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episode 5 交錯


「あの、生徒会長について少しお話が!!」


先程生徒会室前であった少年と顔を合わせ、様子を伺う。

目を左右に動かし、落ち着きのない感じだ。

周りを警戒しているのだろうか?


「あの、君はさっきの・・・」


「あっ、すみません。僕は加賀と申します。一応、この学校の副会長を務めさせていただいてます。」


今度は少し慌てふためきながら何度も何度も頭を下げる様子を見て、忙しい人だなぁと思ったが、先程の生徒会長よりも真面目そうな少年だ。何か話したいことがあって俺を呼び止めたのだろう。


「えっと、すみません。あの、僕ちょっと気になることがあって、あの、さっきの会長との会話、聞いちゃってて・・・ぬ、盗み聞きとか、そんな事したつもりではないんですが・・・」


右手を首元にやり、相変わらず頭を軽く下げ、視線は足元だ。

俺は、そんなに威圧的なのだろうか?身長は確かに、平均の男よりは高いだろうけど、目の前の少年もそこそこ身長は高い方だろう。

そんなに萎縮しなくても・・・


「い、いやそんなに頭下げなくても大丈夫だから。それにあんなに堂々と会話していたんだし、聞かれててもおかしくないから、ね?」


「は、はい!すみません。」


「それより、気になることって、何?」


「はっ、すみません!!あの、先程先輩?が不審な人物はいないか、と会長に聞かれた時、会長はいない。と答えていたのがちょっと、気になって・・・いや、確かに部外者に話すことじゃないとは思うのですが・・・」


加賀くんの言葉に、疑問と不信感が湧き上がる。どういう事だ?


「実は、不審な人物がこの学校内で何度か目撃されているんです。それは・・・会長も知ってるはずなのですが・・・」


不審人物が学校内で目撃されている?

なら、どうして俺が質問した時にいない、と答えたんだろうか。OBとは言えど、今はここの生徒でもない訳だし、答える必要がなかった。ということか?


桜子ちゃんの靴箱に詰められていた薔薇の花、それから人形。

少なくとも犯人はこの学校に出入りできる人物である事は間違いないだろう。

外部犯であっても、学校内部を熟知していないと犯行は難しいはずだ。時間をかけてしまうと、人に見つかる恐れもあるからな。



「あの?」


「えっ、あぁ、悪い。その不審人物の特徴とかは分かる?」


加賀くんは申し訳なさそうに眉をひそめ、またすみませんと謝ってくる。


「本当にすみません・・・。生徒たちから又聞きでの情報なですので、不審人物の具体的な特徴はまだ分からないんです。たまに中庭の方で姿を見るとかなんとか・・・」


中庭での不審人物、か。

中庭なら確かに、校舎周辺も見渡しやすいかもしれない。

手がかりが何もない状態だ。こう言った些細な情報でも助かる。


「ありがとう。参考にさせてもらうよ。」


「いえ、よく分かりませんがお役に立てたならばよかったです。にしても、会長はどうして言わなかったんだろうなぁ・・・」


最後の方は、ぼそりと誰に聞かせるでもなく、一言感想のように述べているようだった。


加賀くんは、軽く頭を下げその場を去って行く。

中庭で見かけたと言う不審人物について、桜子ちゃんにも聞いた方が良さそうだ。

そして、生徒会長の件も・・・


桜子ちゃんは信頼しているようだったけど、少し警戒しておくように伝えておこう。


「すみません、お待たせしました。」


加賀くんが去ってからしばらくして、桜子ちゃんが鞄と、肩に竹刀袋を持って姿を見せた。


「あれ、靴、出しててくれたんですか?」


「ん、まぁ調べさせてもらったついでに?勝手にしてごめん」


「いえ、ありがとうございます。」


桜子ちゃんは履いていた上履きを脱ぎ、靴箱へ入れようとする。

上履き、そうだ!!上履きあるじゃないか!


靴出していれば薔薇の匂い云々考えていた俺は何していたんだ!!


「あっ、桜子ちゃん!あんなところに虎丸が!!」


「えっ!!兄様!!兄様どこです!?」


桜子ちゃんの視線が靴箱から逸れた瞬間、すぐに上履きを直す。

人生で1番素早く動いた気がする。本当に、ちょっとおえってしそう。


「兄様・・・?」


「いや、あの、多分家に帰ったんだと思う。マッハで」


それじゃあ兄様を早く追いましよう!!と桜子ちゃんは力拳をつくり、出していた外靴を履いて校舎を出て行く。


「はぁ・・・」


桜子ちゃんに聞こえないように大きくため息をつき、彼女の後を追う。

2人で校門を抜け、横並びで歩く。


「で、どうでした?何か見つかりました??」


「いや、流石にざっとしか見てないからまだ手がかりは掴めてないかな。そうだ、桜子ちゃんにも1つ確認しておきたいことがあるんだけど・・・」


「??なんでしょうか?」


「ここ最近、中庭で不審な人物が生徒たちによって目撃されているんだけど、そんな話聞いてない?」


桜子ちゃんは眉を潜め、口元に手を置きう〜んと悩み込む。


「最初に申しましたように、私はそう言った噂話等は良く知らなくて・・・、少なくとも、私の耳には届いておりません。」


「生徒会長さんは?」


「そんな話が上がっているのでしたら、会長は知っててもおかしくはないと思います。でも、不審者となると生徒会で話が出てもおかしくないのですが・・・」


確かに、本当に不審な人物が出ているなら生徒会で議題にもなるはずだ。

桜子ちゃんも知らなかったとなると・・・生徒会長が意図的に隠していた可能性が高いな。


「桜子ちゃん、あの生徒会長の事なんだけど、少し気をつけていた方が良いかもしれない。」


「会長を、ですか?」


「うん、一応気をつけておいた方がいいんじゃないかなって。」


桜子ちゃんは一瞬きょとんとした表情になる。理解できていない・・・いや、何言ってんだこいつ。みたいに思われてそうだ。


「あのね、さっき・・・」


「しっ、海さん、後ろから誰か付けてきています。」


桜子ちゃんは声を潜め、先程までとは違い険しい表情を見せた。

俺も桜子ちゃんも足をその場に止め、後ろは振り返らず気配だけをたどってみる。


・・・1人かな。


一歩、一歩とこちらへ近づいてくる。静かな動きで、桜子ちゃんは竹刀袋に手を掛けていた。そんな彼女を横目に、俺は一歩後ろへ。

何かあった時、すぐに対応できるようにしておかなければ。


俺は、後ろにばかり気を取られていた為、すぐ側に人が近づいてきていた事に気がつかなかった。


「あっれ、海くんに桜子。こんなとこで何してんぐはっっっ!!!!」


不意に声をかけられた事によって、桜子ちゃんは、虎之助のご自慢のお顔に見事なエルボーを食らわしていた。


「えっ、き、きゃぁぁぁぁぁっ!!兄様っ!!?」


「うわ・・・」


地面に倒れ伏した虎之助を、桜子ちゃんは涙目になりながら体を揺さぶっていた。綺麗に決まっていたからなぁ・・・あいつは・・・しばらく起きないだろう。惜しい奴をなくしたな。

2人から視線をずらし、後ろを振り返って見てみるが、後ろからの気配は、もうない。


とりあえずは、まぁ、良かったかな。


「兄様ぁ!!!兄様!!」


さて、地面に倒れ伏している虎之助どうしようかなぁ。

俺は絶対に運びたくないぞ。



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