食らわせた事は、どうやら覚えていないようなので、もうそのままにしておいた。めんどくさいし。


「に、兄様はどうしてこちらへ?今日もお仕事だとお伺いしていたのですが・・・」


「あっ、今日母に呼ばれたから、出勤前に実家へ寄ったんだ。んで、桜子がもうすぐ帰ってくる頃だって聞いたから、迎えに。」


桜子ちゃんは兄様と、虎之助の右腕に自身の腕を絡ませ、キラキラした眼差しで見つめていた。


「あっ、虎丸。お前もう実家の用事は済んだのか?」


「うん、母さんが南蛮漬け作ったからそれを取りに行っただけ。ホワイト・キャッスルのみんなで食べるんだ〜」


「ならちょうどいいや。ちょっとお前に聞きたいことがあるんだけど、俺の部屋に来れる?」


「海くん家の?」


「ん、実家の方。昨日、ばぁちゃんがこっちに来たんだ。美味しいいきなり団子を作ってくれてると思うぞ。」


「えっ、ふみばぁちゃんの!?行く!!すぐ行く!!」


ふみばぁちゃんの団子楽しみだなぁと、満面の笑みを浮かべる虎之助をよそに、桜子ちゃんは浮かない顔をしてこちらを見てくる。


あぁ、


「大丈夫。虎之助に、ちょっと聞きたいことがあるだけだから。」


「・・・・」


軽く桜子ちゃんの頭にぽんと手を置き、反対の手で、どこか遠い世界へ思考が向いている虎之助の頬を摘む。


「いたたたっ、痛い、痛いって海くん!!」


「ほら、早く行くぞ。お前も出勤前なんだろ。」


「出勤前だから!仕事前に顔をつねらないでって、大事な商売道具ぅぅぅっ!!」


桜子ちゃんを家まで送り届けたその足で、山田家隣の我が実家へと行く。

あっ、事前に帰ることを伝えていなかったけど・・・まぁ、大丈夫かな。


「海くん家久々〜」


「ただいま。」


チャイムを鳴らし、鍵のかかっていない、不用心な玄関扉を開けると、パタパタと奥の方から足音が聞こえてくる。


「海ちゃん!?それに虎ちゃんまで!どうしたの??」


エプロン姿の母親が驚いた表情で迎え入れてくれた。

入って入ってと母さんに促され、リビングでお茶を飲んでいたばぁちゃんと軽く会話を交わす。


「2人とも、こないだぶりやねぇ。元気にしとったと?」


「ふみばぁちゃん!!元気元気!超元気だよ!!」


「ばぁちゃん、昨日は長旅だっただろ?疲れてない?」


ばぁちゃんは元気が有り余っとーよ、と力拳をつくってみせる。

虎之助の出勤時間もあるので、積もる話もあるだろうが、虎之助には先に自室へと向かってもらった。母さんからいきなり団子とお茶をもらい、俺も部屋へと急ぐ。

行儀よくクッションの上に座っている虎之助の前にお茶菓子を置く。


「あっ、やった!いきなり団子!」


「ゆっくり食べろよ。」


分かってるって、と言いながら虎之助は勢いよく食べだす。これは、喉に詰めるな。

近い未来を予測し、アホの近くにお茶の入った湯のみも置いておこう。


「虎丸、食べながらでいいからちょっといいか?」


「ふぉあ、ふぁにふぁに??」


なになに?と言っているんだろうか。まぁ聞いてなくてもいいや。ちょっと意見が欲しいだけだし。

あっ、虎之助喉詰まらせた。まぁ茶も飲んでするし話を続けよう。


「例えばの話。お前は俺の私物を盗んでいたとする。それも何回も」


「ゲホッ、ゲホッ、僕そんなことしてないよ!!」


「例え話だって。まぁ俺じゃなくてもいいんだけど、とりあえず近場の人の私物を盗んでいたと仮にする。」


「ん〜うん。推理ゲームみたいな、感じ??」


「まぁ、そんなもんさ。」


虎之助は納得していなさそうに手に持っていた湯のみを落とさないよう腕を組み、唸り声を上げる。まぁ、話を続けよう


「んで、お前が何度か犯行を及んでいると、ある日、この近辺で怪しい人物はいないかと第三者が聞き回っているのを目撃する。お前は犯行がバレたくない。けど、やめられない。虎丸ならこんな場面、どうする?」



虎之助は1度天井へ顔を向けた後、視線を戻し、テーブルの上に、持っていた湯のみをことりと置いた。少し意地悪そうな、得意げな表情を浮かべながら。


「僕なら、第三者の行動を監視し、注意を逸らすかな。」


「監視は、分かるが注意を逸らす?」


「そうそう!第三者が周りで嗅ぎ回っているなら、僕の方に疑いが向く可能性もある訳でしょう?非道徳的だから、バレないように完璧にこなしていくとは思うけど、万が一って事もあるし。

自然な流れで第三者と接触してみて、現状を把握。あわよくば、別の誰かに疑いを向かせる。そうすれば、しばらくは容疑者から外れるかもしれないからねぇ〜。僕なら、そうするよ!」


嘘と事実を混ぜ合わせながらね!と虎之助は続けた。

なるほど、確かに刑事物のドラマなどで似たような場面があったな。

今後はもう少し慎重に行動した方がいいかもしれない。先程も・・・後をつけられていた可能性が高いし。


突然けたたましく、どっかの将軍でも出てきそうな着信音?が部屋中に鳴り響く。


「あっ、やば。そろそろ出勤準備しないと」


虎之助のアラーム音かよ。俺も携帯電話を取り出し、現在時刻を確認。

あぁ、もう19時になるのか。


「すまん、虎丸。色々と参考になった。」


「全然いいよ〜!僕そういう推理系好きだし!」


推理系かどうかは別として・・・


「助かった。」


「どういたしまして」


ばぁちゃんからお土産に渡されたいきなり団子を片手に、虎之助を家の外まで見送る。

今から仕事だなんて、こいつも大変だな。

そう言えば、連日勤務してたんだっけ?


「虎丸、お前二日酔いとかしないの?仕事上、昨日も飲んでたんだろう?」


「大丈夫、大丈夫。酔わないって思えば全然酔わないよ?多少ふわふわした感覚にはなるけど」


ソウデスカ。マジで酒強いなこいつ。

手に持っていた団子を虎之助へと手渡すと、ありがとう!!と喜んで受け取った。


「団子ありがとう!!ふみばぁちゃんにも美味しかったって伝えてて!じゃあ、またね海くん。あっ、そうそう。なんか、よく分からないけど・・・桜子の事、よろしく頼むね。」


少し困ったようなに笑いながら、右手を上げて虎之助は夜の街を歩いていく。

それを見送った後、隣の家の道場・・・山田家の方を見てみると、桜子ちゃんの部屋に電気が付いているのが分かった。


一通り、ぐるっと家の周辺を回ってみたが怪しい人物も、帰り際に感じた怪しい気配もしない。


とりあえず、今日は実家に泊まって・・・明日、もう一度四緑高等学校へ行こう。

あの生徒会長に少し話を聞いてみる必要がありそうだ。


あっ、薔薇と人形どうしよう。人形は、神社かどっかでお祓いをしてもらうとして・・・薔薇はなぁ。不気味だから捨てるのが1番なのだろうけど・・・割と立派だったから、捨てるのは忍びない。


福田先生にでもあげよう。



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